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留学について(「優雅な留学が最高の復讐である」を読んで)

優雅な留学が最高の復讐である画像を見るという本を献本いただいた。感謝。で、読んで考えたこと。

本書はタイトルからして奇妙である。で、いきなり1章から「留学はするな」である。奇妙な本だ。

本書が述べるように、我々の言葉にはベタ、ネタ、メタがある。ベタなコンテンツと、表面上のコンテンツの背後に隠れたネタ、そして更に見えないところにあるメタなところである。

ベタな話はたいていつまらない。留学はいい、だからしろ、という汗臭い話もたいていつまらない。

「留学はいいぞ、まず多様な価値観が得られるから」、なんてよく言われるが、そういう「留学のススメシンポジウム」みたいなところに呼ばれるとほとんど全員が「同じ話」をしている。価値観むっちゃ画一的やん、とツッコミを入れたくなる。事程左様に日本の留学者には「留学者史観」というものがあり、主観的成功者のそれはほとんど「同じストーリーの焼き直し」である。NHKの「プロフェッショナル」のように、現在大活躍、しかし留学中はこんなつらいこともあった。転機となるブレイクスルー・エピソード、そして新たな挑戦、ちゃんちゃん。である。もちろんこういうコテコテでベタなストーリーが大好きな人もいるだろう。ぼくは嫌いだが。

本書はそのようなベタな話で押し通さず、ネタとしてのストーリーでメタに語ることを目指しているという。例えば、バブル時代の気合と根性で全てを乗り切るようなタイプの留学者を「留学マッチョ」とネタ化してみせたり、「留学ノスタルジー」を一刀両断にしたり、なかなかユニークである。グローバル化についても非常に分析的で、アンチグローバリズムに対する最大の良薬はグローバル化である、という多重な指摘も説得力がある。その一方で、スティーブ・ジョブズを引用してみたり、ありがちなビジネス本みたいな内容も散りばめられている。どこまでがベタでどこからがネタなのか一見すると分からない。ビジネス本として書いているのだろうか。それともビジネス本チックにわざと書いたパロディなのか、オマージュなのか、まさかパクリではないと思うけど。

というわけで、本書は(一部を除くと)通俗的なビジネス本的な留学のすすめとして読めるし、そう読む読者は多いだろう。留学経験者、とくに主観的成功者は必ずそう読むに違いない。すこし斜めに読める人は、そうではない本書の多重性に気づくと思うけど、どこまでベタでどこからネタなのかの判断は個人差があるかもしれない。いずれにしても本書がユニークで類書とは全く違うのは間違いなく、それは本書の「留学対談」に色平哲郎先生が登場している(!)ことからも間違いない。

本書で特に笑ったのが、山本雄士先生のお言葉。「研究留学に行って帰ってきた教授や助教授たちから「君たち、アメリカはよかったよ」といわれたことですね。(中略)だったらなぜその環境を今のこの日本の大学につくらないんだよ」、、、、ほんまですなあ。

ところでスーパーグローバリズムとはOEDによると、髪の毛を逆立てて金髪にすることである。

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