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日欧の物価は低迷、怪しい異次元緩和効果

7月30日に発表された米国の4~6月期GDP速報値は、年率前期比2.3%増となり、予想は下回ったものの、1~3月期の0.6%増から持ち直した。ちなみに1~3月期は速報値の0.2%減から上方修正されていた。悪天候で落ち込んでいた個人消費が大きく拡大し、設備投資の落ち込みをカバーした格好となった。

 個人消費支出(PCE)価格指数は2.2%上昇と、前期の1.9%低下から回復し、食品・エネルギーを除くコア指数は1.8%上昇と前期の1.0%から伸びが加速した。この数値を見る限り、少なくとも年内とされるFRBの利上げは実施される公算が高い。いまのところ9月とみるむき、12月とみるむきが半々といったところ。もちろん議長会見は予定されていないが10月のFOMCの可能性もゼロではない。

 これに対して、30日に発表されたドイツの7月のCPIが前年比0.1%の上昇に止まった。スペインの7月の CPIは6月の横ばいからマイナスに転じていた。ECBが量的緩和を決定してから、いったんCPIの下落に歯止めが掛かった格好ながら、ここにきて再び低迷している。そもそも国債を大量に買い入れば物価が上がるものなのであろうか。

 31日には日本の消費者物価指数が発表された。6月の全国コアCPIは前年比プラス0.1%となった。日銀が物価目標としている総合はプラス0.4%、食料及びエネルギーを除く総合はプラス0.6%となっている。日銀の2.0%という物価目標からはかなり乖離しいている。

 日銀の石田審議委員の30日の京都での講演の資料のなかに「物価の基調的な動き」を示すグラフがあった。そこには、総合(除くエネルギー・持ち家の帰属家賃)のグラフと、総合(除くエネルギー)のグラフ、そして総合(除く生鮮食品・エネルギー)があった。このうち2015年5月の数字をみると総合(除くエネルギー・持ち家の帰属家賃)は前年比プラス1.5%、総合(除くエネルギー)がプラス1.2%、総合(除く生鮮食品・エネルギー)はプラス0.7%となっていた。5月の総合(除く生鮮)はプラス0.1%であった。

 つまりCPIの下方バイアスの要因ともされる帰属家賃と、ここにきてのCPIの前年比の縮小要因であった原油価格の下落による影響を除くと、前年比では物価はプラス1.5%程度におり、日銀の物価目標に近づいていることが示されている。

 黒田総裁も今後は基調的な物価上昇圧力が強まっていくと説明しているが、それを示すものとして、除くエネルギー・持ち家の帰属家賃、除く生鮮食品・エネルギーなどを挙げたものと思われる。

 それでは、除くエネルギー・持ち家の帰属家賃、除く生鮮食品・エネルギーのグラフからみて、どれだけ異次元緩和の効果が出ていたのか。グラフ上はたしかに異次元緩和の決定のタイミングからグラフは大きく上昇した格好となっている。まるで異次元緩和に即効性があるかとのような動きである。さらに異次元緩和第二弾を打ってからまもなくして、落ち込んでいたものが急回復している。

 たしかにこれは異次元緩和が効いているかのような格好となっているが、このあたりは為替の動き(円安)の影響でかなりの部分の説明が可能となるのではなかろうか。少なくともマネタリーベースが増えたことで物価も上昇したとの説明は、異次元緩和決定以降ほぼ一方的に増え続けているマネタリーベースに対して、一時的な物価の大きな落ち込みなどが説明できなくなる。そして、2008年から2009年にかけてのプラス1%台までの上昇の説明も必要になる。こちらはマネタリーベースの増加はほとんど関係していなかったはずなのだが。

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