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『はじめての社内起業』新規事業とは何だろう



『はじめての社内起業』(石川明 ユーキャン学び出版)を読んだ。事業企画指南書として、極めてよくできた本だなと思いつつ、新規事業とは何だろう考えてしまった。

「社内起業」というコンセプトを提示しているのがいい。別に、所属する企業を辞めて独立しなくても、社内で何かを始めるというのは、企業の可能性を広げる上でも、組織を活性化する意味でも、個人のキャリア形成においても、有効である。実際、日本の大企業においても社内ベンチャーという取り組みはこれまでも行われてきた(この手の話はリクルートやサイバーエージェントが有名だが、別にこれらの企業に限った話ではないことは、ここで指摘しておく)。

激しく実用的な本である。社内起業、新規事業、なんて大げさな言葉を使わないまでも、新しく何かを始めたい人にとっては極めて役立つ本である。ニーズの探り方から、ビジネスモデルの検討、リスクの検討と解消法などはもちろんだが、案件を通すためのコツまでを具体的に紹介している。ここは、実務家にとっては嬉しいポイントではないだろうか。この本に従いつつ、頭の中を整理し、ニーズを検討し、アウトプットすれば、事業計画書は、かなり上出来なものができるのではないだろうか。フレームワークを提示しつつ、ところどころに、ちょっと元気になる話が散りばめられているのも良い。

「社内起業」をうたいつつも、新しい事業をおこす、そうではなくても、既存の事業を分析するという意味でも使える本である。特に経営企画、事業企画担当者には必読の本だといえよう。もちろん、「将来は起業したいっす」という意識高い系も、これを読むと人生考え直すだろう。以前、都心のスタバでよく見かけた、ノマド風を装い、「ワクワクハッピープロジェクト」みたいな寒い事業企画書を書いていた奴らも、この本をあの頃、読んでいたらと思う。

思うに、この手の「起業」本は、経営者の武勇伝というか、精神論というか「オレオレ話(あるいは、アレオレ話)」か、あるいはコンサル出身者や経営学者が書いたような理論を紹介するものなどに2極化しており、実務家向けの本当に使える本が少ないと感じていた。この点においても存在意義があるといえる。

ただ、この本自体に日本の「社内起業」や「新規事業」「ベンチャービジネス」の問題点が凝縮されていないかというのも率直な感想である。

何度も書いてあるように、具体的でよくできた本なのだけど、あくまで社内や投資家に対して通すための、見栄えの良い、点取り虫の事業企画書マニュアルになってしまっていないか。いや、この本が悪いというわけではなく、新規事業、中でも社内起業というものがそういうものになっていないかと思った次第だ。

そう、社内起業というものは、本業に対する影響もあるわけで。一部は慎重にならざるを得ない。そうであるがゆえに、かっちりした企画案が期待されるわけだ。

もっとも、このあたりはさじ加減が難しく。

いい加減なベンチャー企業、ビジネスプランに出資するということが横行している現在においては、この本で紹介されているメソッドにそった、かっちりしたプランが必要ではないかとも思ったりするのだが。



なお、よくこの手の話で礼賛されるリクルートの社内起業のウソ・本当については、この本で1章かけて批判したので、ご覧頂きたい。

率直に、新規事業コンテストは楽しくなかった。いや、正直、寒い企画書ばかり書いたのも事実なのだが。この本を読んで、あの頃の、嫌な気分というか、面白くない体験を思い出してしまった。

一応、部門賞はもらったことがある。そのプランは当時の直属の部長に酷評というか鼻で笑われたけどな。でも、その案を評価してくれた人はJリーグのチェアマンになった。酷評した人も、いま取締役だけどな。

他の優れたプランも、点取り虫的な評価になっていた上、コンテストでは高評価だったプランも「ウチのビジネスモデルにあわない」というコメントがついていたり。本当にやる気あるのかと思った時期があったことも事実だ。

・・・ルサンチマン・スイッチが入ってしまった。この辺でやめとこう。私のことが嫌いなOB・OG、現役社員の皆さん、はいはい、ダメ社員でしたよ。

まあ、でも、中川淳一郎をはじめとする社内外の参加者と取り組んだことは良い思い出だ。

そして、この本は案件を具体化するあたりまでを扱っており。むしろ、案が通ってからの軌道修正、成果を出すことも大事なわけで。まあ、成果を出すのは、実際の経営の話になるが、当初の見立てとの違い、試行錯誤が大事なわけだ。うん。

起業家、社内起業家へのアンケートもあるのだが、そこの活かし方がややもったいない気もした。

画像を見る

とはいえ、新規事業というものを考えるためには、実に有益な本であり、こんな本を待っていたという感じの、惜しげもなくノウハウを開示した本である。

来年の春に設立する同族経営会社のビジネスプランの参考にしよう。

というわけで、今すぐタクシーをとめて、書店に急げ!

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