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臆せず国際社会のリーダーたれ

産経新聞【正論】
2015年8月26日


 安倍晋三首相は先の戦後70年談話で、わが国の戦後の「平和国家としての歩み」に触れ、この不動の方針を今後も貫く決意を語った。わが国の外交は歴史認識、慰安婦問題での中国、韓国の攻撃に守勢が目立つが、世界に目を転ずれば、平和国家への歩みや国際貢献は高く評価されている。日本は自信を持って自らの主張を世界に発信する時期に来ている。

 ≪大きな成果、ハンセン決議≫

 日本政府が提案したハンセン病差別撤廃決議が2010年、国連本会議で、今年7月には差別撤廃の徹底に向けたフォローアップ決議が同人権理事会で相次いで採択された。いずれも全会一致。日本政府の呼び掛けに応じた共同提案国も前者は59カ国、後者は93カ国に上った。

 筆者も世界保健機関(WHO)のハンセン病制圧大使として協力させてもらったが、一連の流れを一貫して主導した日本政府の努力は、日本外交の大きな成果として評価されていい。

 ハンセン病は1980年代の有効な治療薬の開発と無料配布で「治る病気」となった。しかし回復後もなお「元患者」として深刻な偏見と差別に直面している。偏見・差別は、あらゆる争いに共通する「負の遺産」であり、撤廃に反対する国はない。戦後、一貫して平和を求めてきた日本にふさわしい提案でもあった。

 筆者が国民和解担当日本政府代表を務めるミャンマーでも、少数民族地域での人道支援を柱にした日本政府の取り組みは、ミャンマー政府、少数民族双方から極めて高く評価されている。

 60年以上にわたって内戦が続いてきただけに、国民和解は一筋縄ではいかないが、人道支援を通じ“平和の果実”を実感してもらうことで停戦交渉を促進する日本外交はミャンマーでも存在感を増しており、やがて和解の実現につながると期待している。

 日本が国際社会に発信すべき平和のメッセージは、いくらでもある。「核兵器」もそのひとつ。今後もさまざまな議論が戦わされることになるが、唯一の戦争被爆国である日本の発言は大きな影響力、重みを持つ。安倍首相も70年談話で「不拡散と究極の廃絶を目指し、国際社会でその責任を果たす」としており、世界も注目している。

 ≪戦後の歩みにもっと自信を≫

 「母なる海」の保全も然(しか)り。地球人口は既に70億人、半世紀後には100億人(国連推計)に膨れ上がり、海はその負荷に耐え切れないところまで来ている。温暖化に伴う海面温度の上昇、生活排水による水質悪化、漁業資源の枯渇など危機は極限まで来ており、筆者も7月の本欄で世界が結束して海の総合管理を徹底するよう訴えた。

 南シナ海などの現状を見ると、各国の利害・主張を直ちに調整するのは難しいが、海は人類の公共財。われわれには100年後の世界に、健全な海を引き継ぐ責任がある。この点を軸に国際協力を求めれば、間違いなく各国の賛同も得られるはずだ。

 安倍首相は戦後70年談話で「歴史の教訓を深く胸に刻み、より良い未来を切り拓いていく、アジア、そして世界の平和と繁栄に力を尽くす。その大きな責任がある」と述べた。

 英国BBCが毎年行う「国別好感度調査」で日本は14年、対象17カ国・地域中5位だった。中国、韓国で「(日本は)悪影響を与えている」との数字が高まったのが、12年の1位からダウンした一因とみられるが、両国を除けば「世界に貢献する国」としての日本の評価は依然高く、われわれは一貫して平和路線を歩んできたこの国の戦後に、もっと自信を持つべきである。

 ≪日本の知見・技術は国際公共財≫

 冷戦後の世界は一層複雑化し、大国だけで重要な国際問題を解決する時代は終焉(しゅうえん)しつつある。同時に地球全体で進む温暖化や気候変動、巨大化する自然災害に一国で立ち向かうのはもはや、不可能である。

 日本には米国や中国、ロシアのような広大な国土や人口、軍事力はない。しかし「課題先進国」といわれる通り、今後、世界各国が避けて通れない災害や環境破壊、少子高齢化など、難問が山積している。

 既に蓄積され、さらに今後新たに開発される多くの知見や技術は、やがて人類の公共財として、国際社会に共有される。そうしたソフトパワーこそ、日本の国際貢献を充実させ、国際社会での日本のプレゼンスを高める道につながる。

 戦後70年談話の閣議決定に先立ちまとめられた「21世紀構想懇談会」の報告書も、今後、日本が取るべき施策として、環境問題や人間の安全保障、貧困の削減、国際社会における女性の地位向上など多くを提言している。

 わが国に可能な国際貢献は、国民が考えているよりはるかに多い。日本の考えを臆せず発信し行動することが、安倍首相のいう積極的平和主義につながる。

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