記事

安倍談話への直言その2(池田幸一メール)

(池田幸一さんの本日のメールです。)


 皆様。  池田幸一です。

 <承前> 「安倍談話」の曖昧さもさることながら、その後に行われた記者会見における総理の説明はピンボケで、逃げの一手という印象でした。共同通信記者の“国内外に最も伝えたいメッセージは何か?”は、焦点が定かでない、掴みどころのない美辞麗句に業を煮やした質問でしたが、総理はまともに答えられない。その中で折角苦労して作った談話を根底からひっくり返す総理の本音が出てしまいました。“具体的にどのような行為が侵略に当たるか否かについては、歴史家の議論に委ねるべきだと考える”です。

 また東京新聞記者の“月刊誌の対話の中で「村山談話」の継承を迫られ、個人的な歴史観に日本がいつまでも縛られることはないと貴方は述べている。今回の談話との整合性は?”と痛いところを突かれて立ち往生、まともに返事が出来ませんでした。冒頭の共同通信記者と同じように、何を言わんとしているのか掴みどころのないじれったさから日本テレビの記者が“この談話のどこを国民に伝えたいのか”とその核心を尋ねても、納得が行く回答は得られませんでした。

 右顧左眄、支離滅裂、これらは談話を書いた本人自身に確たる信念が無いからで、これでは相手の心に伝わりません。このバカげた一連のコメディが何を世界中に知らせたのか?眼を覆うばかりの二転三転、力を失くしたアヒルのような迷走を続けるうちに、総理の精神分裂症と稀に見る「歴史修正主義者」の正体、またその欺瞞に満ちた手の内がすっかりバレてしまったのです。これでは朝日新聞の社説が言う通り“何のために出したのか、出すべきではなかった”がご正解でしよう。

 いみじくもこの騒ぎで、メディアの世界も真っ二つ、政府の太鼓をたたく御用新聞と、そうでない新聞がますます対立の度を深めてしまいました。国論もはっきり二つに割れたのですが、今回の「安倍談話」は果たしてお友達や支持層にどのような影響を与えたか? 安倍政権を倒すのは野党や政敵ではなく味方のお友達であろうとの、私の予想は残念ながら見事に外れたようです。6年前の安倍政権は「慰安婦」の問題で日頃の広言が仇となり、支持者やお友達が怒りだして引きずりおろしたのですが、今度は少し様子が違うようです。

 先輩たちが出した屈辱的な談話を改め、愛国的な決定版を打ち立てるのだと意気高らかに取り組んだ「安倍談話」ですが、蓋を開けて見れば事志と違い惨憺たる敗北です。6年前の自滅と同じく、“日頃の広言に似ず、この有様は何事だ”とお友達が怒るのかと思いきや、誰も怒らない。それどころかよくぞ書いて呉れたと礼賛するのです。安倍政権を陰で操る「日本会議」や側近中の側近である稲田朋美女史を始め、右翼陣営挙げて、“バランスのとれた立派な談話だ”と誉めるのです。

 日頃の勇ましい安倍イズムが影を潜め、苦渋の全面敗北ですが、右翼の方々はこの裏切りを前回のようになぜ怒らないのか?ぼろぼろになった連隊旗のような「安倍談話」の、どこに惚れ込んでの賞賛か。どうやらこの一節が利いたらしいのです。

>日本では戦後生まれの世代が今や人口の八割を超えています。あの戦争には何ら関わりのない私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。<

 私は今回の「安倍談話」が内外に及ぼした影響について考えるのですが、最も大きく刺激され変質を迫られたのは総理自身と、安倍政権を支持する右翼の方々ではなかったか。戦後レジウムからの脱却を唱え、先ず手始めに二つの談話をぶっ潰せと始めた運動が、戦後国際秩序の固い壁に遮られて立ち往生、右に配慮し左に牽制されて悪戦苦闘を繰り返すうちに談話の構想が次第にやせ細り、この経緯を見ているうちに偏った右翼ナショナリズムの限界を知ったのではないでしょうか。

 怒るどころかこの四面楚歌の中でこれだけの譲歩で済んだのは上出来、ましてや総理は、方々に心の琴線に響くような台詞を巧みに入れて呉れたではないか。頭を下げるのはこれが最後と高らかに宣言して呉れたのも大手柄、こんなことで右翼陣営は内心喜んでいる、安倍総理もお仲間も、この談話作りのお陰で少しは眼が覚めたのではないか、この談話は歴史認識を見直し、新しい価値観を探るコンセンサス元年になるのではないでしょうか。

 諸外国、特に中国や韓国は複雑です。二つの談話からはかなりの後退ですが、大筋で踏襲するというのですから満足はしていないものの文句は言えない。後は言行一致、談話に相応しい今後の行動を見守るのみ、俄然有利に立ちました。安倍総理は大きな言質を取られたのです。「安倍談話」と云う借用書を渡した上はその内容に相応しい行動を形で示す義務がある、「安倍談話」は自分で自分の手足を縛ったことになります。

 何かが急速に変わりつつあります。毎日新聞は安倍総理が、9月3日に中国を訪問する意向だと伝えています。中国の戦勝記念パレードに参加し、習主席と会談したいというのです。ドァは何時でも開けてある とお高くとまっていた総理が、ドァから出ると云うのです。総理の心の中に革命が起こったのか? 「安倍談話」の功罪は暫く見守る必要がありそうです。 

<この項 完>

あわせて読みたい

「安倍談話」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    橋下氏 任命拒否の教授らに苦言

    橋下徹

  2. 2

    すすきの感染 酒飲みにうんざり

    猪野 亨

  3. 3

    iPhone12かProか...売り場で苦悩

    常見陽平

  4. 4

    コロナ巡るデマ報道を医師が指摘

    名月論

  5. 5

    処理水の安全 漁業側が自信持て

    山崎 毅(食の安全と安心)

  6. 6

    学術会議に深入りしない河野大臣

    早川忠孝

  7. 7

    岡村結婚の裏に涙のエレベーター

    文春オンライン

  8. 8

    コロナ禍も国内工場は異常な強さ

    PRESIDENT Online

  9. 9

    ロンブー淳 TVに抱く気持ち悪さ

    文春オンライン

  10. 10

    大阪の幻想 維新が得する都構想

    猪野 亨

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。