記事

渋谷直角『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』のわりと本気な感想

1/2

実は8月上旬に読み終わっていたのですが、旅行等々でバタバタしていたらすっかり感想を書くのを忘れていました。というわけで本日は『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』の感想文を書きますが、きっとネタバレするので未読の方はご注意ください。

リンク先を見る奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール

ライフスタイル系雑誌がバカにされてしまう理由

こちらのマンガの主人公は、家電系の雑誌から、ライフスタイル系の雑誌「マレ」の編集部へ異動してきた、編集者のコーロキくん。最初は編集部のおしゃれピープルの音楽や雑貨やワインなどの慣れない話題に四苦八苦するのですが、次第にそんな環境にも溶け込んでいきます。コーロキくんが敬愛してやまないのは今も昔も変わらず奥田民生ですが、他のジャンルのちがう音楽にも勉強といいつつ手を出してみたりとか。

そんなコーロキくんの心を乱すのが、仕事先で出会ったレディスブランドのプレスの女性、あかりです。しかしこのあかりが曲者で、いわゆる「サークルクラッシャー」のごとく、「マレ」編集部の男性を次々に狂わせていくのです。そして「マレ」編集部はついに……! とこの先を語りたいところですが、ここから先はまじでネタバレになるので慎んでおきます。

この魔性の女・あかりについて考えてみるのもけっこう面白いと思うのですが、私がとりあげたいのは、やっぱり「ライフスタイル」「丁寧な暮らし」「サードウェーブ」などなどを取り囲む現状です。春頃に一度話題にのぼったあと、今は論争も下火になったような気もしますが、私も中立を装いつつ「どーなの?」とつい口を出してしまったエントリを書いています。

aniram-czech.hatenablog.com

主人公のコーロキくんも最初、ライフスタイル系の雑誌である「マレ」と、その編集部にいるおしゃれピープルたちを、ちょっと見下したような目線で異動してくるんですよね。だけど、コーロキくんの不手際が招いたネット炎上のトラブルを編集部の人たちが受け止めてくれたあたりからそれもなくなり、以降は編集部の一員として、雑誌「マレ」の仕事をすっごく頑張ります。書店で、ライフスタイル系の雑誌をバカにしている読者、つまり私みたいなやつを実際に目の当たりにし、悔しい思いをしながらも、なんとかいい雑誌を作ろうと邁進していくのです。

コーロキくんが書店で見かけた読者のように、ライフスタイル系の雑誌がバカにされてしまう理由として、よく「本質的ではないから」みたいなことがいわれることがあります。私も春頃は「そうそう、本質的じゃないんだよねー」という論調のことをつい書いてしまっていたのですが、この作品を読んでいたら、ライフスタイル系の雑誌がバカにされてしまう原因は別のところにあったんじゃないかという気がしてきました。本質たって、何が本質なのかとか考えていくとよくわかんない話になりますしね。「本質的じゃない」って、いってる本人も意味わかってなかったりします。

「マレ」の編集部の人たちや異動してきたコーロキくんが、ものすごい信念をもって雑誌を作っていることが、この作品を読むとよくわかります。実際のライフスタイル系雑誌やウェブマガジンだって、きっと同じです。たとえ出来上がった雑誌が「上っ面」に見えたとしても、その裏に作り手のものすごい努力があったりだとか、真剣さがあったりだとか、編集者の強い思いが込められていたりだとかっていうことは、普通に考えられることです。

だから、「丁寧な暮らし」界隈に対してナナメに構えているような人間であっても、実際にそのモノ作りの現場を目にしたら気が変わることだってあるし、心を動かされることだってあると思うんですよね。私もナナメに構えてるほうの人間ですけど、実際にそういう雑誌の編集部の人たちと知り合いにでもなったら、悪くいわない、というかいえなくなると思います。それは利害関係云々の話ではなくて、たぶん、というか絶対、作り手には作り手のプライドがあるはずだし、テキトーに作ってるわけじゃないってわかるから。

だけど、どんなに真剣に作っても、裏にどんな思いをこめても、出来上がったものが「上っ面」に見えたらそれは「上っ面」になってしまうんです。作り手はどんなに真剣でも、消費者は基本的にテキトーに受け流すものです。それは絶対に覆せないものなので、「こんなに強い思いをこめてるのに!」っていってもそれは甘えというか、無駄なんですよね。これはブログを書いている私自身も自分のこととして痛感していることで、すっごいいろんなことを調べて真剣に書いても、読者に「上っ面」に見られてしまったらそれは所詮「上っ面」なんだな、って思います。裏にどんな思いがあっても。

あわせて読みたい

「書評」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    原宿の竹下通りが「地方都市のシャッター商店街化」の衝撃

    内藤忍

    05月06日 16:17

  2. 2

    今も裁判で「三女アーチャリー」として…松本麗華氏を25年間も縛り続けるオウム真理教

    松本麗華

    05月06日 15:25

  3. 3

    変異株で感染の閾値が低下した 緊急事態宣言延長は仕方ないか 橋下さんと岩田先生の交わりのない議論を聞いて 責任ない批判は簡単

    中村ゆきつぐ

    05月06日 08:21

  4. 4

    橋下氏「緊急事態のためにも憲法改正をすべきだが、今の政治家には恐ろしくて任せられない」

    ABEMA TIMES

    05月06日 11:47

  5. 5

    渋野日向子 海外挑戦で欠場も“罰金100万円”規定に相次ぐ疑問の声

    女性自身

    05月06日 10:09

  6. 6

    北米や中国で木材価格が高騰 日本は「買い負け」状態

    ヒロ

    05月06日 14:58

  7. 7

    小池百合子知事は東京オリンピック開催中止を進言できるか トップに立つ者の責任

    猪野 亨

    05月06日 08:46

  8. 8

    中国で大食い動画に罰金160万円の衝撃! 日本も検討するべき5つの理由

    東龍

    05月06日 19:22

  9. 9

    コロナ感染止まらず・・緊急事態宣言延長へ、どうする東京五輪

    舛添要一

    05月06日 09:05

  10. 10

    ワクチン接種は1日67万人ペースでないと年内に終わらない

    諌山裕

    05月06日 13:46

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。