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「天皇陛下に決めてもらわないといけないような時代にしてはならない」〜田原総一朗氏、小林よしのり氏が語る終戦史(後編)

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7月26日に行われた映画『日本のいちばん長い日』(8月8日公開)のトークイベントに、ジャーナリストの田原総一朗氏と漫画家の小林よしのり氏が登壇した。

本作は昭和史研究の第一人者・半藤一利氏の同名ノンフィクションの映画化。太平洋戦争末期、連合国がポツダム宣言の受諾を迫る中、降伏か本土決戦か、陸軍大臣・阿南惟幾、昭和天皇、首相・鈴木貫太郎を中心に、それぞれの決断への苦悩とその舞台裏を描く。

トークイベントでは、鑑賞した両氏が作品の感想から、安倍政権が成立を目指す安保法制についてまで幅広いテーマが飛び出した。本記事では、直近の時事問題にも言及した部分を、質疑応答と併せてお届けする。前編はこちらから(司会:BLOGOS編集部大谷広太、撮影:弘田充)

国民もマスコミも戦争を煽った

田原:小林さんは昔ね、特に左翼が"あの戦争は悪い戦争だ。侵略戦争で、とんでもない戦争"だと言ってきたことに対して「そうでもないよ」と言ったわけね。

小林:そうですね。結局、わしの歴史観から行くと、ペリー提督が現れて、砲艦外交で日本をムリヤリ開国させて、不平等条約を結ばせた。それを解消するためには、日本も近代国家に生まれ変わらなければならないから、国民を平等にして、"国民国家"をつくり、軍隊をつくり、日清戦争、日露戦争を戦った。

田原:それでやっと不平等条約が解消出来たと。

小林:そう。一人前の国家だと欧米列強から認められたと。戦争して勝たなければ認められなかったんですよ。当時は。"帝国主義の時代"といって、戦争して勝った国だけが一流の国ということだったんですよ。植民地を持っていないと認められない。

田原:植民地にされるか、植民地を作るかという選択だったからね。

小林:どっちかしかないのよ。自分たちが植民地になるのか。あるいは、自分たちが戦って植民地を獲るのか。その中で、支那事変(=日中戦争、1937年〜)のあたりからまずい感じになって、結局アメリカとの戦争(=太平洋戦争、1941年〜)にまで突入していった。

田原:そこのところ、特に誤解するかもしれない。当時、近衛文麿が「昭和研究会」というブレーントラスト(政策の研究会)を作っていた。彼らは中国と戦争するのには反対だったんだよね。ところが、近衛さんが首相になっちゃったんで、とにかく蒋介石と早く和平をしようと。トラウトマンというドイツの中国大使に頼んで、和平交渉を行った。

小林:一旦、和平条約が結ばれたんです。

田原:ところが南京を落としちゃったものだから、日本は気が大きくなっちゃって。

小林:そうなんですよね。結局あれで、止められなくなっていくわけですよ。現場の軍隊に対して、シビリアン・コントロールが効かないんですね。だから、政府は現場がドンドン戦線を拡大していくことを食い止められないわけですよ。

「統制権干犯問題」というのがあるんですけれども、政府が止めようとしたって、もう止められない。国民も軍を支持しちゃっているという状態なんですね。

田原:マスコミも全部支持している。朝日新聞、毎日新聞、読売新聞も「戦争やれやれ!」と絶叫しているわけ。

小林:そうなんですよ。「政治家は腐敗している、全然信用ならない。軍部の方が清廉」と言って、国民は軍部を支持しちゃう。そうすると、シビリアン・コントロールが効かないっていうことになってきますね。

田原:そもそも太平洋戦争=大東亜戦争が始まる時に、アメリカやイギリスと戦争をして勝てると思った日本人は誰もいないよね。

小林:そうですね。

田原:ただ、"今なら戦える"と。軍は、戦えるなら戦うつもりなのね。

小林:支那事変以降、中国での戦線がドンドン延びていってしまって、全然決着がつかない。それに、国民はイライラしている。溜まっているわけですよ。ベトナム側から援蒋ルートを通じて、欧米がドンドン兵器を運びこんでいるから、この戦争は終わらないんだと思って、何か鬱屈としたものがあるんですね。そういう時に、とうとう真珠湾攻撃をやって、戦端をアメリカと開いてしまったとなると、ある意味、ものすごいスッキリしたような感覚もあったんですよ。

田原:今から20年ばかり前に、東條英機元首相の家に行ったことがある。お孫さんがまだ生きていて。僕が行ったら「田原さん、これを見てください」と。柳行李に2杯、3杯、ハガキ、手紙類が何千通も入ってるの。そこには「意気地なし!」「バカヤロー」と綴られている。つまり、"戦争をやれ"と。軍が、あるいは上が弾圧したから国民は戦争反対と言えなかったって言われているけど、実際は「やれやれ!」だったんですよ。

小林:なるほど!そうなんですよ。だから、アメリカと開戦してしまったことについて、文学者たちが「とうとうこの日が来た!」って、すごい陶酔感に浸っている文章も書いているわけですよ。

日露戦争だって、本来勝てるかどうか分からないものでしたからね。それにも勝っちゃっているから、「また勝つんじゃないか?」っていう希望的観測が、どこかにあったんでしょうね。しかも、緒戦はほとんど勝ってますもん。

田原:僕はね、小学校1年生の12月に太平洋戦争が始まって、2年生の始めまでは日本軍の調子が良かったからね。先生が、南洋の地図を買ってきて、日本が占領したところを全部赤で塗りつぶしていくの。ドンドン赤が増えていった。

小林:でも、途中から負け始めた。ミッドウェー海戦あたりから、ドンドン負け始めていたから。でも、負けていることを大本営は隠してて、ずっと勝っているかのように、国民を騙しているわけだから。空襲が始まったら、さすがに国民も、これは、「俺らダメだな」って。

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