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がんと遺伝子 加齢はある程度許容しなければ

夏休みのため本日2本目の記事!

すこし高齢者の方には残念な記事になるかもしれません。

がんは遺伝子の異常で発生します。細胞は分裂する際、どうしても確率論で遺伝子に異常が起きます。そのおきた遺伝子異常が蓄積されて、最終的にがん、悪性新生物を作り上げます。

本来その遺伝子異常でできたがん細胞は、正常ではないために遺伝子上の制御(がん抑制遺伝子p53等)、免疫的な制御(俗にいう腫瘍免疫力)などで排除されます。細胞の種類毎等でその制御は異なり、結果そのがんが生じやすい好発年齢、好発地域、性別等に違いが出てきます。

昔の白血病なんて、若年者がかかる病気でした。このような若い人を助けたいと思ったことが血液内科を志望した25年前のひとつの理由でした。しかし今は、ピークは高齢者に移っています。全ての癌種がそうなんですが、80、90の方の血液疾患は増加しています。(多分今後の統計でも明らかになるでしょう)

この理由にはさまざまな説明がされています。(一部は私の意見)

1 長生きすれば細胞の分裂回数が増加する!結果遺伝子異常が蓄積される確率が増加するため、長生きすればするほどがんの発症は増える! MDSなんかまさにそれです。また病気が明らかでなくても高齢者に遺伝子異常が存在することがNEJに指摘されました。

2 心筋梗塞、脳梗塞、脳出血等の血管性の病気がかなり延命できるようになった。血栓溶解療法、ステントなんてすごいです。結果長生きできる!そして1

3 透析技術が進歩し、腎不全患者が長期生存できるようになった。その他重篤な病態を回復させる血液浄化療法の進歩も恐ろしいものがあります。昔は絶対助からなかった患者が救えることがあります。結果長生きできる!そして1

4 抗生剤、抗真菌剤を含む感染症(エイズ、ウイルス肝炎含む)に対する治療が進歩し、治癒を含めてコントロールできるようになった。薬の値段は高いものが多いですが、結果長生きできる!そして1

5 がん以外の疾患に対して悪化しない予防法が確立されてきた(食事、運動、スタチン、減塩等)結果長生きできる!そして1

6 それでも年をとると、免疫の低下を含めていろいろなものにがたがくる。そして本来排除されるいろいろながんという疾患が出てきてしまう。

7 少子化!若い人が少ない!だから相対的に目立たない!

こういう様々な理由で高齢者のがんが増えています。

大部分の高齢者のみなさん見た目は健康です。それこそ100歳以上のかたは、同年代の方に比べて免疫力は高く、動脈硬化が少なく、血管性の病気を起こさないため、死ぬ原因は老衰か自殺か事故かがんしかありません。ただ、様々な臓器の耐用年数は保証期間は過ぎていますので、いつだめになるのかは外からは不明なのです。

ついこの間も、サウナで突然死された80台の俳優さん、家の中で熱中症でお亡くなりになった3姉妹(80後半から90!) ほんとうに見た目元気でも、環境の変化に耐える力が弱いためぽっくり逝きます。

そして一番大事な点。がん患者の予後分析をすると、悪化因子、つまり治療効果があまり出ない要素に必ず年齢があがります。つまり年をとったがんは若い人のがんと比べて治りが悪いということです。

血液のがんに隠れて、2つ目、3つ目のがんをお持ちの患者さんもいらっしゃいます。本当に治療の計画が大変です。手術を先にしたり、抗がん剤を先にしたりと一所懸命調べておこないます。基本血液疾患のスピードが他のがんより早いため、血液内科が治療計画をたてています。(化学療法後、放射線療法後の手術などアジュバント治療はそのがんひとつに対するもので、他のがんでは本来ありません)

この年齢が負の因子の例外としてこの間書いた免疫療法(本当のがん免疫療法の進歩)の効果判定に高齢者の方が効果が出やすいというのがありました。もしかすると高齢者のがんは免疫で治せる?

未来はわかりません。でも私は患者さん達に説明しながら、前を向いていくか、それともここで立ち止まるかをはっきりと説明しています。ある意味とても辛い内容です。それでもその内容を聞いて前に向かっていくような人でない限り、高齢者は治療、入院に伴う合併症、後遺症に耐えれないでしょう。家族も同様です。病院まかせにしようなんて、不可能です。

希望は捨てません。でも現状を把握すること、平均余命をすぎて病気を発症したら、あとはもうけもんと思いながら前向きに治療を受けていくことをおすすめしています。そういうポジティブに考えることがひとつがんのコントロールに好意的な要素になります。

うまくいけばうまくいきます。なるようにしかなりません。医師としていいかげんに感じられる言葉かもしれませんが、医療に100%はないため、最善を尽くすことしかできません。この治療をおこなった際60%が治癒します。言い換えれば40%は助かりません。そして10%は治療で早死にする可能性もあります。また病気は治っても寝たきりになる可能性もあります。人によって使い分けながら説明しています。結果は神のみぞ知るです!

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