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次の危機が近づきつつある-5 成長分野の喪失

前回は日本だけでなくアメリカでも設備投資の伸びが趨勢として鈍化していることを紹介した。そしてそのことがIT革命からの果実が少なくなった今、世界的な低い生産性の伸び=低成長の一因であると結論付けた。

まあ、逆に考えれば経済が力強く成長する見通しが非常に小さいので企業経営者は設備投資に慎重であるともいえるだろう。また、豊かに便利になりすぎた先進国ではリスクを負って人を蹴落としてでももっと金を稼いでやろうというようなリスクテイカーが減っているともいえるかもしれない。

では新興国の状況はどうなのだろうか?どういってもここ10年ほどの世界の成長をけん引してきたのはようやく勢いよく発展し始めた新興国である。あるいはその新興国の需要をアテにした資源関連分野の成長であろう。

たとえば、上述の設備投資に関してみてみよう。


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(S&P より)

灰色が先進国。緑が新興国だが、新興国の伸びが圧倒的に先進国を上回ってきたのがわかる。まあ、普通に考えれば単純に設備投資をし労働者のレベルもそれについてくるならば新興国はお金を投じるだけでまだまだ伸びる余地があるのは誰でもわかることだ。(労働者の教育水準やスキル、政府の政策の不透明性などそれほど容易でないのはもちろん事実だが)

だから、多くの先進国の企業も新興国に設備投資を行ってきた。

上のグラフは少し古いのだが、趨勢としては変わっていない。だが、よく見ると2011年ごろから新興国における設備投資が鈍化してきているのがわかる。いうまでもなく先進国に設備投資の余地は少ない。が、同様の現象が新興国にも早く見られ始めているのだ。これは世界経済にとって非常にネガティブであることは言うまでもない。そして、ここにきて一段と市場は新興国経済に懸念を持ち始めている。ブラジルやロシアは景気後退に陥っているし中国も経済指標は操作されている可能性が高いが本当のところはかなり怪しい。新興国の鈍化がさらい厳しくなっていることが最近の原油や銅などのコモデティ価格の激しい下落につながっていることは誰にでもわかることだろう。

もう一つグラフを紹介したい。上のものと同じだが…。


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水色がエネルギー分野だが世界の設備投資に占める割合は2003年ごろには20%程度であったものが2013年には30%に膨張しているのである。理由は簡単で新興国における旺盛な資源需要を見込んでのことだ。だが現実はどうか?上述のように新興国の設備投資は減速し経済自体も低迷が激しくなってきているのだ。

加えて、アメリカではシェール革命 がもてはやされたがこちらも昨年来のオイル価格の急落を受けて多くのシェールオイル生産業者が不採算の状態に追い込まれているのだ。アメリカでもこの分野の設備投資は上の例にもれずかなりの割合を占めていたので米国の設備投資減速の一つの大きな要因になっている。

もちろん、カナダやオーストラリアといった先進国の資源国も同様に悪影響を受けている。

新興国と資源関連という過去数年~10年間世界の設備投資をひっぱてきた分野が大きく減速し始めているのである。そしてそれは新興国経済の減速の原因でもあり結果でもある。

そう考えると今後の世界経済の伸びがさらに鈍化していくことは誰でもわかることだろう。成長ドライバーが力を失い、生産性向上のカギである設備投資はさらに鈍化する。どうやって世界経済がよくなるというのだろうか?

それだけで済むなら我々はまだ幸せだと僕は思う。新興国も資源関連ビジネスも日本の商社よろしく過剰な投資が行われてきたことは誰の目にも明らかだ。ある報道によるとアメリカのシェール企業の上位60社は全く利益を上げていないという。シェール革命は嘘ではないと思うがIT革命同様に膨張とバブルを引き起こした可能性は高いのではないだろうか?競争力のない企業の淘汰が今後始まる可能性は高いだろう。新興国も資源関連ビジネスも次の危機の引き金に十分なりうる。いや最近の新興国の一段の低迷やコモデティ価格の暴落を見るにすでに危機は始まっているとしか僕には思えない。

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