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武雄図書館リニューアル時の資料選定にみる指定管理者制度のagency problem

今週のお題「読書の夏」

図書館に詳しい訳ではないが一家言は持っている。自分で使うのは地元自治体の中央図書館と、たまに職場から近い日比谷図書館とか、仕事でちょっとした調べ物があるときは国会図書館なり、内閣府の図書館を使うこともある。できれば大学図書館も使いたいが、本を借りに行くためだけに本郷へ行くくらいなら国会図書館の方が便利だと感じている。でも借りるより買う派なので、自分にとって最大の書庫はAmazonとKindleだ。

武雄の図書館は話題になったリニューアル前に遊びに行き、旧歴史資料館の大砲なんかも見た。立派ではあるが正直いって観光客向けというか、地元の人が毎度見に行く内容でもないなと感じたことを覚えている。向かいのショッピングセンターに入っている本屋にハードカバーがほとんど置かれていないことに衝撃を受け、そういう地域の中で、どうやってマセた中学生、高校生が気の利いた本に出会って道を踏み外す機会を提供できるのか、みたいなことは考えさせられた。

ちょっと前に「バケモノの子」を見て、あれで借りるのはメルヴィルの『白鯨』だが、ああいう文学書の書棚で素敵な女子と出会うのは文化系男子にとって永遠の憧れだ。外国文学は手を出せてなくて『白鯨』を読んだ記憶はないが、中学時代に女友達から勧められて読んだ高橋和巳の『孤立無援の思想』が冒頭で『白鯨』を論じていたことは覚えている。

これまであまり武雄図書館のことを悪くいわなかったのは、いま図書館の存在価値は大きく変わりつつあると感じていたからだ。地元の中央図書館をみても、自分が多少は専門のコンピューター分野をみても碌な本は置いてない。机のある席は中学生やら高校生の自習で埋まっていて調べ物に使うのは難しい。これから図書館は変わるべきだし、試行錯誤の中で失敗があることは仕方ないし、いちいち責め立ててはみんな萎縮してしまう。

『火花』の貸し出しが2年待ちだなんて話を聞くと、本当にバカバカしいと呆れてしまう。税金をつかってまで売れている本の発行部数を多少減らすことに、どれほどの意味があるのだろうか?自腹で本を買っている同じ納税者として、ベストセラーを無料で読むことを住民サービスとして期待する向きは如何なものかと感じている。図書館は貸し出し待ちが多いからといって同じ本を何冊も買うべきではない。

文学に触れる機会という意味じゃ、たいがいの古典は青空文庫とかGoogle Booksとか国会図書館の近代デジタルライブラリーが充実してて、今時どれもスマホでアクセスできる訳で、図書館の存在意義って結局のところどの辺に残るんだろうね、ということは考え続けなきゃならない。方向がおかしくても自治体レベルで様々な取り組みが行われることを、見に行きもせずに叩くのも如何なものかという思いもあった。

とはいえリニューアル時に武雄図書館が購入した蔵書リストをみて、これはさすがにまずいんじゃないかと感じた。POS情報と取次のいいなりでつくられた薄っぺらな本屋の棚づくりよりもずっとひどい、明らかに売れ残った本の掃き溜めにされてしまっている。どんなに間抜けな資料選定をやったら、こんな下品なリストができるのだろうか?どこぞの新古書店の不良在庫を押し付けられているにしては図書の単価が高い点も気にかかる。

指定管理者が不良在庫の受け皿として委託を請け負った図書館を使うのは典型的なagency problemで、忠実義務違反に当たるのではないかと地方自治法244条を引っ張り出してみると、指定管理者制度は委託ではなく行政処分で、そもそも忠実義務なんか存在しておらず、不服申し立てを行えば、上位団体(武雄市の場合は佐賀県)の議会に諮問するルールになっていることが分かった。その採決に不服がある場合は、総務大臣に上げることもできるようだ。こうしたガバナンスを通じて、結果として忠実義務違反を追求できるのであれば、制度の不備とまではいえないのかも知れないが、現実に異議申し立て、審査請求、取消訴訟となると時間がかかるし、指定管理者を決める際に入札を行う例も多い中で、他で元を取る商法を野放図に認めてしまうと行政の質を担保できないことが懸念されるので、何かしら忠実義務のようなものを規定しておいた方がいい気がする。

指定管理者の選定と監督は発注者である自治体の責任だし、CCCが受託した他の図書館において、これほど下品な資料選定は行われていないと信じたいところではあるが、今回の事案を前市長の資質とか指定管理者の文化に矮小化して議論するのではなく、そもそも指定管理者におけるagency problemに対して、今の地方自治法244条の4で適切なガバナンスが働いているのか、他の指定管理者による背任事例なども参考としつつ、見直す必要があるのかも知れない。閑話休題。

武雄図書館のリニューアルに際して資料選定が杜撰だったことは残念だし、こういった悲劇が他の図書館で起こらないことを祈るばかりだが、そもそも武雄の問題に限らず、図書館の位置づけや役割そのものを今後どうしていくか闊達な議論の必要を感じる。文化を支える、知る権利を保障するといった公共性、住民ニーズと公平性、行政効率化の観点について、Google Booksや近代デジタルライブラリーといった新たなサービスの普及、住民のコラボレーションに対して適切に公共空間を確保できているかといった図書館に限らない街づくりの視点も踏まえつつ、落としどころを探っていく必要があるのだろう。

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