記事

司法試験問題の漏洩の再発防止 大学教員を考査委員から外すことが本当に可能?

  司法試験問題の漏洩は司法試験に対する信頼、法曹に対する信頼を根底から崩しかねないものとして衝撃を与えました。

 今後の問題は、言わずと知れた再発防止策です。

 このようなことが起きたのは、法科大学院制度そのもの原因があります。
明治大学法科大学院の教授が司法試験の問題を漏洩 この不祥事は法科大学院制度を終わらせる

 司法試験と直結した法科大学院制度を作り、その法科大学院では少人数、双方向授業ということで、教員と学生の関係が密になり、しかも、司法試験合格率は、その法科大学院にとっては補助金の額が決められ存亡に直結するもの、さらには学生にとっては司法試験に5年以内に合格できなければ三振のレッテルを貼られておしまい、という構造的な問題です。

 これに対し、教員と考査委員を兼務しているから問題なんだという声があちこちから聞こえてきます。

 法務委員会でもそのような議論だったようです。
構造的にカンニング危険性…考査委員兼務に批判」(読売新聞2015年9月11日)

 構造的な問題という点では私も同意見ですが、しかし、現実に兼務を禁止できますかという問題です。

 考査委員は結果としては名誉職にはなりますが、とはいえ誰でもなれるわけではありません。適正な問題を作り、問題に対する受験者の回答を適正に採点しうるというのは広い知見と能力が必要です。

 もちろん頭の中の煩悩は別問題ですが、考査委員はその分野の一線級の人たちにしかできません。

 兼務を禁止するということは、法科大学院ではこの人たちが教鞭を執ることができないということになりますが、一線級の学者たちが法科大学院の現場を退くということでもあります。

 ただでさえ教員の人材不足と言われている中で、こういったことが可能なのかどうかが問われているわけです。

 逆に司法試験の問題作成を純粋に法務省だけでできるのか(考査委員は裁判官等も加わりますので純粋に法務省だけということにはなりませんが)ということになれば、それも困難でしょう。

 読売の記事では、「法曹界では、兼務の委員は必要だとする意見が根強く」とありますが、私は聞いたことがありません。むしろ、兼務を認めなければ現実に法科大学院の運用が困難だからではないかと思います。積極的に必要なのではなく、消極的意味において必要なのではないかということです。

 そうなってくると構造的な問題は抱えたままということになるのですが、そうであれば必然的に法科大学院制度そのものの問題というところに行き着きます。

 しかし、制度を残したい側は、そこには目をつぶります。

 逆に司法試験の合格者数が少なすぎるから、このような不正が起きるのだということになります。

 医師国家試験も同様に漏れているのではないかという話も聞きますが、私自身はその真偽はわかりません。現実問題として一定の水準にある大学の医学部では漏洩してもらう必要性がないのではないでしょうか。医師国家試験は落とすための試験ではないからです。医師国家試験の合否は基本的には底辺校の特有の問題です。
法科大学院は、医学部に学べ!?

 司法審意見書(2001年)では、司法試験を試す試験に移行させるべきだとありました。7~8割を合格させるためです。それが現実には落とす試験のまま続いています(実態は水準を下げて「落とす」の度合いは薄まってはいますが)。それが不正につながったのだという主張に行き着くわけです。合格者数を増やし、試す試験になればこのような不正は発生しない、という帰結になるわけです。

 とはいえ、この論調からも結局は法科大学院制度そのものの問題であることを認めているようなものであり、早晩、この法科大学院制度の是非の決着を付けなければなりません。

 法科大学院制度は廃止、司法試験の合格者数は質を維持できる数まで絞り込むこと、今、行うべき改革はこれです。

あわせて読みたい

「司法試験」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    全国フェミニスト議員連盟の釈明は、明らかに虚偽を含み極めて不誠実である

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    09月20日 16:58

  2. 2

    「テレビ報道が自民党一色になっていることへの懸念はあった」立民・安住淳議員に呆れ

    鈴木宗男

    09月20日 15:48

  3. 3

    <オダギリジョー脚本・演出・編集>連続ドラマ『オリバーな犬』に危惧

    メディアゴン

    09月20日 10:32

  4. 4

    「論文ランク1位は中国」ノーベル賞常連の日本が貧乏研究者ばかりになってしまった根本原因

    PRESIDENT Online

    09月20日 14:10

  5. 5

    医療逼迫招いたのは日本医師会か 医師不足に触れず「病床増やそう」は欺瞞

    NEWSポストセブン

    09月20日 17:06

  6. 6

    引きずり下ろされた菅首相の逆襲が始まる「河野内閣」で官房長官で復活説も

    NEWSポストセブン

    09月21日 08:42

  7. 7

    「感染ゼロではなく、重症化ゼロを目指す。医療と経済は両立できる」現場医師の提案

    中村ゆきつぐ

    09月21日 08:28

  8. 8

    警察庁長官、警視総監だけじゃない 総裁選の裏で安倍前首相の“懐刀”が続々出世の怪

    NEWSポストセブン

    09月20日 14:41

  9. 9

    河野太郎は自民総裁選で勝てるか? 父と祖父があと一歩で届かなかった首相の座

    田原総一朗

    09月21日 08:02

  10. 10

    潜水艦の契約破棄問題 米仏豪の行方を予想

    ヒロ

    09月20日 10:44

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。