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70年談話に異議あり

  戦後50周年が近づいていた95年6月、衆院本会議において「歴史を教訓に平和への決意を新たにする決議」が採択されました。侵略行為と植民地支配への反省を盛り込んだこの決議は、当時の連立与党(自民・社会・さきがけ)が主導したものでしたが、賛成者は約230名にとどまり、議員数の半数に届きませんでした。全会一致を原則とする国会決議としては、極めて異例でした。

  与野党間の文案調整が不調に終わり、野党第1党であった新進党の議員が欠席したからでした。私も同党の1年生議員でしたので、本会議に出ていません。与党の自民党からも欠席者が相次ぎました。安倍晋三議員もその1人でした。

  歴史認識を皆で共有し1つの文に集約する困難を、その時私は強く感じました。恐らく、安倍総理も同じ思いだったでしょう。

  その2か月後の8月15日、「植民地支配と侵略」に対する「痛切な反省」と「心からのお詫び」を柱とする村山富一内閣総理大臣の談話が策定され、閣議決定されます。この「村山談話」は、第1次安倍内閣や野田内閣も含めて20年間にわたり継承されてきました。

  今年は戦後70周年。安倍総理は8月15日の終戦記念日までに新たな談話を発表するそうです。私はその内容以前に、その行為自体に異議があります。本年3月、小泉純一郎・元総理は「別に10年ごとに出す必要もないと思う」と、語られました。全く同感です。しかし、小泉元総理は05年8月、村山談話を踏襲して戦後60周年に合わせて「小泉談話」を発表しています。悪しき前例をつくった張本人です。

  私は、戦後50年という大きな節目における「村山談話」は、それなりの重みと意味があったと思います。けれども、戦後60年の「小泉談話」は無用だったと思います。そして、今後戦後80年談話も90年談話も必要ないと思っています。10年ごとに談話の文章を国際社会が批評する姿を想像して下さい。馬鹿馬鹿しい限りです。

  特に今年は戦後70年であるとともに、中国は抗日戦勝利70周年、韓国は光復70周年、対日国交正常化50周年となり、各々が国家的なイベントを準備しています。虎視眈々と「戦後国際秩序に反旗を翻す日本」というレッテルを貼ろうとしています。相手チームがオフサイドを狙っていることが明々白々なのに、そのトラップ(罠)にわざわざ掛かるのは愚かです。

  安倍総理は、村山、小泉両元総理の「談話」を全体として引き継ぐと語っています。9月の訪中や公明党との調整もあるので、国内外を刺激したくはないのでしょう。そして、内閣全体の意思として閣議決定するのではなく、総理個人の談話として発出しハレーションを減らそうとしています。

  行政のトップとはいえ安倍晋三という1人の個人が、国民の総意を代表するかのように日本の歩みを総括し歴史認識を示す「談話」を出す資格があるのでしょうか。傲岸不遜です。思い上がっています。

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