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「ベキ分布」とデットとエクイティ

・特異な性質を持つ「ベキ分布」の研究進む
・大震災、ブラック・スワン現象が随所に発生
・想定外への対処、ヒト、モノ、知恵総結集で

(日本経済新聞2011年4月7日24面 経済教室 高安秀樹明治大学客員教授)


【CFOならこう読む】
今日の経済教室の高安さんは、「経済物理学の発見」 (光文社新書)の著者です。
ベキ分布とは何かについて、高安さんは、「経済物理学の発見」で次のように説明しています。
「岩石に衝撃を与えて破砕するとその破片の大きさの分布はベキ分布になることが知られています。ガラスのコップを固い床に落として割ったときに出来る破片も同じです。大きな破片はほんの数個で、中くらいの破片はかなりの数になり、小さな破片は無数にあります。目に見えないような小さな破片の数はさらに多くて、顕微鏡で拡大してみても同じような分布が観察されます。顕微鏡でも見えないくらいのほこりのような破片の数が最も多いので、1つずつの破片の大きさの平均値を求めると、事実上ゼロになってしまうのです。

破片の大きさの標準偏差を計算すると、今度は小数の大きな破片の寄与が無視できなくなり、非常に大きな値になります。何桁も大きさの違う破片が混在しているのですからゆらぎの幅を表す標準偏差が大きな値になるのは当然といえるでしょう。」

ベキ分布のグラフは次のようになります。

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冪乗則にしたがうグラフの例。横軸が商品のアイテム数、縦軸が販売数量を表す。このモデルは「80:20の法則」として知られ、右に向かう部分はロングテールと呼ばれる。

「ベキ分布の裾野は桁違いに大きいところまで伸びている」(前掲紙)


この裾野はロングテールとも呼ばれます。また、ナシーム・タレブの著書「ブラックスワン」は、これを象徴的にブラックスワンと表現しています。

「身の回りにたくさんの事例があるベキ分布が、長い間、確率・統計の理論の主流から外れ、ほとんど教えられもしなかったのは、ベキ分布では、平均値や標準偏差といった最も基本的な統計量が意味をなさないからだ。

例えば、地震のエネルギーの平均的な大きさを求めよ、といわれれば、与えられた観測期間の間に起きた全地震のエネルギーを足し合わせた量を地震の回数で割るだろう。だがこの平均値が、現実にはあまり意味を持たない。観測期間を変えると、その平均値が大きく変化してしまうからだ」(前掲紙)


大震災があったばかりなので、このロングテールの部分から、とんでもなく悪いことが起こるというネガティブな事象を想起してしまいますが、ナシーブ・タレブはこれをポジティブに捉え、とんでもなく良いことが起きるようなロングテールを追求する生き方を推奨しています。
私はデットとエクイティの本質的な違いを、このロングテールの部分に見ることができると思っています。エクイティを所有権として見るのではなく、ロングテールの持分権者として見るのです。そうすると、コーポレートガバナンスや最適資本構成や会計上の連結範囲等々、CFOが普段接しているような事柄の見え方が全く違ってきます。
例えば、株主が、ロングテールの裾野を厚くするという方向の意思決定を株主総会で自由に行えるという統治構造は、ロングテール部分の持分権者ではない他のステークホルダーにとって望ましくないということになるかも知れません。
また、行き過ぎたレバッレジは、株主が小さなリスクでロングテールの持分権を獲得できてしまい、フェアでないということになるかも知れません。
さらにロングテールの持分権者が必ずしも会社を支配しているとは限らないという意味で、持分割合を基準に連結範囲を決めることが妥当ではないということになるかも知れません。

まっ、とりあえず、タレブは、「本を書こう。パーティーに行こう。」と言っているので、私は本を書くことにします。

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