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企業不祥事はいつ社内で「沸点」に達するのか?

さて、ひさしぶりの「コンプライアンス経営はむずかしい」シリーズでございます。今朝(7月28日)の日経新聞「迫真ルポ-堕ちた東芝その1(発端は一本の電話)」は、第三者委員会報告書にも記載されていなかったような内部事情が満載で興味深いものでした。金融庁審査の発端となった内部通報(内部告発)→社内で第三者委員会設置を覚悟することになった特別調査委員会への内部通報→組織関与を第三者委員会が認定することになった第三者委員会への内部通報と、企業不祥事が明るみになる経過は、他社も十分に認識しておく必要があると思います。平時の内部通報の存在も大きいのですが、有事の内部通報も、これまた重要であることがわかります(なお、この「迫真ルポ」も面白いのですが、いよいよ毎日新聞で始まった連載記事「東芝が抱えるアキレスけん-ウェスチングハウス」がこれからもっとも事件の核心に迫るのではないかとひそかに期待しております)。

今年3月から東芝さんの事件を取材されていた各紙記者の方々のコメントや、上記「迫真ルポ」を読みますと、東芝社内における経営者の不祥事対応に変化が生じていることがわかりますね。4月ころまでは「いやいや、インフラ部門で工事進行基準の取扱いに凡ミスがあったみたいで。すぐに修正しますから」といった雰囲気です。金融庁からの調査要請が出た際、社外取締役のひとりが「すぐに危機対応をしたほうがいいのでは?専門家に依頼しては?」と進言したにもかかわらず、取締役会では誰もこの意見に耳を貸さなかった、というのも頷けます。

いまでこそ、多くのマスコミや有識者が池に落ちた犬を棒で叩くように東芝経営陣に厳しい糾弾の目を向けていますが、この3月、4月ころに「これは重大な問題だ」と東芝の経営者に指摘して、自ら真実を解明することができたかどうかはむずかしいところです。私も5月に初めてこの事件を取り上げた こちらのエントリーは、大きく論点をはずしています。恥ずかしいですが、このように第三者委員会報告が出た後に読み直しますと、事件の見立てというものはむずかしいものだと痛感します。過去の類似事件がバイアスになってしまって、お決まりのパターン思考に陥ってしまったのですね。

本当に東芝さんが再生するためには、今後、早期に有事意識を共有できるかどうかが重要だと思います。今回の東芝さんのケースでは、まったく自浄能力が発揮できなかったからこそ厳しい批判を受けていますが、早期に有事意識を共有できれば少なくとも自浄能力を発揮することは可能だったはずです。しかし周囲が平時にもかかわらず、「今は有事だぞ」と声を上げることに対しては「またアイツおかしなことを言い出した。これだから社外役員というのは役に立たないんだよなぁ。これからはアイツには情報を流すなよ」といった対応が目に浮かびます。たとえ10回のうち、9回までが事なきを得るとしても、これを「狼少年」として嘲笑しない企業風土というものは果たして作れるのでしょうか?人間がやることですから、この「10回中1回くらいは彼のいうことは正しいはずだから彼の忠告を聴こう」という風土がないかぎりは、どこの企業でも東芝さんと同じようなことが起きるのではないでしょうか。いや、ひょっとすると社外役員が増えてくると、そういった「おかしい」といった声に同調する役員があらわれて、沸点が低下するかもしれません。社外役員が複数存在することは、こういった有事意識の共有には役立つのかもしれませんね。

今回の東芝事件では、社内調査委員会にインフラ部門以外から内部通報が届いたことによって、社内では「これはエライことになった・・・(企業不祥事の沸点)」ということになりました。また東洋ゴムさんの免震ゴム偽装事件では、「沸点」に達したのは今年2月、東京の大手法律事務所に相談して「今すぐ公表しなさい!」と指示された時点でした。御社ではどうでしょうか?最初に金融庁の開示検査課から電話が入った時点でしょうか?それとももっと早い時点、たとえば社内のヘルプラインに内部通報が届いた時点でしょうか?それとも監査役さんが「監査報告に問題を指摘する」と明言したときでしょうか?いずれにしても、「原理主義者」と揶揄されても平然としていられるような方が(運よく?)ボードに残っていたか、あるいは経営者がリスク感覚にすぐれており、経理や法務、監査の重要性を認識している場合でなければ、どこの会社も東芝さんと同じように池に落ちたあとに棒で叩かれるような「後だしジャンケンバッシング」に遭うことになるかもしれません。

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