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VWとの提携を解消したスズキ会長の慧眼

VWのスキャンダルが世界に激震を与えている。不正なソフトウェアを用いて排ガス規制テストをパスし、通常走行時には規制値の10-40倍もの排ガスを排出していたというのだから呆れる。2008年から今年にかけて世界中で販売された対象のディーゼル車は1100万台に上るとされており、問題収拾のメドは立っていない。

VWの一連の騒動を受けて想起されるのはつい先月VWとの資本提携を解消したスズキの件である。提携の解消については両社で争いがあったが、ロンドンの国際仲裁裁判所の裁定により、先月末にスズキの要求に基づき提携が解消された。

提携解消発表時にスズキの鈴木修会長がインタビューに答えているのだが、VWの不正を知った今となって読むとなかなか味わい深い。スズキはVWの不正に気付いていた、あるいは確信はなくてもきな臭さを感じていたのではないかと感じられる。国際仲裁裁判所の裁定を求め、VWからの違約金の請求のリスクをとってまで、VWとの提携解消を断行した鈴木会長の慧眼が光る。

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国際仲裁裁判所の裁定について鈴木会長は次のように述べている(強調は筆者による。以下同様)。
「スズキの求めていた通り、VWとの包括契約は終了し、VWがスズキ株を返還する。この結論に満足している。仲裁を申し立てた最大の目的は達成できた。これまで『のどに小骨が刺さったよう』と話してきたが、非常にすっきりした。世界にはいろんな異質な企業があると感じた。経験不足を反省している

VWとスズキの提携の破綻の引き金になったのは、2011年のスズキによる伊フィアットからのディーゼルエンジンの調達であった。WSJの報道によれば、VW側が「スズキはディーゼル技術では業界トップと目されるVWのエンジンを検討することなくイタリアのフィアットから購入することを決めた」と非難する一方、鈴木修会長はblogにおいて次のように述べていた。
では、現在、スズキが何か困っているかというと、何も困っていません。ワーゲンさんの持つ個別の技術について勉強させてもらいましたが、いますぐに欲しいという技術はありません。スズキも独自に環境技術などの開発に力を入れています。うちの技術陣は私が思っているより力を付けているようで、案外いい技術を生み出しています。16年ぶりに新開発した軽自動車のエンジンは国内トップクラスの燃費を実現していますし、最近注目を浴びているディーゼルエンジンについてもインドで20万台以上生産しています。ですから当面は、特に軽自動車市場やインド市場などスズキにとっての重要な市場では、ワーゲンさんとの協業を急ぐ必要は感じていません
(中略)
足りない技術があれば、ワーゲンさん以外にも技術的に交流の深い会社が国内外にたくさんありますから、そうしたパートナーに助けてもらうという手もあります。先日、発表しましたフィアットさんからのディーゼルエンジンの調達についても、その一つだとお考えいただければ良いと思います。

仮にVWのクリーンディーゼルの正体がプログラムの不正によるまやかしであったとするならば、スズキがほしい技術はVWには無かったのだろう。

再び提携解消時の鈴木会長のインタビューに戻ると次のようなことも述べている。

――今回、提携を解消したのとは別の分野では、協力関係を築く可能性があるか。

鈴木会長「たとえは悪いが、離婚したひととまた再婚することはないだろう

――VWとの提携がうまくいかなったのは何故か。

鈴木会長「裁定に満足しており、愚痴は避けたい。過去については『沈黙は金なり』ということで、コメントは差し控える。これからどう前向きに自動車業界で生きていくかを考えたい」


今になってこの鈴木会長の含みのある受け答えを見ると意味深である。8月30日に提携解消、そして9月19日にVWが不正を認めるという時系列となっているが、スズキ側としては致命的なダメージが自社に波及する前に危うく離脱した形となった。関係があるかどうかは不明だが、7月末にはVW日本法人社長が唐突に辞任しており、VW不正発覚を見越した動きだったのではないかと疑いたくもなる。

ただ、NHKの報道によれば、スズキは依然としてVWの株式1.5%、今年3月の株価にしておよそ1300億円を保有しているという。今回の問題でVWの株価は3日連続20%ずつ下落し当初の半値まで暴落しており、スズキの含み損は拡大の一途にある。

もう少し早く国際仲裁裁判所の裁定が出ていればよかったのに。スズキの恨み言が聞こえてきそうだ。

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