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安保法制廃案は中国対抗策とセットで

安保法制に関する議論が続いているが、落としどころが全く見えない。

このまま通すにしても、もともと複雑怪奇な法案がしどろもどろの国会答弁でつぎはぎだらけになっており、最初の構想とはずいぶん違ったモノになっている。

例えば、安倍総理は「海外の領土、領空、領海に戦闘目的とした派兵はしない。唯一の例外は公海も迂回路もないホルムズ海峡での機雷掃海だ。」と答弁しているが、もともと公明党の北側と自民党の高村らの事前協議では「一般的に海外派兵は可能」だが、厳しい制約と政治判断で「ホルムズ海峡での機雷除去のような事例しか想定できない」という条文解釈だった。

つまり、事前協議の段階では、安保法制の第一要件は「存立危機事態への対応」であって、「必要最低限にとどめる」は第三要件であった(「選択」7月号より)が、国会での答弁に優先順位が逆転し、なんだかわけのわからないものになっている。

一方、戦闘地域に出撃する他国軍への給油という従来より「武力行使と一体化する」と解釈されていた事例は事前協議が上手くいかないまま、整理できないまま国会審議に突っ込んでいき、核兵器の運搬だとか想定外の事例まで認めるような答弁を引き出されている。

このようなふらついた答弁が政権の「軸足のブレ」や「軽さ」を感じさせ、おいおい大丈夫か、という疑念を招いている面は否めない。

そもそも、憲法改正の手続きが面倒から解釈を変えて法案を通そうという考えが大甘だった。

国会の発議はできても、その後の国民投票で過半数をとる自信が持てないからといって、強引に集団的自衛権行使のために提出してきた法案がグチャグチャになってしまうのは必然と言っていいだろう。

恐らく、改憲を放棄して、それでも集団的自衛権を行使するために外務、防衛を中心とした官僚に仕事を預けた結果、法的整合性を繕うために何本もの法案を束ねてつくりだしたものだろうから、つつかれれば、崩されて再編成という道をたどるのは予見できたはずだ。

これほど重要な法案は政党がマニフェストとして掲げ、選挙民の審判を仰いだうえで、時間をかけて野党とある程度はすり合わせておく必要があるが、そういった手続きをすっ飛ばして、小手先の調整で通してしまおうというのは虫が良すぎる。

通ったとしても、事前に想定していたものにはなっておらず、却って将来に禍根を残すことにもなりかねない。

議論に関しては、法的整合性はもともと難しいが、南・東シナ海で急伸長する中国を想定した取り組みなので、ここんとこ、法的整合性をある程度崩しても、中国脅威論に対抗する必要がるのか、というところに焦点が合わない限り、噛み合わない。

磯崎首相補佐官の「法的安定性は関係ない。」との発言は裏側には急伸長する中国の脅威に備えるためには法的安定性を担保する余裕はない、という意味が込められている(と思われる)ので、ここを攻められた時に、じゃあ、対中国は現行枠内で対処できるのか、と切り返す開き直りが欲しかった。

そこから、アメリカー中国の新型大国関係(これ自体は中国の発案だが、アメリカは否定していない)における日本の位置づけと自衛隊の役割が焦点化できれば、今よりはもっとマシな議論になったかもしれない。

野党も廃案にしたいのなら、中国脅威論に対する対応(脅威ではないという議論もアリ)を明確にしたうえで、今後の道筋(改憲手続か現行枠内での対応か)を提案しなければ、議論は空転するばかりで支持も得られないのではないか。

蛇足

武藤議員の「戦争に行きたくないは、利己的個人主義だ。」というツイートも議論を呼び込むネタになりうる。

紛争地域に関与する自衛隊員は確保できるのか、という論点だ。

自衛隊への入隊動機は各種資格(大型特殊、フォークリフト、危険物取扱、マンション管理士、防災管理者等々)が給料もらいながら得られ、20代で辞めても次の就職口をあっせんしてもらえるという「職業訓練学校」的な要素が少なからずある。

従って、武藤議員がいうような「戦争には行きたくない人たち」は自衛隊にも大勢いる。(というか大半の日本人は行きたくないだろう。)

現状でも自衛隊の曹・士クラスの定員充足率は70%弱なうえに、「安保法案」でリスクが高まると退校者や早期退職者が急増する恐れがある。

現に自衛隊がイラクへ派遣された2003年から撤収した09年まで退職者は急増している。05年には防大や卒業生が辞めた率は過去最高を記録し、38.4%に達している。

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