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進撃のサントリー、「家飲み」にフォーカスで過去最高シェア達成 - 4強激突!ビールウォーズ2015

唐仁原俊博=文・構成 村上庄吾=撮影

市場の縮小と反比例して、サントリーは過去最高シェア。他社の苦境もどこ吹く風、伸び続ける秘密に迫った!

驚異的に売れる! 金麦の秘密

「金麦」が絶好調である。14年には前年比で109%、300万ケースの販売数増という脅威の伸びを記録した。これにより、縮小する市場で、過去最高のシェアを更新した。

07年に金麦を発売後、12年に「金麦〈糖質70%オフ〉」を、14年に「金麦クリアラベル」を発売した。そのため、金麦というブランドで「機能系」「止渇系」の商品も出揃い、盤石な布陣となったのだ。

サントリービール水谷徹社長は金麦の躍進の背景には「ザ・プレミアム・モルツ」の存在があると語る。それ以前のサントリービールは、中身の調査では好評でも、パッケージに入れた状態ではガタッと評価が下がっていた。

「サントリーはウイスキーの会社、ビールは本業でないというイメージがお客様の中にあったのではないかと考えています。ザ・プレミアム・モルツの誕生と成功により、サントリーもおいしいビールを造れるメーカーだと認識されたことで、金麦を受け入れてもらえる素地が形成されたのです」

金麦はまた、家飲みにフォーカスした商品だ。経済事情を反映し、家飲みする消費者が増える中で生まれ育った商品だが、我慢して飲むというようなイメージを持ってほしくない。そのために広告も工夫している。従来のビール以上に、家庭や夫婦を取り上げ、家での食事のおともに、という訴えかけを中心に据えている。

店舗での売り場展開も、テレビCMのイメージをそのまま売り場に持っていくように「食卓提案」型だ。つまり、金麦単体ではなく、あるときはCMに登場したぶりしゃぶ、あるときは、サントリー・大手流通・食品メーカーの3者でコラボするなど、食品との組み合わせで売り場を盛り上げる。食卓提案に関する全国を対象にした大型キャンペーンを年に2、3回行うが、それだけではない。地域密着型でエリアごとに独立した企画も同程度行っている。広域営業本部の林正人部長はこう語る。

「大枠については私たち本部で決めますが、クロージングするのは地域や店舗の担当者。地元の食について一番詳しいのは、やはり地域の担当です。サントリーは全国を8エリアに分けていますが、細部を決めるのはそれぞれのエリアなので、地元を盛り上げたい、地域の支持を得たいという気持ちで各エリアが競い合っています。またエリアごとのCMも展開しています。

ファンになっていただくためには、その地域に寄り添う必要があると思います。そのため全国一律ではない、現場ごとに自分たちで考える風土をサントリーは強く持っています」

プレモルのさらに上スーパープレミアム

もうひとつの看板商品、ザ・プレミアム・モルツはどうか。

ハレの日のビールとして定着したザ・プレミアム・モルツは、金麦とは価格帯も飲用シーンも異なる。違うカテゴリーの商品が2つあることで、「現場の営業も違う切り口で提案しやすく、お取引先様からもどんどん提案を持ってきてほしいと言っていただけます」(林氏)。

これまで「5大催事」とされてきた、ゴールデンウィーク、父の日、お盆、クリスマス、年末に加え、母の日、シルバーウィーク、ハロウィンといった新しいハレの日を定着させようとしている。

金麦、ザ・プレミアム・モルツの二枚看板に引き続き、サントリーの野心が垣間見えるのが、今年3月に発売した「マスターズドリーム」だ。ザ・プレミアム・モルツよりも高額な「スーパープレミアム」という位置づけだが、3~6月累計で販売数は27万ケースとなり、年間発売計画を0.6倍に上方修正した。

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(左)サントリービール商品開発研究部開発主任の丸橋太一氏。マスターズドリームのプロジェクト開始から携わる。(右)サントリー酒類広域営業本部部長の林正人氏。

商品開発研究部が念頭に置いたのは、チェコでのビールの飲まれ方だ。ビール片手に人が集まり、ずっとビールを飲みながら、幸せそうにしている。丸橋太一開発主任は、飲み飽きない味が必要だと考えた。希少なダイヤモンド麦芽という種に目をつけるが、扱いが難しく、試行錯誤を重ねた。古来からの銅釜を試していたときに、銅とふれ合うことで、よりよい味わいを引き出すことに成功したため、専用の装置を開発した。

プロジェクトのスタートは06年。気付けば10年近くが経過し、設備投資額は10億円。

「今回の開発はマーケティングから切り離して、醸造担当がとにかく夢を追ったというかたちでした。よくここまでやらせてもらえたなというのが率直な感想です」(丸橋氏)

サントリーの目標とするシェアは20年までに20%。スーパープレミアム市場を見事開拓し、さらなる飛躍の一助となるか。

特許戦争[コラム:ビールウォーズ最前線]

今年1月、サントリーホールディングスがアサヒビールのノンアルコールビール「ドライゼロ」を特許権侵害で提訴した。

サントリーは、エキス分、pH、糖質量の組み合わせを特許として申請し、13年に認められ、そこから水面下での話し合いが続くも平行線をたどり今に至る。

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サントリービール社長
水谷 徹
(みずたに・てつ)
1983年上智大学法学部卒業後、サントリー入社。ウイスキー部長、スピリッツ事業部長などを経て2013年サントリー酒類常務取締役ビール事業部長。14年10月から現職。


「裁判を通じて、特許庁に認められた当該特許権を守るため、当社の正当性を主張していくことで、当社の知的財産を守っていく」とサントリー広報部は語る。

対するアサヒは、サントリーの特許内容は既存の製品から容易に作り出せるものであると反論している。

「そのために特許権の侵害には当たらないと考えています。必要に応じて、特許庁に対し、特許無効審判を請求するつもりもあります」(アサヒビール・小路社長)

ノンアルビール市場は、ビール系飲料市場の20分の1以下の規模だが、ビール類では数少ない成長市場であり、酒税がかからないため利幅が大きいのも魅力的だ。

アサヒはもともとノンアルビール市場では最後発でシェア2%と苦戦していたが、12年発売のドライゼロで猛追。14年は前年比16.7%増で販売数630万ケースと伸長、シェアは2位だ。

対するサントリーのオールフリーは10年に発売し、現在まで4年連続で販売数トップ。昨年は前年比4%増で720万ケースを販売した。

特許戦争から目が離せない。

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