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「社内失業者」という名の600万人の貴族

 現在のアメリカの失業率が9%台という高い位置にあることはよく知られた話だが、日本の完全失業率は4%台で推移している。

 「失業率」というのは、元から働く意思の無い人間まで含めた比率のことであり、「完全失業率」というのは働く意思を持った人間のみの比率であるので、通常は「完全失業率」よりも「失業率」の方が悪く(高く)なる。失業率で言えば、日本も5%をゆうに超えているはずである。

 一説ではアメリカの完全失業率は実質15%以上とも言われているので、どこまでが真実なのか判らないが、公式な発表である数字を信じて話を進めよう。
 
 日本の場合、失業率ではなく、完全失業率が4%台なのだが、数字の上ではアメリカよりもかなり低い位置にあると言える。実際に、日本の完全失業率は先進国の中でも低い位置にある(ことになっている)。

 日本の労働者人口は6200万人(そのうち400万人が公務員)と言われており、失業者は300万人程度なので、300÷6200で4%台という数字が出てくるわけだが、日本には失業者の他に「社内失業者」と言われる人が推定で600万人もいると言われている。

 ということは、300万人+600万人で、単純に見積もっても900万人の労働者が仕事をしていないということになる。社内失業者の中に公務員の一部がカウントされているのかどうか定かではないが、もしカウントされていないとなると、900万人どころか、1100万人程度にまで膨れ上がるのではないかと思われる。

 仮にその中間をとって1000万人だとしても、6200万人中、1000万人が働いていないということは、実質的な完全失業率は16%を超えていることになる。

 この「社内失業者」と言われる人々は、収入が無いわけではなく、まともに(?)給料をもらっている人々である。このことから何が言えるのかというと、トータルで考えれば、労働者5人で1人の失業者(失業者と社内失業者)の面倒をみているということである。換言すれば、実際に労働している人間は2割分の労働価値(=給料)を気が付かないうちに天引きされているということになるわけだ。

 既に定年で引退した人間を現役の労働者達で面倒をみる制度が賦課制の年金制度だが、これとは別に現役の労働者内でも賦課制の年金制度が別に存在しているというのが日本の労働市場の隠れた実態である。

 こんな身も蓋もないことを書くと、「仕事が無いのだから仕方がないではないか!」というような人が出てくるかもしれない。しかし、この場合、「弱者がどうのこうの…」と言うのは少し筋違いであると思う。

 会社内で自分の仕事が無くて、その会社をクビになるか自己退職して仕事を探しているという人であれば、確かに弱者だと言えるだろうが、仕事をほとんどせずに会社に居座って給料をもらっているというのは、どう考えても弱者とは言えない。仕事をせずに収入を得ている人間のことを、一般的には「貴族」と呼ぶ。「貴族」の立場にある人間が「弱者」を名乗るのは明らかに矛盾している。

 少し前に話題になった派遣切り問題や、大学生の内定率の低下問題のバックグラウンドには、600万人にも及ぶ社内失業者の存在があることは間違いないと思われる。

 社内失業者にも言い分があるかもしれないが、いかなる事情があるにせよ、働かずに高給を得ている労働者が数多く存在することは問題である。

 このような大きな問題を取り上げずに、表面的な失業率や就職率をいくら報道したところで、虚しいだけである。この問題を放ったらかしにしているせいで、新卒者が本来就くべき仕事に就けないというケースも多々あるのではないかと思う。
 
 「社内失業者」が増加する背景には、根本的に仕事が足りないという表向きの理由と、様々な事情で会社を辞めることができない(または辞めさせることができない)という後ろめたい日本のお家事情も関係している。一度上がった給料は維持したいという欲とプライドを併せ持ち、仕事が無くても会社にしがみついて生きるしかないという悲しい性を抱えた「貴族」は大勢いると思われる。
 
 こういった貴族(社内失業者)を減少させる(クビにするという意味ではない)ためには、高度成長時代に築いた経済成長が前提の社会システムを全て見直し、絶対的な仕事量を増加させるべく、新たな産業を創出していくという姿勢が重要であり、そのためには現在の義務教育体制自体も根本的に改めなければならない。

 教育というのは、ある意味で子供という人材に対する投資であり、将来的に自立し富を生み出すことのできる人間を育てるための先行投資でもある。将来的に、「国に面倒をみてもらえばいい」というような人間を育てるのが目的であるなら、国民の税金を利用した義務教育などは必要ないということになってしまう。

 「集団生活に慣れるために義務教育がある」という向きもあるが、今現在の日本社会をつぶさに観察すれば、そういった集団主義というものが時代遅れになってきつつあることは誰の目にも明白であると思う。それが良いことなのか悪いことなのかは別にして、時代が求めているのは“個性の無い大集団”ではなく“個性を持った個人”である。

 「社内失業者」というものも、元をただせば“個性の無い大集団”を良しとする社会から生まれたものであると言える。集団の中で生きることに慣れ、そこから抜け出すことを悪とする社会風土が招いた悲劇こそが「社内失業者」の増加だと言えるのかもしれない。

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