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人民元ショックで分かった中国とIMFの思惑

本日も、人民元の基準値が改定されました。しかし、本日は、切り下げられたのではなく、切り上げられたのです。その率は0.05%。

 つまり、3日連続して切り下げられた(切り下げ幅は合計4.65%)後、0.05%切り上げられ、切り下げ幅は合計4.6%にやや縮小したのです。

 0.05%というのは、当然のことですが、0.1%の半分しかないのです。そのような僅かな修正をわざわざ行う必要があったのでしょうか?

 でも、中国にとっては大きな意味があるのです。つまり、そのことによって基準値は上がったり下がったりするものであるという証拠にすることができるからです。

 しか~し…繰り返しますが、切り下げ幅はたったの0.05%。

 おかしいというか、面白いでしょう?

 いずれにしても、中国がやっていることを見ていると、一体基準値とは何なのかと思ってしまうのです。

 中国によれば、基準値とは、日ごとに定められる取引の目安であって、為替レートの乱高下を防ぐためのものである、と。そして、現在では1日当たり基準値の上下2%の範囲でしか変動を認めていないので、1日でそれを超えてレートが動くことはない、と。

 確かにそうすることによって急激な変動が回避されるのは事実ですが、だったら、何も基準値などをわざわざ設定せず、前日の終値の上下2%の範囲でしか変動を認めないとしても同じことなのです。

 なのにわざわざ基準値というのを設けている、と。しかも、その基準値の算出方法は未だに不明確なままであるのです。

 従って、中国が幾ら市場実勢をより反映して基準値を定めるなどと言っても、基準値の決定は当局の裁量に任されたままなのです。

 何かお感じになりませんか?

 確かに、そうやって詰めていくと、中国のやっていることは少しも合理的とは思われないのですが、但し、このように基準値が上下に振れることが日常茶飯事のようになれば、人民元のレートが今までよりも自由に形成されているかの印象を対外的に与えることができる、と。

 つまり、中国はそうして人民元のイメージを変えたがっているということなのです。

 では、何故そのようなことをするのか?

 それは、そうすることによって人民元をSDRの構成通貨として採用させようとする魂胆なのです。

 でも、ここで疑問が湧くかもしれません。

 そのような茶番劇にIMFなどは騙されようとしているのか、と。

 違うのです。IMFなどの作戦は騙された振りをして中国を追い込む作戦なのではないかと想像します。つまり、先ず、今までのほぼドルの価値にペッグされていたような状態から人民元を切り離すことに全力を傾注する、と。そして、しかる後に、人民元とドルの交換レートが自由に動くようにするようにさせる、と。

 但し、中国としては、レートが大きく変動することについては、人民元の価値がドルに対し下がることは容易に認めても、逆にドルに対し上がることはなかなか認められない筈。

 そして、IMFとしても、そのことは承知の筈。そうなのです、IMFは長期作戦の構えなのです。最初は中国の気持ちを斟酌して人民元の価値を切り下げることを認める、と。しかし、その後は、徐々に切り上げの実績を求めていく、と。

 だから、中国も、本日少しだけ人民元の価値を切り上げたのです。

 中国は、今回の改革は人民元の価値を切り下げることが目的ではないと主張しています。あくまでも市場実勢に沿ったものにするのが目的だ、と。但し、現状では中国の景気が芳しくないために人民元の価値が下がっているだけだ、と。

 では、景気が良くなったら人民元の価値は上昇するのか?

 問題はそこなのです。そして、IMFとしては、中国の景気回復を待って、今度は大幅な切り上げを求めることになるでしょう。そして、そのような過程を少しずつ経て、人民元を他の主要通貨と同じルールに従わせようとしているのではないのでしょうか?

 もちろん、そのような作戦に中国が乗るかどうかは分かりません。幾ら景気がよくなっても人民元の価値を切り上げることには消極的であり続けるかもしれません。

 しかし、IMFとしては、そのようなリスクも敢えて承知の上で、とにかくこれまでのやり方を少しでも改めさせようとしているのだと想像されるのです。

 要するに、自分たちと同じプレーグランドに中国を引きずり出すことがIMFの専務理事としての最大の任務だと認識しているということなのではないでしょうか。

 米国の関係者が割と平静を保っていることを見れば、何かそのような感じがしてくるのです。

 AIIBへの先進国側の加盟を巡る動きと似たようなものである可能性があると言ってもいいでしょう。

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