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巡り合わせ

戦後70年となる今夏、日本がポツダム宣言を受諾し降伏へと至るまでの顛末を描いた半藤一利原作の「日本のいちばん長い日」が再び映画化され、上映されています。この時の第29代内閣総理大臣は、昭和天皇の信頼が厚かった鈴木貫太郎。一億玉砕や本土決戦論が渦巻く中、終戦への道筋をつくることは困難を極めました。

  鈴木貫太郎の父は関宿(野田市に合併)出身。貫太郎自身は大阪の堺で生まれましたが、後年関宿に戻りました。したがって、千葉県出身の最初の総理といわれています。2人目が第95代内閣総理大臣の私です。千葉県出身の総理は、巡り合わせといいながらも困難な時代に出番が回ってくるようです。

  逆に、安倍総理は就任以来運に恵まれていました。景気循環でみると景気の底は平成24年11月です。安倍政権の本格始動は平成25年1月からですから、景気が底を打ち拡大局面に入ってから政権を担当したということです。アベノミクスへの幻想も加わり、高支持率をこれまでは維持してきました。しかし、GDPを四半期ごとにみれば、一進一退を続けています。

  雇用に関する表向きの数字も、安倍政権で改善されつつあります。15歳以上で働く力と意思がある人のうち、仕事を探しているのに見つけられない人の割合を示す「完全失業率」は3.3%。09年に鳩山政権がスタートした時の完全失業率は5.4%。野田政権の末期は4.1%。3年3か月の民主党政権下で1.3%の改善をしていますが、安倍政権になり、さらに0.8%の改善があったということです。

  企業が求める働き手の数を求人数といいます。求人数を仕事を探している人の数で割ったのが「有効求人倍率」です。この有効求人倍率の直近の数字は1.21倍で23年ぶりの高い水準となっています。

  安倍総理はこれらの完全失業率や有効求人倍率を、政権の実績として自慢たっぷりに語ります。しかし、大きな勘違いをしています。昭和22~24年に生まれた一番人口の厚みのある世代を「団塊の世代」といいます。この団塊の世代の人たちが平成24~26年の間に順次65歳に達し、次々と労働市場から退出したことが、完全失業率や有効求人倍率の改善に大きく寄与しているのです。

  雇用環境の好転を示す数字は決してアベノミクス効果ではなく、人口要因という政権にとってはツキによるものです。しかし、運に恵まれてきた政権も、いよいよその実力が試される時を迎えました。

  中国経済の減速感を背景として株式市場の混乱が世界中に広がっています。上っつらの数字に一喜一憂しがちな安倍政権が右往左往しなければいいのですが…。

  人気とりの追加の金融緩和や財政出動といった悪手に手を染めないことを祈ります。

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