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ホームレスも幸せに! 農業起業で日本を照らす【1】 -対談:えと菜園代表 小島希世子×田原総一朗 - 田原総一朗の「次代への遺言」

将来はアフリカで農業をしたいと夢見た少女時代。大学時代は農作物の卸売会社でアルバイト。農業関連企業への就職を経て起業し、農作物の栽培のほか、ホームレスの就農支援も行う。彼女をそこまで駆り立てる農業の魅力とは?

トラクターってなんかカッコいい

【田原】小島さんは子どものころから農家になりたかったそうですね。農家に憧れる子どもは珍しいと思うんだけど、どうして?

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えと菜園代表 小島希世子氏

【小島】私は熊本県合志市という農村地帯で育ちました。親は学校の先生でしたが、まわりはみんな農家。隣の家に遊びに行くと、トラクターやコンバインがあって、牛を飼ったりしていて、なんかカッコいいなと。

【田原】カッコいい?

【小島】うちには普通の乗用車しかないのに、それよりずっと大きいトラクターがあるんですよ。そういうところで遊んでいると、農家の方が「これつくったから持っていきな」と自家製の食べ物をくれたりします。そういう姿を見て、「この人たち、なんかすごい!」と憧れてました。

【田原】中学のときに柔道や空手をやっていたそうですが、どうして?

【小島】きっかけは農業です。小学校低学年のとき、アフリカの飢餓に迫る海外のドキュメンタリー番組を見て、将来はあっちの国に行って農業をしようと決めました。それまで漠然と農家への憧れはあったけど、職業として意識したのはそれが最初でした。ただ、海外は危険だという印象があって、行くなら体を鍛えたほうがいいと思った。それでまず小学生のときに剣道を、中学に上がってからは柔道と空手を始めました。中学のときは、部活で柔道をして、終わったら空手着に着替えて道場に行くという生活でした。

【田原】空手は途中でお辞めになったけど、柔道はずっと続けたそうですね。段は持っているのですか。

【小島】一応、二段です。私が高校生のころはまだインターハイに柔道女子がなかったのですが、県ではだいたい1~2番でした。

【田原】すごいですね。柔道でオリンピックへ行こうなんて思わなかったのですか?

【小島】ちょっとは考えました(笑)。それで大学でも柔道部に入ったのですが、たまたま谷亮子選手と一緒に練習する機会があって、コテンパンにやられました。それで柔道の道はあきらめました。

【田原】そういえば、マザーハウスの山口絵理子さんはご存じですか。たしか彼女も柔道の選手だった。

【小島】じつは同じ大学だったんです。山口さんも一時期、柔道部にいたから知っています。小柄で、かわいらしい方ですよね。

【田原】山口さんも見た目からは想像できないくらいにガッツがある。女性の柔道家は、起業に向いているのかもしれませんね。ところで、大学では農業ではなく宗教の勉強をしていたそうですね。農業のほうはお休みしていたんですか。

【小島】いえ、農家になりたいという夢は変わらなかったので、農作物の卸業でアルバイトをしていました。

【田原】具体的には、どんなアルバイトですか?

【小島】最初に入ったのは社員3人の小さな会社で、レトルト食品をつくるメーカーから注文を受け、全国600人くらいの契約農家さんから農作物を提供してもらってメーカーに届ける業務をやっていました。いま自分がつくる側になってよくわかったのですが、やはり農作物が売れないと農家は成り立たない。流通のことを勉強できたことはいい経験になりました。

【田原】ずっとそこでアルバイトを?

【小島】はい。卒業後はそのまま正社員になって、計3年働きました。その後は、有機農業をやっている会社に転職しました。

【田原】転職先ではどのような仕事をしていたのですか?

【小島】私が勤めたのは、有機農業をやっている800ぐらいのグループを束ねて、栽培から販売まで計画を立ててやっていく会社でした。そこが新たに消費者に商品を直接届ける直販部門を立ち上げるということで、その手伝いをさせてもらいました。

【田原】働きながらだと自分で農業をやるのは難しいですよね。このまま普通のOLになっていくんじゃないかという不安はなかったですか。

【小島】1つ目の会社では最初に「いずれ農家として独立する。その準備をさせてほしい」と社長に頼みました。すると社長は、「仕事が早く終わったら、余った時間を起業の準備に充ててもいい。そのかわり、さらに小島さんの次の世代で農業をしたいという人が現れたら、ちゃんとサポートしてあげてほしい」と言ってくれた。そのお言葉に甘えて、働きながら独立する準備をしていました。

【田原】そこで聞きたい。農家って誰でもなれるものですか。小島さんは実家が農家じゃないから、農地を持っていない。それなのに、どうやって農家になれたのですか?

【小島】本当にもう、できることからやっていくしかないですよね。地主さんとコネがあるわけではないので、最初は農地も簡単に借りられません。ようやく見つかったのは、市民農園みたいなところで約10坪。それがスタートです。

【田原】10坪は小さいですね。

【小島】さすがに小さいので、会う人会う人に、「いま農地を探してます」と話をしていました。その結果、ある地主さんと知り合って、次は600坪を借りることができました。正確に言うと、土地を借りるのではなく、地主さんと一緒に農業をやるという形でしたが。

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【田原】借り賃はどのぐらい?

【小島】1反あたり年間数万円です。

【田原】えっ、そんなに安いの?

【小島】農地って、ほったらかしにしていると荒れちゃうんです。最近は、タダ同然で貸すからきちんと管理してほしいという地主さんも多くて。

【田原】そうですか。いまは全体でどのぐらいですか?

【小島】約1800坪です。賃料は以前より少し高くなっていますが、それでも農地なので安いです。

【田原】でも、コストが安くても売れないと続けられない。いまここでつくった農作物は、どうやって売っているのですか?

【小島】自分で近所のスーパーに持っていったり、農業体験に来るお客さんに向けて販売したりしています。

【田原】なるほど。農協を通して市場には出さないんですね。おもしろいけど、それで採算とれますか。

【小島】まあ、なんとか。通常の野菜よりは若干高めの価格で売っていますが、それが本来の価格だと思います。いま農家を継ぐ人が少ないのは、価格が安すぎることも一因です。農作物は人間の体をつくるものなので、もうちょっと関心を持たれるべきだし、ありがたいことに関心を持ってくださる方は10円、20円高くても、買ってくださいます。

田原総一朗
1934年滋賀県生まれ。県立彦根東高校卒。早稲田大学文学部を卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経てフリーに。幅広いメディアで評論活動を展開。

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