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米軍が変えたアメリカ人の食生活

今日の横浜北部は朝からずっと降っておりまして、なんとか暑さも一段落。

さて、4日連続の更新になりますが、今日はブロマガ(http://ch.nicovideo.jp/strategy/blomaga/ar854369)でも触れた記事の要訳を。

米軍が主導した食品加工技術によって、われわれの食べ物の好みも変わってきたという話です。

これは軍事技術がわれわれの生活を変えてしまったという意味で、テクノロジーと社会、そして人間の変化という、私にとっては非常に興味深いケースです。

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How we went from beef on the hoof to mystery meat in a box
by Anastacia Marx De Salcedo

http://www.latimes.com/opinion/op-ed/la-oe-desalcedo-military-meat-20150802-story.html

15-8/2 LA Times

骨付き肉から謎の箱入り肉までの歴史
by アナスタシア・マルクス・デ・サルセド

●菜食主義者の人々にとっては驚きかもしれないが、われわれ(アメリカ人)は動物性タンパク質を驚くほど多量にとるようになった。2000年の年間一人あたりの消費量は90キロであり、これは1950年代から18キロも増えていることになる。

●ところがここで重要なのは、われわれがとる肉というのは、骨から引き剥がされ、化学物質などを使いながら、朝食用のパテや昼食用のナゲッツ、そして電子レンジ用のメニューとして加工されているという点だ。

●ほとんどの人々はこのような変化を、われわれが屠殺のようなものを嫌う食習慣の幼稚化にあると考えている。ところが現在の消費者の好みというのは、スーパーマーケットによって主導されたわけではなく、20世紀初期の米陸軍による、兵士用の糧食のコスト削減の追求にその起源がある

●つまりこの分野では、供給から需要が生まれたのだ。

●数世紀にわたるわれわれの食生活では、夕食に骨付き肉を出すことが、ある種の保険のように働いていた。骨がついていれば、その肉が動物のどの部分から使われているのかを知ることができるし、それが新鮮なものかもある程度判別することができたからだ。

●逆に貧乏人たちは、主にシチューやスープの中にある正体不明の肉片をがまんして食べるしかなかったのだ。

●ところが第一次世界大戦が始まると、米軍とシカゴの食肉業者たちは470万人の米兵たちのために、一日450グラムの肉を用意する必要に迫られたのだ。もちろん海外にまるごと枝肉などを運ぶわけにはいかなくなったので、陸軍の補給部は安全な形で大量の食肉を運ぶ方法を必死に考えはじめたのだ。

●1918年にはジェイ・ホーメル(のちにSPAMなど販売)少尉の助けを借りて、陸軍はシカゴに食肉加工向上と運搬システムを設置している。この結果として、軍は骨や脂肪、それに軟骨などを取り除いた肉を25%少ない重さで運ぶことに成功した。

●長方形の塊で冷凍され、麻袋や油紙に包まれた肉は、運搬する際に60%もスペースを節約できた。

●第二次世界大戦では、シカゴのアーマー&スウィフトという食肉業者が海軍と協力して、骨抜きの技術に投資し、肉をランク分けして瞬間冷凍することに成功した。

●1946年の米陸軍省は「軍における牛肉の加工技術の進展は、牛肉を現在の世界で活躍する陸軍の糧食にすることで成功した。米軍は骨なし牛肉の冷凍・梱包技術をこれ以上の実験がいらないほどの地位まで高めたのだ。今後は民間がこれを活用する時代に入った」と記している。

●ところが現実はそう簡単にいかなかった。なぜなら、その普及にはスーパーマーケットの台頭や、鉄道の駅の近くにある町の食肉店のような古いビジネスモデルが、ハイウェイの近くの工場で加工されるという新しいモデルに淘汰され、しかも消費者側も、箱詰めされた骨なし肉の経済的・実用的な利点を受け入れる必要があったからだ。

●1963年から2002年まで、米国内の最大の加工工場から出荷された箱詰め牛肉の割合は、総売り上げの10%以下から60%まで上昇しており、現在ではスーパーで売られている牛肉の90%以上を占めるようになった。

●米軍は骨抜きを止めていない。箱入り牛肉が普及すると、軍の幹部たちはやや控えめに、肉の購入価格を60%に引き下げる目標を立てた。そして実際に、牛の中で最も安い部位の肉を集めて加工することにより、カット肉のような見た目と味を実現して、値段を下げたのである。

●また、軍の食品科学者たちは研究室に向かうと同時に、大学や産業界に手を広げて共同研究を始めた。彼らは肉をほぐす機械を改善し、肉の結着剤(肉の粘液と塩とその他の化学物質で構成)を発明し、肉にリン酸塩を加えるとジューシーさや歯ごたえ、そしてフレーバーが加わることを発見したのだ。

●また、これらの技術の発展によって、クズ肉をまとめて、肉片やカツレツ、もしくはステーキに似せた成型肉が実現したのである。

●1972年には軍の主導した成型肉プロジェクトが実を結び、グリル・ステーキやスイス・ステーキ、薄焼きステーキ、そして朝食用のステーキなどが工場で生産できるようになった。76年には成型肉としての仔牛のカツレツが部隊に配られることになり、ラムやポーク・チョップ、それにやや遅れてビーフステーキも可能となった。

●こうして成型肉は、個別包装されたレーション(MRE)として正式採用されることになったのだ。

●米軍がこの目標を達成した後に、彼らは手を引いて、コストの安さを追求する民間の業者に成型肉のプロモーターとしての役割を引き渡した。産学は共同して製造コストを下げる方法を追求している。

●このような方法には、温脱骨(死体がまだあたたかいうちに骨を抜く)や脱腱、機械分離法(枝肉をこし器に押し付ける)、脂肪をタンパク質の沈積物に混ぜること、そして血漿を還元物として使う方法などだ。

●このような奇妙なテクニックによってできたアイテムは、まずファーストフード店のメニューとしてデビューすることになり、スーパーの冷凍食品コーナー、そして最後に冷蔵ケースの中に陳列されるようになったのだ。

●成型肉の消費は90年代から2000年代初期にかけて急上昇し、97年には全米統計局が「非家禽食肉加工」という新しい産業分野を付け加えることになったほどだ。この分野では240億ドルの年間売上があり、2007年までにはそれが370億ドルにまで成長している。

●20世紀はじめのアメリカ人はTボーンやプライムリブにこだわっていたが、米軍のおかげで、アメリカ人はもう自分たちの夕食の食材の確かさの証明としての骨付き肉にはもうこだわらなくなった。むしろ米軍が開発した食べ方、つまり骨なし(ボーンレス)と成型肉を好むようになった、とも言えるのである。
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これは明らかにテクノロジーの発展が人間(の好み)を変えた、という典型的な例ですね。

ヘラクレイトスは「戦争は万物の父である」という言葉を残しておりますが、これはやや大げさだとしても、少なくとも牛肉の加工という面では、戦争や軍事的要求からの技術の発展という要素は見過ごすわけにはいきません。

人間はテクノロジーを発展させますが、そのテクノロジーは、逆に人間を変えてしまうのです。

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