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為替換算調整勘定と税効果

2011年3月期連結決算から、上場企業による「包括利益」の開示が始まった。これは純利益に保有資産などの価値の増減をプラスまたはマイナスした指標で、為替や株価変動の影響を色濃く映す。日本経済新聞社の集計によると、2011年3月期の包括利益は前の期より41%減った。東日本大震災後の株安や1ドル=80円台の円高が響き、純利益(前の期比61%増)を大きく下回った。
(日本経済新聞2011年5月25日15面)


【CFOならこう読む】
「包括利益を押し下げた最大の要因は、ユーロやドルなどに対して円高が進行したことだ。自動車、電機などのグローバル企業を中心に、海外子会社の純資産を円換算

した際の計算上の価値が減った。価値の目減り分が反映された前期の「為替換算調整勘定」は対象企業の合計で3兆9794億円のマイナスとなり、9660億円のプラスだった2010年3月期から大きく落ち込んだ」(前傾紙)

為替換算調整勘定とは、在外子会社等の連結財務諸表への取り込みに際し生じる、決算時為替相場で換算される資産および負債項目の円貨額と取得時または発生時の為替
相場で換算される資本項目の円貨額との差額のことを言い、円高局面ではマイナスに振れます。

為替換算調整勘定は、マイナスに振れても円転しない限り実現しないので、企業の業績とは切り離して見るべきでしょう。ただし、近い将来在外子会社株式を売却する場合には、円貨での手取りキャッシュに影響してきます。そういう意味で留意が必要なのは為替換算調整勘定に係る税効果の取扱いです。「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」38−2項は、「子会社等の株式の売却の意思が明確な場合に税効果を認識し、それ以外の場合には認識しないものとする」としています。

例えばNTTの場合、平成23年3月期において包括利益に計上される外貨換算調整額は、44,116百万円のマイナスでした。一方、繰延税金資産の内訳項目として注記されている為替換算調整勘定の金額は、平成22年3月期が8,993百万円に対し、平成23年3月期が21,809百万円と12,816百万円増加しています。この辺りをIR上どう説明するか(あるいは説明しないか)興味があるところです。

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