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なぜ、佐藤可士和さんの事務所は少人数で次々と世界にインパクトをもたらせるのか?──クリエイティブスタジオ「SAMURAI」のチーム作り

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ユニクロやセブン-イレブンなど数多くの企業のブランディング、トータルプロデュースを手がけるクリエイティブディレクター、佐藤可士和さん。多岐に渡るその作品群は、鮮烈かつ明快な印象をもたらしながらも、私たちの暮らしのなかに深く根付いています。また、独自の哲学が投影された著書『佐藤可士和の超整理術』などもロングセラーとなり、クリエイターのみならずビジネスパーソンからも支持を集めています。

ただ、自身が代表取締役を務めるクリエイティブスタジオ「SAMURAI」の経営者である一面は、意外にあまり知られていません。50歳を迎えた可士和さんの興味はチームマネジメントのほうにも向かっているようです。
そこで今回は、「チームリーダーとしての佐藤可士和」をテーマに、可士和さんとSAMURAIのアートディレクター・石川耕さん、糟谷義人さんの3名にお話を伺いました。


左から石川耕さん、佐藤可士和さん、糟谷義人さん

SAMURAIが求める「コミュニケーションセンス」。デザイン力とは”感性の解像度”

佐藤可士和さん(以下、可士和):SAMURAIは少人数なので、役割分担がハッキリしていない人はいません。僕は代表であり、それぞれのプロジェクトの全体を統括するクリエイティブディレクター。妻の悦子がマネージャー。このふたりでSAMURAIの経営をしています。スタッフのメンバー構成は、アートディレクター部門にチーフである石川、そして糟谷をはじめ5名。悦子率いるマネジメント部門には2名いて、完全にマネジメント専任です。そしてインターンが2名で、以上11名ですね。

SAMURAI内ではどういう手順で仕事を進めていくのでしょうか。

可士和:新しい仕事が始まると、まず担当のアートディレクターを決めます。それが僕と悦子の最初の重要な役割。みんなのキャパシティや作業量を考慮しながら、仕事の種類が偏らないようにバランスを考えます。ファッションも担当しつつ車や流通、教育関係も……一人が同じような仕事ばかりにならないように調整していますね。

どちらかというと、ファッションならこの人、ITならこの人、となる組織が多いように思うのですが。

可士和:守秘義務の観点からも、それはよくないですね。また本人にとってもスキルが偏りますし、経験値も狭くなってしまう。なるべく多様な仕事を経験して多くの視点を持つことが一番重要だと考えています。例えばビューティーでいえば石川はリサージというカネボウ化粧品のブランドを、糟谷はビューティーエクスペリエンスというヘアケアメーカーを担当していますが、どちらも石川がやるとなると、美容業界に関する情報が彼に偏ってしまいます。仕事量が偏らないというのも前提ですから、誰々ばかりが忙しい……というのではなく、あくまでスタッフのバランスを見て、誰が担当するのかということをかなり入念に考えるんですよ。

向き不向きというのはありません。全部新しい仕事だから。何かに特化しているわけではないので、なんでも出来るというか(笑)。そして担当が決まると、僕と石川、僕と糟谷、のように2人対制で、より大きな仕事のときは、石川と糟谷の下にもうひとりつけて、複数名でひとつのクライアントを受け持つ場合もあります。それに加えて広告代理店が介在したり、建築家やコピーライターなど外部パートナーとチームを組んだり、といった感じです。

SAMURAIで仕事をしたい、と思う方は非常に多いと思うのですが、どういった形でスタッフを採用しているのでしょうか。

可士和:基本的には紹介です。石川は僕が博報堂時代に一緒に仕事をしたデザイン事務所に在籍していて、糟谷は石川の元同僚でした。もう1名は僕が講師をしていたデザイン専門学校の先生からの推薦、あとの2名はインターンから社員になりました。ただ、毎年インターンを2、3名ずつ採用しているなかで、この10年ぐらいの間でそのうちの2名ということだから、非常に優秀だったということです。

人を見るうえで、どういった点を重要視されているのでしょうか。

可士和:デザインのスキルというより、コミュニケーションセンスを考えます。そう言うと一元的に思われてしまうかもしれないけど、たとえ優秀でもSAMURAIに合わない人もいる。それは仕方がない。当初は僕と悦子でインターンも選んでたけど、今は石川と糟谷を中心にスタッフにまかせていて、彼らが選んでいます。

糟谷義人さん(以下、糟谷):インターン研修として毎年だいたい20名くらいに会って、最低1日は、オフィスにいてもらうようにするんですよ。そのときにやはり、いろいろなことに気づいてくれるかどうかですね。あとはもちろん、作品も見ます。

石川耕さん(以下、石川):作品の中身はもちろんですが、その体裁やどれだけ自分のことを良く見せようと努力しているかという点もしっかり見ています。プレゼンテーションができているかどうかですね。

可士和:ある意味、ポートフォリオを僕らの前に出しただけでわかるんですよ。傷だらけでボロボロのポートフォリオを逆さまに出すような人だと、はい、もういいですと(笑)。自分の作品をSAMURAI用にピックアップして編集して、きちんと体裁整えて作っているようなものを用意する人であれば、それはかなり「できる」人ですよね。

それが「コミュニケーションセンス」ってことですね。

可士和:そうです。結局デザイン力ってそういうことなんですよ。要するに「感性の解像度」が高いかどうかということ。デザインソフトの操作方法なんて、使っていればいつかは覚えられる。それよりも「見えて」いるか、感じられるかどうか。その解像度が低い人は、SAMURAIでは厳しいと思う。その解像度は僕の基準に合わせているから、ある意味高い水準を要求しているかもしれません。

長期にわたる信頼関係のコツとは?

クライアントには様々な分野のそうそうたる企業が名を連ねていますが、どのような関わり方が多いのでしょうか。

可士和:ユニクロとも10年、セブン-イレブンは6年、キリンは前職時代からなので約20年…と、長く携わっているところが多いですね。もともとSAMURAIの成り立ちとして、「デザインやクリエイティブの力で社会に新しい視点を提示していく」ということをミッションとしています。

各社ともに、かなり長い期間ですね。

可士和:会社全体のブランディングを依頼されているからという面もあると思います。商品やブランドが入れかわったり、リニューアルしても、企業としての活動はずっと続くもの。ほとんどのプロジェクトは経営者や役員などから直接依頼され、現状の課題や目指すべき方向性を共有しながら結果を出してきています。

関係が長くなっていくと、現場のチームが変わっていくことも多いんですよ。SAMURAI側は変わらないんですが、クライアントの担当者が変わったり、代理店が入ってきたり抜けたり、案件もウェブサイトのリニューアルから本社の建て替えなど規模感もさまざま。そこを全て見通しつつ、SAMURAIのスタッフが現場のグリップを握るという感じですね。

プロジェクトを進めていくうえで、クライアントによってカルチャーも全然違いますし、仕事の進め方もさまざまですよね。そのなかで意識されていることはありますか?

石川:会社のロゴを変えるなど大規模なプロジェクトになると特にそうなのですが、まだ新しい、誰も見たことのないようなものを世の中に提示するので、担当者の方にとってもはじめての経験だったりするんです。だから実際にどうなるのか想像するのがなかなか難しい。ですので、クライアントのみなさまが共感できるような言葉で伝えることを心がけていますね。

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