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川島なお美さんとその時代

「私が乗り越えた病気は 5年生存率50%という厳しいものです でも もっと生存率の厳しい芸能界で35年生存してきたので これからも大丈夫!と自分を信じたいです」

川島なお美さんが亡くなった。54歳。早すぎる。

特別なファンというわけでなくとも、多くの人々が川島さんの最期に思いを寄せたのは、彼女が生きた時代「バブル→失われた20年→平成不安時代」そのものだったからなのだと思う。

冒頭にあげたのは川島さんの言葉である。

「女優」という肩書きに比して、彼女に対する評価は作家との関係を取り沙汰されて仕事を取ったのではないかとか、タレントのしての立ち位置もわからないがなんとなくいる的な…つまりは「実力以上の立ち位置にいる」という、誤解も含めて彼女にとっては決して満足出来るものではなかったのではないか。

しかし、それだからこそ、人は川島なお美という存在が気になったのではないか。

オールナイトフジが始ったのは1983年。「女子大生ブーム」が起こり、1985年のプラザ合意はバブルをうむ。土地の高騰、株式ブームという狂乱の中で、ブランドもの、海外旅行、三高との結婚…。誰もが自分の実力以上のものを手にしたり、手にしようとした。しかしそこにあったのは「このままでいられるのであろうか」という不安だったのだと思う。つまりは実体経済がついていっていないことも、それに乗っかって就職、結婚した自分たちもまた「実力以上の立ち位置」であることを多くの人は自覚していたのである。

川島なお美、そして石田純一といった俳優たちは本業に加えて、バラエティでキャラ立ちをすることでご本人がおっしゃっている通り「生存」してきた。

なぜ、彼らがテレビに出てくるのか、積極的な理由はわからないなと思うこともあったが、川島なお美さんの死に対して受けたダメージの大きさは、彼女が果たしてきた役割の大きさを表している。

『「女子」の誕生』(勁草書房)などの著作がある甲南女子大の米澤泉准教授は「あのまま還暦まで突き進んでほしかった」と追悼の思いを述べてらっしゃるのを読み、まさに同じ思いを持つとともに、彼女が果たした役割の大きさを改めて思い知るのだ。

テレビに映る彼女の姿は、時代に甘やかされて生きてきた同世代にとって、状況が厳しくなっても、「これからも大丈夫!」なんとか生存出来るのだという自信や励ましそのものだったのである。

時は流れ、留まらない。

国会前に集まる女子大生たちはバブル期に生きた多くの「川島なお美」たちの子どもたちだ。

形を変えてもこの国に生まれ出でた女性たちは同じ一途さ、懸命さでいまだ破られないこの国の閉塞に立ち向かっているような気がする。

川島さんもまた時代の最前線で戦った勇敢な女性だったのである。

ご冥福を心からお祈りいたします。

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