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【安保法制】賛成派の有識者は何を語ったか(8)大阪大学大学院法学研究科教授・坂元一哉氏の陳述から

国民の大きな注目を集める中、可決・成立した安全保障関連法案。国会前で行われたデモなど、反対派の動きがクローズアップされてきた一方、賛成派の有識者たちはどのような理由から法案への賛成の立場を取ったのだろうか。

去る9月15日に行われた参議院「我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会公聴会」より、坂元一哉氏(大阪大学大学院法学研究科教授)の発言を書き起こしでお伝えする。(※可読性を考慮し、表現を一部整えています。)

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大阪大学の坂元でございます。政府が"平和安全法制"と名付けました安全保障関連法案について、法案成立に賛成する立場から意見を述べさせていただきます。

およそ国家・国民の平和と安全を守ることは、政府の最も重要な義務であります。また、わが国・国民も、他の国・他の国民と同様に、ますます相互依存を深める世界の中に生きており、従って政府は国際社会全体の平和と安全への貢献も考慮に入れて、その政府の最も重要な責任を果たさなければなりません。

この観点から見たときに、今回政府が提出した安全保障関連法案は、わが国自身の安全のための抑止力を格段に強化し、わが国の平和もその一部であります、世界平和により良く貢献する能力を増やす、よく考えられた法案であると私は評価し、その成立を願っております。

法案が成立すれば、わが国はこれまでよりさらにしっかりした平和と安全保障の体制を持つことができるでしょう。わが国を取り巻く国際環境が一段と厳しさを増す中で、それはどうしても必要、かつ望ましいことだと考えます。

ただ、私がこの安全保障関連法案を評価いたしますのは、"国家・国民を守る"という観点からだけではなく、"憲法を守る"という観点からでもあります。しっかりした平和安全保障の体制がなければ、国家・国民を守ることができません。そして、もし国家・国民を守ることができなければ、憲法も守ることができないでしょう。

ただ、それと同時に大事なことは、憲法を守ることなくしっかりした安全保障の体制をつくることはできないということ。この明白なことが、今度の法案を評価する際の大前提になるのは、改めて言うまでもないことだろうと思います。

私がこの安全保障関連法案を日本にとって必要だと考え、望ましいと思い、その成立を願うのも、この二つの観点から評価した上でのことであります。

その私の評価について少し説明させていただきますが、時間の関係もありますので、後者の観点からの評価を中心にすることに致します。

全社につきましては以下四点。
まず、この安全保障関連法案が、集団的自衛権の限定行使、アセット・プロテクション=装備品の防護、あるいは後方支援の拡充などにより、日米同盟の同盟協力を格段に強化し、同盟の抑止力を飛躍的に高める法案であること。
次に、今の日米同盟の抑止力を高める必要があるのは、安全保障環境が一段と厳しくなる中で、それが国家と国民をより良く守るために、必要かつ適切な手段であること。
三つ目に、安全保障環境について言えば、北朝鮮の核開発の脅威は相変わらずですが、それにも増して、中国の急速な軍事力増強が脅威になっており、尖閣諸島の問題もありますので、言ってしまえば、海を隔てた核保有の隣国が、海・空軍力を急速に増強して、「その島、俺の島だから返せ」というような、容易ならざる状況になっていること。
そして最後に、日米同盟の抑止力の強化は、その中国との偶発的な軍事衝突の可能性を大きく減らすだけでなく、我々が中国の軍事力に脅かされることなく、中国と互恵等・対等の関係を築くの役立つこと。
この四点を指摘するに留めたいと思います。

その上で、"憲法を守る"という観点からの評価ですが、、最も注目されている論点は、やはりたとえ限定的であっても、集団的自衛権の行使を容認する法律は憲法違反ではないか、という点だろうと思います。

ご承知のように、この点につきましては多くの憲法学者が憲法違反だと批判しているわけであります。集団的自衛権の限定行使容認は、政府は与党とともに長い時間をかけて慎重に検討した関連法案のまさに柱となるところであります。したがって政府にとって批判は残念なことでしょうが、専門家がそう批判する以上、政府は政府の考える集団的自衛権の行使がなぜ憲法違反でないのか、よりいっそう丁寧かつわかりやすく説明する必要があります。

言うまでもなく、ある法律が憲法違反にあたるかどうかを最終的に判断するのは最高裁判所の仕事です。その意味で、今、政府が言う意味での集団的自衛権の限定行使を容認する法案が憲法違反にあたらないとするのはm学者の批判が正しいか正しくないかは別にして、この法案が国会の審議を経て現実に法律になり、その法律に関連して訴訟が起こったとしても、最高裁判所が憲法違反の判決を下すことはない、そう判断しているということだろうと思います。

政府がそう判断する根拠は何かといえば、1959年、最高裁の砂川事件の差し戻し判決、安保条約に基づく米軍駐留が合憲かどうかを争ったこの裁判の判決の中で、「憲法の平和主義は決して無防備、無抵抗を定めたものではない」と述べ、その上で「わが国が、自国の平和と安全とを維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置を執り得ることは、国家固有の権能の行使として当然のこと」としています。またこの判決は、例えば安保条約が違憲かどうかというような、主権国としてのわが国の存立の基礎にきわめて重大な関係を持つ、高度の政治性を有する問題は「一見極めて明白に違憲無効」であると認められない限り裁判所の司法審査権の範囲外、との判断も示しています。

この砂川判決を前提にすれば、最高裁判所が将来、政府が言う意味での集団的自衛権の限定行使について、違憲判決を下すようなことはない、政府はそう判断したと致しましても、私には極当然の判断であるように思えます。といいますのも、政府が今度の安全保障関連法案と新しい武力行使三要件で可能になるとする武力行使、国際法で言えば、集団的自衛権の行使に当たる武力行使は、あくまで砂川判決に言う、国の存立を守る、全うするための自衛のための措置としての武力行使、それも必要最小限の武力行使だからであります。

政府はこれまで憲法上、自衛のための措置として、必要最小限の武力行使ができるのは、わが国に対する武力攻撃が発生した場合に限る、としてきました。それを新しい憲法解釈では、わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した場合であっても、それによってわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるならば、そして他に手段が無いならば、自衛の措置としての必要最小限度の武力行使ができる、としているわけであります。

確かに、この自衛のための措置は、他国の防衛、つまり他衛を含みます。ですが、自衛が同時に他衛にもなるからといって、それを最高裁が「一見極めて明白に違憲無効」と認めるとは考えにくいのではないでしょうか。

憲法の前文には、日本国民だけでなく全世界の国民が等しく平和的生存権を持つこと。また、わが国が自国のことのみに専念し、他国を無視してはならないこと。平和の維持などに努力している国際社会で名誉ある地位を占めたいと思っていること謳っているのですから、なおさらだと思います。

実は私は、この前文によって、自衛だけでなくそれと直接関係のない他衛のための武力行使もそれが国際法上合法でかつ必要最小限のものに限れば、場合によっては憲法上可能になるのではないか、少なくとも一見極めて明白に違憲無効にはならない武力行使もあるのではないかと考えておりました。

しかし政府は、そうした考え方を取らず、自衛とは関係がない他衛、他国や他国民の平和と安全に関しましては、武力行使以外の手段で対応する、武力行使はしないとしています。私の考えと比較して言えば、最高裁が違憲判決を出す可能性ははるかに小さいでしょうし、国際社会と国連の現状をよく考えてみますと、憲法の平和主義を守るにはよりふさわしい解釈かもしれない、と今は考えております。

無論、この安全保障関連法案が成立したとして、万一最高裁がその成立した法律を違憲だと認める、その可能性が低いとは思いますが、もしそういうことになれば、その法律は改正しなければなりません。そういう前提で法案を審査するのが、立憲主義のルールだろうと考えます。

最高裁の砂川判決に関しましては、この判決の「自衛のための措置」とは個別的自衛権のことであって、集団的自衛権は含まれないと議論する人がおられます。私はこれは国際法上の集団的自衛権の意味を誤解した議論だろうと思います。なぜなら、砂川判決にいうところの「自衛のための措置」とは、もちろん自国を守るための措置だろうと思います。が、個別的自衛権も集団的自衛権も、どちらも自国を守るための措置として国家に認められた固有の権利だからであります。この点、政府が1972年に示した憲法解釈の中に、集団的自衛権の性格を「他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とする」としている部分がございます。私はこの部分は国際法上の集団的自衛権の説明としては舌足らずの説明であって、その舌足らずのところが、その後の集団的自衛権に関する議論を混乱させてきたのではないかと考えています。

確かに、集団的自衛権は他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容としています。していますが、その目的はあくまで自国の防衛であります。そこを明確にしてほしかったと思うのであります。

国際法上の集団的自衛権は、自国防衛のための権利であって、他国防衛のためのそれではありません。もし他国防衛のための権利だとすれば、なぜ自衛と自衛権という名前が付いているのか、説明が要ると思います。

また、例えば米国は、日米安保条約上、集団的自衛権に基づいて日本を守る、日本に対する武力攻撃に共同対処することになっていますが、それは条約第5条に明記してあるとおり、日本への武力攻撃が米国の平和及び安全を危うくするからであります。日本を守る権利があるから守るというのではなく、自衛の権利があるから守るのであります。米国にとって日本防衛は、まさに自衛のための措置なのであります。

集団的自衛権という言葉は、個別的自衛権と同じく、70年前、1945年にできた国連憲章の中で始めて使われた言葉です。しかしその考え方自体は、これも個別的自衛権と同じく、それ以前から存在しておりました。

時間の関係で詳しくは申しませんが、例えばイギリスは1928年、国際紛争解決の手段としての戦争を禁じた不戦条約を結ぶ際に、自衛権に関して留保をつけ、世界にはイギリスの平和と安全に特別で死活的な利害関係のある地域があるが、それらの地域を攻撃から守ることは、イギリスにとって一つの自衛措置だと明確に述べております。

国連憲章第51条が、集団的自衛権も個別的自衛権もどちらも国家固有の自衛権だ、という書きぶりになっておりますのも、この権利が国連憲章が出来る前から存在する自衛のための権利だと認めているからではないでしょうか。いや、その理屈はわからないではないけれども、たとえ固有の権利だとしても、集団的自衛権は海外派兵への扉を開くのではないか、あるいはそういう心配が国民の間にあるかもしれません。

実際のところ、集団的自衛権はいかなるものでも行使できない、という政府の従来の説明が国民に支持されたことの大きな理由には、戦前の経験と反省から、海外派兵は絶対にしたくないという、国民の強い気持ちがあったのは確かだろうと私は考えます。

政府は、その気持ちが個別的自衛権の行使の問題にまで影響しては困るので、集団的自衛権は一切行使できない、とするようになったのかもしれません。

しかし政府は今回、たとえ集団的自衛権の行使を限定的に認めるとしても、海外派兵すなわち自衛隊を武力行使の目的で他国の領土・領海・領空に送ることは、憲法に一般に禁じられているとするこれまでの解釈は変わらないとしております。そして、この点に関連して安倍総理は先月24日、この参議院での答弁におきまして、例えば朝鮮半島で有事が起こっても、日本が北朝鮮や韓国の領域内で集団的自衛権を行使して戦闘に参加することは憲法上できないと明言されているわけであります。

一般に海外派兵は自衛のための必要最小限度を超えるという従来の政府憲法解釈を踏襲したわけですが、これは政府と国会の関係にとって重要なことかと思います。

と申しますのも、この解釈は、1954年、これは朝鮮戦争休戦の翌年になりますけれども、1954年に、自衛隊が創設された際、この参議院が全会一致で行った自衛隊の海外出動を禁じる決議を踏まえたものだからであります。

海外派兵に関する従来の政府解釈を変更しないというのは、この解釈が国権の最高機関である国会の意思を反映したものであり、政府の考えだけでは変えられないものであることを示していると考えてよいのではないでしょうか。

だから今回、集団的自衛権の行使を容認しても、一般的な海外派兵への扉は固く閉ざされている、そう申し上げたところで時間が参りました。私の陳述はこれで終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

(この後行われた質疑の内容などは、参議院インターネット審議中継をご参照ください。)

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