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首相談話を報じるメディアの悪癖

 70回目の終戦の日を迎えました。内外すべての犠牲者に改めて深い哀悼の意を表するとともに、世界平和を希求する思いを一新したところです。

 終戦の日に合わせ、安倍晋三首相は昨日、戦後70年の首相談話を発表しました。メディアが注目していた「侵略」と「おわび」という2つのキーワードは盛り込んだものの、「触れる」程度にとどめ、おおむね保守系メディアは歓迎、左派系メディアはやや批判的なトーンで報じています。

 そして各新聞ともに「謝罪続ける宿命 背負わせない」という一文に注目し、見出しで大々的に掲げました。産経新聞など保守系メディアは「謝罪外交を終わらせたい」という首相の思いを支持し、朝日新聞など左派系メディアは「謝罪を続けたくないならここで潔く謝罪し、国民とアジア諸国民との間に横たわる負の連鎖を断ち切る」(朝日新聞社説)べきだったと批判しているのです。

 しかし、談話全文を読むと、マスコミの報じ方とは違った印象を受けます。

 8月14日 総理大臣談話(首相官邸HPより)
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/discource/20150814danwa.html

 まず、長い。1995年の村山富市首相談話は約1300字、2005年の小泉純一郎首相談話は約1100字でしたが、今回の安倍談話はそれらを大幅に上回る約3400字。直接的な謝罪の文言を避け、間接的に反省の思いを伝えようとした結果、必要以上に饒舌な文章になっています。

 「何の罪もない人々に、計り知れない損害と苦痛を、我が国が与えた事実。今なお言葉を失い、ただただ、断腸の念を禁じ得ません」

 「私たちがいかなる努力を尽くそうとも、家族を失った方々の悲しみ、戦禍によって塗炭の苦しみを味わった人々のつらい記憶は、これからも決して癒えることはないでしょう」

 談話にはこうした反省の弁がたびたび出てきますが、あまりに長いため、ほとんどの日本人も外国人もじっくりと全文を読むことはないでしょう。結果的にニュースで切り取られた一部だけをとらえ、「首相は直接お詫びせず、過去の内閣の立場を踏襲しただけ」という印象を持つかもしれません。非常にもったいないことだと思います。

 「謝罪続ける宿命 背負わせない」という一文も誤解を生んでいるかもしれません。元々の談話にはこうあります。

 「あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。しかし、それでもなお、私たち日本人は、世代を超えて、過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません。謙虚な気持ちで、過去を受け継ぎ、未来へと引き渡す責任があります。」

 この文章が本当に伝えたかったのは後ろの「私たち日本人は世代を超えて、過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません」という文章であり、前半の部分ではありません。首相の個人的な思いはともかく、総理大臣談話は「歴史に向き合うべき」だと述べているのです。前半の部分だけを切り取るのは日本語を知らないか、意図的に日本語の文法を無視したか、どちらかです。

 メディアの報道姿勢には他にも問題があります。新聞やテレビと言った大手メディアは購読者(視聴者)にわかりやすく伝えようと物事を単純化する癖があり、「おわび」や「侵略」といったキーワードばかりに焦点を当てて報じているからです。

 本当に重要なのは談話全体を通じて国民に、海外に何を伝えようとしているかです。しかし、各メディアは自分たちの論調を正当化するために、一文一文の言葉尻ばかりをとらえようとしています。そうしたマスコミの報じ方に右往左往している政治家や官僚も問題ですが。

 総理大臣談話の表現ぶりはともかく、私を含めた日本人のほとんどが先の大戦を深く反省し、二度と自らの意思で戦争に突入していくことはならぬと心に誓っていることと思います。世界平和を守るために、我が国がどうふるまうべきなのか。国会の安保法制審議でも言葉尻をとらえた口喧嘩ではなく、本質を突いた議論を期待したいものです。

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