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ニコ動の全く新しい一手

ついにニコニコ動画で新しいプロジェクトが始動した。
7月30日の日韓関係を描いたBBCドキュメンタリー制作経験の豊富な受賞歴もある英国人スタッフによる「タイズ・ザット・バインド~ジャパン&コリア」(ドワンゴ企画・著作、BBCワールドワイド配給、英国フレークウエイ・プロダクションズ制作、60分×2本、 世界配給予定)から、「ニコニコ・ドキュメンタリー」プロジェクトが開始された。8月4日には韓国・朴大統領の妹(パク・クンリョン)さんに単独インタビューを行った。8月15日の終戦記念日の午前零時からは中国の李監督の「靖国」を放映する。公開当時、週刊新潮により「反日映画」とされ、劇場に右翼の街宣車が出る中、上映中止に追い込まれた作品である。

このプロジェクトでは他にも「反日作品の烙印」を押されて公開できなかったドキュメンタリー・映画も公開する。「反日作品」か否かはご覧のユーザーの判断に任せることにする。まず我々は「フタをしないこと・公開することが何より大事。そしてそれについて論議する場を持つことが大事。」と考えた。

また昨今、益々その厳しさがレベルアップした「コンプライアンス上の事情」から劇場や地上波やBS・CS・ケーブルで上映・放映されない・出来ない映像・ドキュメントも貪欲に公開してゆく。今後ニコニコユーザーが食いついてくるか否かは、我々の作品の企画の選び方・出資と配給の仕方・公開宣伝の仕方や、世界に山ほどあると想像される問題作・衝撃作の製作者にどうやってコンタクトするかに依るわけである。

ただ、我々が半年以上調べただけでもセンセーショナルな米・アカデミー長編ドキュメンタリー賞作品の未公開モノを始め、世界各地のドキュメンタリー映画祭で話題になった作品が山ほどあったり、フランスのある会社には世界のアンタッチャブルでタブーまみれの闇の世界の歴史を描いた作品群があったり、今後は内外のドキュメンタリー映画・テレビの製作者とも接触しつつ、日本と世界のタブー・忌憚・驚異を放送する計画である。またそれをテーマにした討論会も放映する。

マイケル・ムアー監督の「ボーリング・フォー・コロンバイン」(米コロンバイン高校での銃乱射事件と銃規制問題)に始まるドキュメンタリー映画の勃興は最近の映像技術機器の驚異的発達によって小型カメラでも劇場上映が可能なクオリティーの撮影出来ることが可能になり、世界のドキュメンタリストに表現の場を与えたことが大きい。

ニコニコはこれにより、サブカルチャー路線から舵を切ったと思う方もいらっしゃると思うが、引き続きサブカルチャー路線も強力に推進してゆくし、ニコニコのラインナップにドキュメンタリーという知的・ジャーナリズム路線が新たに加わったと考えていただきたい。インターネット動画サービスとしてディズニーランドの様な娯楽の殿堂から大英博物館のようなミュージアムの様な品ぞろえを持って多種多様なユーザーのご要望にお応えしてゆこうと言う訳である。

今、映像を含むあらゆるメディア・ジャーナリズム状況は曲がり角に来ていると思う。既成の描き方やメディア側の内部事情・論理だけでは通用しなくなって来た。これはインターネットの出現が一因になっている。大メディアを信じるか?ネットの玉石混合の情報を信じるか?というわけでユーザーの「本当の事を知りたい」という欲求は今、頂点に達していると思う。我々はそれに答えるべく内外のドキュメンタリスト・ジャーナリスト・製作者と連携を取りつつ、ユーザーの皆さまのご要望にお応えしたい。巨大メディアが厳然と存在する中、我々ドワンゴがどこまで出来るかわからないが、海外・国内ドラマで勝負するNetflixやHuLuの出現で変容しつつある日本のメディア環境のなかで我々は「次世代のジャーナリズム・21世紀のドキュメンタリーを指向する」という舵を切った訳である。

女優のアンジェリーナ・ジョリーが監督した「アンブロークン」は週刊文春に「反日映画」の烙印を押され配給の東宝東和は危機回避のため公開を中止した。米国でこの映画を観た映画評論家の町山智浩氏のラジオでの発言によればこの映画は「戦時中日本兵に酷い虐待された米国人捕虜が戦後、苦悩の末、日本兵を許す実話であり、決して反日映画ではない。」と語った。映画・映像を見ていないで烙印を押し封殺する。ネット発であったり週刊誌発でありスポーツ新聞発であったり、この事象は今の日本が抱える大変大きな「悪意に満ちたレッテル張り現象」を表出してしまった。大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」でさえ一部では反日映画と呼ばれていると聞くと呆然としてくる。

これを一つの教訓とし我々も「本当のことを知っていただく」ために「反日作品」と断定されたり何らかの原因で公開不能になった作品を何本か放映するつもりである。中には本当に悪意を持って「反日的」に日本を描いたものもあるかもしれない。しかしそれはユーザーが見れば瞬時に自己判断できると考えた。またそういう作品がある、ということを知るだけでもユーザーの世界が広がるとも考えた。

しかし、一つ我々は複雑な問題も抱えることになる。反日か否か判別出来ない作品が存在するということである。(あたりまえのことだが)ある種の『戦争もの』にそれは存在する。戦争中の軍事行動や虐殺というのは、比較的記録が残っているものと、そうでないものがある。軍人同士の地上戦、海戦とか、強制収容所での虐殺とかはある程度詳細な記録が残っている。

しかし、今度ニコニコドキュメンタリーで扱う「南京事件」はまさに真偽の確かめようがない、多種多様な証言・画像・データの山である。その事件の詳細のあいまいさ故か「南京事件は捏造だ。」という主張から「南京事件で30万人の一般市民・兵士が犠牲になった。」という主張まである。「岩波新書」と「中公新書」でも全く違う。権威ある歴史教科書も犠牲者の数が全部違う。「多数の犠牲者~数十万人まで」。資料・証言によって殺害・処刑・略奪・強姦・放火の詳細も違う。作家のあの半藤一利さんでさえ「南京で日本兵が起こした悲惨な事件があったのは確かで、驚くほど多くの人が犠牲になった。」(『昭和史』より抜粋)と事件については実際にあったことを認めているが、慎重に犠牲者の数は限定していない。

今度ニコニコで扱う映画「南京!南京!」と小説「レイプ・オブ・ナンキン」は、映像と活字というリアルな形で表現されているため、「まるで目の前で起こった史実の様に信じてしまう」効果を生み出す。映像と印刷された活字はそれほど強烈な効果を生む。たがら、今でも国際政治の道具にも使われることもある。ちなみに「レイプ・オブ・ナンキン」は瞬く間に世界的ベストセラー作品となった。「南京事件」は世界的には第二次大戦の日本に関する記憶のなかで「原爆投下」や「真珠湾攻撃」に比べればはるかに無名な事件だったが、この本が世界中で売れた事によって一時、戦中の日本の残虐行為に対して世界が騒然となった。この小説は綿密な調査に基づいていると称しており凄まじい残酷描写が連続して描かれるのが特徴だ。その後、著者の中国系アメリカ人アイリス・チャンは世界中の「南京事件」専門家から虚偽の描写があると非難される中、自殺してしまう。ちなみに中国政府はチャンを今でも擁護している。

ニコニコでは解説を加えて放送するが、「南京事件」は第二次大戦で最も正確な正体が掴みにくい複雑怪奇な事件であった。普通の戦闘行為と違い。一般市民と国民党軍の残党が犠牲者だったのも大きい。だから解釈が難しいが、映画として実に見事に出来ている力作「南京!南京!」を「シンドラーのリスト」「硫黄島からの手紙」「プライベートライアン」等と比較して見てもらうと良いと思う。「反日プロパガンダ映画」とするか「歴史映画」とするかは、それはユーザーの見方次第である。ずいぶん無責任な放り出し方に見えるが、こういう戦争表現があることを知ること、何故表現者はこういう描き方をしたかを考えることに意義があると思う。なおこの映画は諸々の事情から日本では1日だけしか上映されていない。

「ニコニコドキュメンタリー」シリーズはまだ始まったばかりである。暗中模索のうちにニコニコが次世代ドキュメンタリーに進出するのは、「今のジャーナリズムに一石を投じるため」であり「新たな物語」を語るためである。「本当の事を知りたい。」・・・そして「我々にはもっと知らない世界がある。それを見てみたい。」・・・そのご要望にお応えしたい。どうぞこの志の高すぎる(!)プロジェクトに皆さまご支援・ご賛同下さいませ。

関連リンク

ニコニコドキュメンタリー
「ニコニコドキュメンタリー」発表会
川上量生会長"客観的な日韓問題の姿を"〜ドワンゴがニコ生でオリジナルドキュメンタリー番組を制作

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