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日立の鉄道事業、カギは「現地化」

鉄道業界には、世界3強と呼ばれる企業があります。カナダのボンバルディア、独シーメンス、仏アルストムです。この3強に対し、近年、日立が急速な追い上げを見せ、そのシッポを捕まえようとしています。

論より証拠といいますか、日立が、鉄道発祥の地のイギリスで、いよいよ車両の生産を開始します。
昨日、英ニュートン・エイクリフで鉄道車両工場の開所式が行われました。日立からは会長の中西宏明さん、英国首相のデーヴィッド・キャメロン氏も出席しました。

日立の鉄道ビジネスの海外展開は、1999年、英国に一人の駐在員を派遣することから始まりました。00年、02年と2度の入札に失敗し、社内では「英国の鉄道事業は撤退すべき」といわれたこともあったといいます。
しかし、日立は、研究を重ね、英国基準にのっとった新車両の開発を経て、05年に初めて、英国鉄道に「クラス395(通称ジャベリン)」29編成、174両受注と、7年間(最長35年間)の保守契約に成功しました。ジャベリンが高く評価され、12年には、「都市間高速鉄道プログラム(IEP)」122編成、866両の受注に成功。総事業費は約57億ポンド(1兆円)で、英国鉄道史上最大規模の事業でした。

日立は、12年に英レールウェイ・エンジニアリング社、15年に伊フィンメカニカ社傘下のアンサルドSTS社、アンサルドブレダ社を買収するなど、鉄道事業を拡大しました。その後も、英国で次々と受注に成功しています。

日立の鉄道事業が順調な背景には、「現地化」があります。
日立は05年、英国市場への進出に当たって、現地販売会社「日立レールヨーロッパ」を設立しました。

まず、トップを現地人材に任せました。現在、日立レールヨーロッパ会長兼CEOのアリステア・ドーマーは、アルストム出身で、欧州鉄道ビジネスに精通しています。
海外で鉄道ビジネスを行う場合、その地の鉄道インフラの整備状況やニーズなどを把握する必要がありますが、これには時間がかかります。その道のプロを招くのが、いちばん手っ取り早いやり方です。

さらに、国がかかわる大規模案件は、人脈が不可欠です。政府、自治体、鉄道事業者との信頼関係なくして、ビジネスはあり得ない。その意味で、現地の事情に精通し、人脈をもつ現地人材をトップにつけたことは、大きかったといえます。
そして、今回の現地工場です。英国で鉄道を走らせるのですから、経済的にも時間的にも、現地生産がもっとも効率がいい。
キャメロン首相は、昨日の開所式の挨拶で、「鉄道の製造業が地域に戻ってきた。700人以上の雇用も生まれる」と語りましたが、雇用創出は、現地社会に受け入れてもらうための欠かせない要素です。

断るまでもなく、鉄道は交通インフラであり、国家事業です。そのビジネスに入り込むために、現地化が欠かせないのは当然のことです。信頼関係がなければできないビジネスです。

その意味で、キャメロン首相の挨拶からもわかるように、日立は、英国から確かな信頼を得ています。人脈をつくり、工場など設備投資をし、現地から部品を調達し、雇用も創出する。99年以来、16年がかりで英国の地に根を張ったのです。
現地化により、長期的視点をもってビジネスを展開する覚悟を示したからこそ、英国におけるいまの日立の鉄道事業成功があるといえます。

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