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米利上げめぐる不透明感広がる、相場乱高下の「火種」消えず

[東京 18日 ロイター] - 米連邦公開市場委員会(FOMC)は利上げを見送り、市場には一段と濃い不透明感が広がっている。

年内の利上げの可能性は残したものの、新興国経済の減速や、ドル高の影響で、利上げ判断はさらに難しくなるとの見方も多い。先行きがますます読みにくくなるなか、日本市場も乱高下の「火種」を抱えたままの展開となりそうだ。

<利上げできるかが論点に>

米連邦準備理事会(FRB)が、量的緩和政策(QE)で膨らんだ資産を縮小させる前に利上げするという、本来なら順番が逆のスケジュールにしたのは、金融引き締めのインパクトを抑えるためだったとみられている。しかし、今年も残り4カ月を切るなか、小幅な利上げさえできない状況が続いている。

米経済は雇用面は堅調。だが、インフレ率は足元で低下傾向となっている。住宅や自動車市場は好調なものの、8月ISM製造業景気指数は51.1と2年3カ月ぶり低水準となった。総合的に米経済をみれば、利上げを正当化できるとの見方もあるが、イエレン議長が懸念するように、中国はじめ新興国経済の行方は混とんとしている。

JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジスト、重見吉徳氏は「これまでは利上げの時期が9月か12月かが論点だったが、今後は利上げできるかどうかが論点になりそうだ。先行き不透明感が濃くなるなか、市場のボラティリティは高まりやすい」とみる。

「恐怖指数」とよばれるVIX指数<.VIX>は17日、0.21ポイント低下の21.14ポイントとなった。イベント通過によってやや低下したが、8月の世界同時株安前の水準を依然として上回っている。市場では「米金融政策をめぐる見通しがはっきりするまでは、神経質な相場展開が続く」(大手証券トレーダー)との警戒感が強い。

<利上げできないシナリオ>

今回発表されたFRB当局者の金利見通し(ドット・チャート)では、17人中13人が年内に1度以上の利上げを見込んでおり、年内利上げのバイアスは維持したが、少なくとも2016年まで利上げを見送るべきと考える当局者は4人と、前回の2人から増えた。そのうち1人はマイナス金利を予想している。

年内のFOMCはこれで10月27─28日と12月15─16日の残り2回。イエレン議長は、経済指標次第で年内に利上げという「目標」は下ろしていないが、市場では、利上げできないシナリオも浮上してきている。

一つはドル高問題だ。ドル・インデックス<.DXY>が上昇し始めたのは2014年7月ごろから。米国のグローバル企業の業績は圧迫され、すでにドル高の影響は出ているが、「ドル実効レートと貿易収支などの関係をみると、その影響が本格的に出るのは約1年後。利上げによる、これ以上のドル高を受け入れることができるかは微妙」とりそな銀行アセットマネジメント部チーフ・エコノミストの黒瀬浩一氏は指摘する。

また、ドル高は新興国のドル建て債務を増加させる。国際決済銀行(BIS)によると、発展途上国の企業セクターでのドル建て債務は、数兆ドルに積み上がっている。中国など新興国が、米国が利上げを「保留」している間に経済を回復させてくれればいいが、米利上げ観測を背景とした資金流出が加速すれば、景気に大きなダメージとなりかねない。

<日本株市場は乱高下続くか>

FOMCを受けた18日朝の東京市場は、株安・円高・債券高で反応している。米利上げ見送り自体は金融緩和環境の継続であり、リスクオン材料だが、不透明感が嫌気されるなか、リスクオフ方向での動きとなっている。

日本株市場に対する強気が、消えたわけではない。FOMC前のリポートだが、フィデリティ・ソリューションズは16日、日本株を国別で最大のオーバーウエートとした。日本株は日銀の景気刺激策で押し上げられているほか、米国経済の再加速を最も利用しやすい市場とする。

ただ、全体で見れば、海外投資家は、日本株の現物株を9月第2週に1987年10月のブラック・マンデー以来となる1兆円超を売り越すなど、ポジションを急激に縮小。2015年トータルでは売り越しに転じている。

再び積み増す余地ができたとの楽観的な見方もできるが、グローバル・マーケットが不安定ななかでは、日本株市場も乱高下をまぬがれないだろう。米利上げシナリオが定まらなければ、円安(ドル高)の動きも力を欠く。

今回のFOMCに対する市場の見方は、米利上げと見送りのほぼ半々だった。米利上げ見送りは、半分は予想通りとしても、残り半分は予想外れということになる。世界同時株安の背景は、米利上げに向けた投資家のリバランスが一つの背景だが、残り「半分」の調整はまだ残っていると言えそうだ。

*写真を加えました。

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