- 2015年09月12日 13:18
災害報道におけるヘリ規制の必要性
10日に発生した常総市の水害における孤立者救助では、自衛隊を中心としたヘリコプターが大活躍しました。
防衛省発表の資料でも、10日の初動では、ボートによる救助者150名に対して、ヘリによる救助者は254名にも及んでいます。
「茨城県における大雨に伴う孤立者救助等に係る災害派遣について(23時40分現在)」
11日現在では、ボートに救助者450名、ヘリによる救助者366名となっています。
「関東地方から北日本にかけての大雨に係る災害派遣について(茨城)(23時55分現在)」
投入されていた航空機は、10日の段階で15機となっていました。その内U-125が2機出ていたようなので、ヘリは13機でした。
この他、警察や消防、自治体の防災ヘリも出ていたでしょうから、相当な数です。
それが、常総市の狭いエリアに集中しました。
そこに、報道のヘリが入っています。
複数社のヘリがこの空域に入っていますが、中でもテレビ朝日と日本テレビのヘリは、救助を行っている自衛隊のヘリに対し、相当近い位置まで接近して撮影していたようです。
特にテレビ朝日の報道ヘリは、距離を保ち、望遠レンズで撮影しているNHKのヘリ映像で、たびたび画面を横切っており、自衛隊ヘリに相当近い位置まで接近していたようです。
「【速報】テレ朝/日テレのヘリが自衛隊の洪水救助を妨害、 #NHK で放映され撃ち落とせと炎上【反日】#tvasahi #ntv」
望遠レンズによる圧縮効果があるためで、実際にはそれほど危険ではないとコメントしている人もいますが、とてもではないですが、危険がないとは言える様子ではありませんでした。
実際に衝突しなくても、ヘリが飛行することで発生するダウンウォッシュと呼ばれる強力な下降気流は、ホバリングして要救助者を救出するヘリにとって邪魔になりますし、周囲を飛び回られただけで、よけいな注意を払わなければならないため、相当に負担です。
こうしたケースでは、狭い空域に多数の航空機が入る上、ヘリは動きの自由度が大きいため、自衛隊機だけでも、統制が必要です。
今回は、陸海空のヘリが飛んでいますが、おそらく陸自の要員が地上から統制したか、あるいは上空にいたU-125が統制したのだろうと思われます。
警察や消防は、統制下に入る訳ではありませんが、連絡を取り合って安全を確保します。
しかし、報道のヘリは、そうした統制には無関係に突っ込んで来ます。
この問題は、自衛隊側が大きな声を上げない上、相手がマスコミであるため、今まで大きな問題になったことはありません。
ですが、自衛隊側では、かなり以前から問題だと認識しています。
私が現役自衛官だった当時、某所で発生した地震災害の偵察に、自衛隊のヘリ、固定翼機が飛び立ちましたが、新聞社のヘリも取材で飛び立ちました。
その日、天候があまり思わしくなく、時間的にも暗くなりかけた時間だったこともあって危険性が高く、自衛隊側が無線を使って緊急用周波数で呼び掛けたものの、その新聞社のヘリは完全無視で被災地上空に突っ込んで行きました。
そのため、自衛隊機に対して、新聞社のヘリの位置を通報して注意を呼び掛け、自衛隊機がの方が、距離を保ちながら目視で注意を払うという結果になっていました。
報道の必要性はあるでしょう。
しかし、人命が最優先されるべき被災地において、救助の邪魔になるような取材活動は、制限してしかるべきです。
上記リンクのツイートでも、多くの人が取材ヘリの統制をすべきだと発言しています。
事件報道においては、警察の求めに応じて報道協定が結ばれることがあります。
同様に、今回の様に救助のヘリが多数飛行する場合では、取材ヘリの行動を高度やエリアで制限する他、ヘリの数を限定し、撮影した映像を各社でシェアするようなルール作りが必要です。
なお、ちなみに、航空自衛隊のレーダーサイトや国交省の航空管制用レーダーは、こうしたケースでは、ほぼ役に立ちません。
被災地が内陸のケースが多い上、ヘリが非常に低高度を飛行するからです。
移動式レーダーも、他の電波使用機器に影響を与える可能性があることなどから、適当とは言えません。
ルールとして、報道ヘリにも、トランスポンダによる位置通報をさせるとか、GPSデータを常時通報させ、それを防災機関が共有するなどのハード面の施策も必要だろうと思われます。
今後は、これにドローンも絡んできます。
何らかのルール作りを行わなければ、いずれ事故が起こるでしょう。