記事

タイ連続爆発事件の真相は?背景を明かしたくない事情 - 横山了一 (ジャーナリスト)

 日本での露出が減少するのと同様に、タイでもバンコク連続爆発事件が落ち着きを見せ始めている。

 これまでのおさらいすると、事件から約2週間後の8月29日、警察はバンコク都内のムスリム居住区でトルコのパスポートを持つ男性を逮捕。3万もの携帯電話の記録から30に絞り、ついに容疑者の身柄拘束に至った。容疑者のアパートからは、17日のエラワン廟で使われた爆発物と同じ材料や100冊以上の偽造パスポートが見つかり、二転三転していた事件は急展開。

ウイグル族をトルコやマレーシアに搬送する手伝いをしていた

 容疑者のビラー・ムーハンマットはトルコからベトナム、その後ラオスからタイに入国。タイの国境では、イミグレーションの職員に1万8000バーツの賄賂を支払い、取り調べを回避していた。ちなみに容疑者の逮捕後、賄賂を受け取った同職員6人は異動となったが、異動で済んでいるのがタイらしいとも言える。

画像を見る
容疑者は逮捕されたものの、いまだバンコクのいくつかのショッピングモールでは入り口でボディチェックが行われている

 容疑者は「ウイグル族をトルコやマレーシアに搬送する手伝いをしていた」と供述しながらも、事件への関与を否定。しかし、内容には事実と食い違いがみられ、引き続き事件との関わりを調べている。

 翌30日には、ビラー容疑者の住まい近くのアパートからも大量の爆発物の材料が発見される。部屋を借りていたトルコ人の夫に持つタイ人女性は、AFP通信のインタビューで「夫の友人のために部屋を借りた。ただし、私が住むことはなく、部屋で何が行われていたかはわからない」と答えている。

 そして9月1日、カンボジア近くのアランヤプラテート国境で「爆発物を置いていった黄色いTシャツの男」と思われる容疑者の身柄を拘束。カンボジアに向かう途中、林を歩いていたところの逮捕劇だった。容疑者のミラルリー・ユースーフー(26)は、新疆ウイグル自治区出身と記された中国のパスポートを所持。押収物からは、爆弾の数式を記した紙が発見されたものの、その後、DNA検査によってエラワン廟で使われた爆発物との関係性は否定され、警察は爆発物を作った人物ではないかとみて、捜査を進めている。

いまだ「なぜ事件が起きたのか?」が
明確になっていない

 さらに2日、警察は南部のナラティワート県でタイ人男性のガーマルデン容疑者を逮捕。男はウイグル族の国外逃亡のためのドライバーをしていたという。

 と、ここまでが6日時点で明らかになっている点である。警察は引き続き捜査を続けているものの、気になるのは「事件の背景」だ。現場から見つかった証拠から推測すれば、ウイグル族に関係性があるグループによる犯行の線が強い。にもかかわらず、警察は動機については明言を避け、いまだ「なぜ事件が起きたのか?」が明確になっていない。現地メディアによれば、このまま明かされない可能性もあるという。

 現地紙「コム・チャット・ルック」は、今回の事件について「政府はウイグル族によるものとは断言したくないだろう。それは政府自らが招いた事件だと認めてしまうことになる」と報じている。2015年7月、政府はタイに入国しようとしたウイグル族約100人を拒否し、中国へ強制送還した。アメリカをはじめ、各国から批判を浴び、トルコのタイ領事館は政府の対応に反対するデモ隊に囲まれた。もし、今回の一件が、そのときの報復であれば、政府は「自業自得」だと言われかねない。

 治安維持という目的のために政権を維持してきた軍政にとっては、顔に泥を塗られたも同じ。民政移管も一向に進まない状況で、さらなる批判が噴出することもありえるだろう。そのため政府はウイグル族だとは認めにくく、同紙は「ウイグル族を手助けしていた偽造パスポートを持つグループの犯行で済まされるかもしれない」とつづっている。

 容疑者が次々と逮捕され、沈静化してきた今回の一件。バンコクの街も落ち着きはじめ、ようやく日常を取り戻した感もある。ただし、いまだ事件の真相が見えてこないのも事実。喉に刺さった小骨のように引っかかる点は、このまま解明されないかもしれない。

あわせて読みたい

「タイ」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    秋篠宮夫妻 公用車傷だらけの訳

    NEWSポストセブン

  2. 2

    医師が語る現状「医療崩壊ない」

    名月論

  3. 3

    昭和の悪習 忘年会が絶滅する日

    かさこ

  4. 4

    貯金がない…京都市を襲った悲劇

    PRESIDENT Online

  5. 5

    宗男氏 桜疑惑めぐる報道に苦言

    鈴木宗男

  6. 6

    医師 GoTo自粛要請は過剰な対応

    中村ゆきつぐ

  7. 7

    コロナは若者に蔓延? 医師が仮説

    中村ゆきつぐ

  8. 8

    感染増の原因はGoToだけではない

    NEXT MEDIA "Japan In-depth"

  9. 9

    在宅勤務でも都心に住むべき理由

    PRESIDENT Online

  10. 10

    早慶はいずれ「慶應一人勝ち」に

    内藤忍

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。