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「映画を観て感じたことを、言葉にしてほしい」〜松坂桃李さんインタビュー

現在公開中の『日本のいちばん長い日』(監督・原田眞人)では、戦争終結へ向け苦悩と模索を続ける昭和天皇(演・本木雅弘)、鈴木貫太郎総理大臣(演・山崎努)阿南惟幾陸軍大臣(演・役所広司)ら、リーダーの姿が描かれる。
その一方で、本土決戦による徹底抗戦を訴え、クーデターを企て玉音放送を阻止すべく決起する陸軍中枢の青年将校たちの存在も見逃せない。このクーデター計画で主導的役割を果たすことになる、畑中健二少佐を演じた松坂桃李さんに話を聞いた。【大谷広太(編集部)、撮影:野原誠治】

ー昨年は大河ドラマで歴史上の人物を演じられましたが、今回のように写真が残っているような方を演じるというのは、これまでのお仕事とは違いましたか。

畑中さんは、僕の祖父か曽祖父、という世代の方ですよね。ですから、関わったことのある方や親族の方が観た時にどう思うだろうかと考えると、プレッシャーもありました。人生の先輩方と比べれば、当時のことについて知識がほとんど無かったですし、学校の授業で教わったことくらいしか知らない自分が関わることができるのか、不安や怖さもありました。でも、畑中という人物を通して、当時のことについて知るきっかけを与えてもらえました。この作品で描かれている人物たちが、苦悩し、決断してくれたからこそ、今の日常があると思います。過去を見つめることで現在を考えることができるし、現在を考えることで未来にもつなげられる、ということを実感しました。

ー畑中少佐やその周りの青年将校達については、観ていて"なぜこの期に及んでこんな愚かで無謀なことをするんだろう"、と思ってしまう人がほとんどではないかと思います。ただ彼らは彼らなりに国のことや職務のことを真剣に考えて行動しており、善悪だけでは単純に捉えられませんね。

やはりその純粋さゆえに変わることができなかったんですね。彼らの根本にある純粋さというものは、最初から最後まで全く変わってないんですよね。彼らが育った時代背景のせいでもあったと思います。物事の選択肢も少なかったと思いますし、自分の考えを簡単に行動に移したり、発信するのも難しかった時代ですから。

上の人たちの考えは終戦に向け変わっていきます。でも、下の者達はすぐに考えを変えることができない。作品の後半になるにつれ、それまでは皆が間違っていないと信じていた"正義"が、だんだんと”間違った正義"になっていく。それが演じていてとても悲しいと思いました。

阿南さんや上の人たちの言葉を信じてここまでやってきたのに…という思いもあったと思いますし。ですから、起こる事態に対して、自分の中から沸き起こる感情をブレずにピックアップして表に出していくというのが大事だと思い演じました。信じてやまないものがある純粋さゆえに出てくる感情ですね。

ーポツダム宣言の受諾を受け入れた阿南大臣に、徹底抗戦を求め直訴するシーンは、かなり迫力がありました。

そうですね。やっぱり言葉では言い表しづらい感情が出てきました。

ー当時のことについて知識をお持ちの方や年配の方、1967年の岡本喜八監督版を知る方々が、どのように描くのか?ということで観に行かれることも多いと思います。一方で原田監督は、10代の方にもぜひ見てもらいたいとおっしゃっています。松坂さんがご出演されていることがきっかけで劇場に足を運ぶ若い方もいらっしゃると思います。

今、世の中が非常に不安定になってきていますし、今年は戦後70年ということで、過去のことについて知ろうという意識も高まっていると思うんです。70年前にはこんなことがあった。でもそれは決して遠い過去の出来事じゃなくて、同じようなことが1年後に起こるかもしれないし、もしかしたら明日起こるかもしれない。そうなった時にどうすればいいのかを考えるきっかけにもなると思います。

この作品には、歴史の授業で先生が教えてくれることや教科書に載っている以外のこと、でも確かに存在したことがしっかりと描かれています。それを見てどう受け止めるのかは、人それぞれだと思います。でも、思ったことを言葉にするのは、今の時代だから出来ることです。見た人同士だけでなく、友達、両親、祖父・祖母に、"今日、『日本のいちばん長い日』っていう映画を見たんだけどさ"って、話をしてみてほしいと思います。 そして、映画を見た後も、70年前に起きたことに触れ続けていってほしいなと思います。

ー今後も近現代を舞台にした作品に携わっていきたいですか。

やるべきだ、と思いました。こういう仕事だからこそ、当時生きていた人たちの未来を思う気持ちを形にして発信することができます。映像作品は残っていきますから、今を生きる人たちだけでなく、未来の人たちにも伝えていくことができます。役者として、もっともっと過去からのバトンを受け取って、未来へ手渡す仕事をしていきたいと思っています。

プロフィール

(まつざか・とおり)1988年神奈川県生まれ。14年の大河ドラマ『軍師官兵衛』では、主人公・黒田官兵衛の嫡男・黒田長政を演じる。現在、連続テレビドラマ『サイレーン』(主演、フジテレビ系・10月〜)のほか、出演した映画『ピース オブ ケイク』(9月)、『図書館戦争 THE LAST MISSION』(10月)、『劇場版 MOZU』(11月)の公開も控える。

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