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洪水の危機 その時、店は開いていたか?

 太平洋上の台風17号と、日本海で低気圧に変化した台風18号。その2つに挟まれた場所では積乱雲がうまれ、その地域に大量の雨を降らせた。

 50年に一度とも言われる大雨は、多くの河川を氾濫の危機に陥れた。そして一部の河川で実際に堤防を水が超えてしまったり、堤防の決壊が発生し、多くの被害をもたらした。

 これを書いている今もなお被害は広まっている。一人でも多くの人や家財が被害にあわずに住むことを祈りたい。

 さて、今回僕が気になったのは、特別警報やら避難指示や勧告が出ていたはずの地域で「開いていた店はどれくらいあったのかな?」ということだ。もっと詳しく言うと、水害が発生する可能性が高い状況で、開いていたチェーン店がどれくらいあったのだろうか。

 なぜチェーン店に限るかといえば、そうしたチェーン店は個人店舗と違って非正規労働者がいなければ店を開くことすらできないからだ。つまり、その店が開いているということは、非正規労働者が生命の危機を負ってまで働かされているということを意味する。

 今は各都道府県市区町村の単位で、詳細なハザードマップが作られている。今回、鬼怒川の堤防が決壊した常総市にも、ハザードマップは公開されていた。(*1)

 その範囲内にあった店舗や、その店舗を受け持つ本部が、今回の警報を受けて正しく「災害が発生する前に、店を閉めて従業員に避難を促すことができていたのか」ということを問うことは、今後の災害対策として極めて重大な意味を持つ。

 東日本大震災の時にそれが問われなかったのは、地震が突発的なものであり、それに伴って発生した津波も同じく、猶予が1時間程度しかない突発的なものであったからだ。

 しかし、今回の水害はそれよりも早く特別警報などが発令されていた。栃木県内では10日の0時20分に、茨城県では7時45分に、それぞれ大雨特別警報が発令されている。鬼怒川の堤防決壊に限れば6時頃には常総市で水が堤防を越える「越水」が発生し、12時50分頃に堤防が決壊している。(*2)

 こうした災害の規模が徐々に広がっていく流れの中で、果たしてどれだけのチェーン店舗が「危険だから、店を閉める」という選択を早いうちに行えたのだろうか?

 もちろん、こうした危機のなかで、店を開くことに理がないわけでもない。こうした災害が起きそうなときは、客が念の為にと食料品などを買いに来る。それは単に「災害期待で売上が上がる」という下衆な意味合いだけではなく、危機的な状況下でもお客に商品を届けるという流通の使命であるとも言える。

 しかし、そうした使命感に、安い時給で働き、危険手当も出ないであろう非正規労働者が付き合う義理はないはずだ。どうしてもそういう状態で店を開きたければ、チェーン店舗の経営者や本部の社員たちだけで開けばいい。

 本部や店舗の経営者がわざわざ「店を閉める」という選択をしなければ、定められたシフトの通りに非正規労働者がやってきて、自動的に店は営業される。もちろん、非正規労働者自身が「避難をするから休む」と言うこともできるが、月給取りとは違い、非正規労働者は休めばその分だけ給料が減ってしまう。有給休暇も法的には存在しているはずだが、実質機能していない。

 権限を持つ人間が、店を閉めることを決定しなければ、非正規労働者は命をかけて店を開くことを強要されてしまうのだ。そうした非正規労働者の立場の弱さを、店舗を運営する企業がフォローしたのか、それともいいように利用したのか。危機が想定されている状況で、どの時点まで店が開いていたのかということは、それを判断するための格好の材料であるといえる。

 今回のように、災害の要因が発生してから実際の災害までに十分な時間があるケースでは、経営者や本部の責任が、ハッキリと問われなければならないだろう。

*1:常総市洪水ハザードマップ(常総市)http://www.city.joso.lg.jp/jumin/anzen/bosai/1419917075752.html
*2:【栃木、茨城大雨】特別警報発令からの経過(産経ニュース)http://www.sankei.com/affairs/news/150911/afr1509110006-n1.html

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