グーグル傘下の動画共有サイト「ユーチューブ」は新たな有名人を生み出してきた。今後は彼らをスター並みに扱わなければ、他の動画サイトに奪われてしまうかもしれない。
インターネットの有名人たちが一年に一度集まるイベント「VidCon」が今週、米カリフォルニア州アナハイムで開かれた。ユーチューブと、そこから人気者を引き抜きたい新興のライバルとの間で宣伝合戦が繰り広げられた。
主催者によると、ツイッターのライブ動画アプリ「ペリスコープ」やバイン、ゴープロ、コムキャストなど、10以上のオンライン動画サービスが初めてプレゼンテーションを行った。ユーチューブの最大のライバル、フェイスブックはイベントに幹部を送り込んだ。
「クラッシュコース」などユーチューブの人気チャンネルの司会者で、VidConの共同出資者のハンク・グリーン氏は「視聴者の多様化や新規開拓のため、誰もが他のプラットフォームに関心を持っている」と話す。
ユーチューブの人気ニュースチャンネル「ザ・ヤング・タークス」の司会者、チェンク・ウィーガー氏は今年、フェイスブック専用の番組を開始した。ユーチューブは「この半年で(ウィーガー氏のチャンネルの)強化に乗り出した」というが、ウィーガー氏はVidConで他社とも協議しているという。
こうした圧力を背景に、ユーチューブは人気のあるクリエイターと関係を強化せざるを得なくなりつつある。同社はクリエイターに成長の機会を見つけたり、場合によっては支払いを増やしたりしている。
ユーチューブは「トップクリエイター」だけを扱う部門を設置し、クリエイターたちの不満に対処したり、新たなネタ作りや収入増を支援したりしている。このチームは人気の高い動画を「グーグル・プリファード」に誘導しようとしている。「グーグル・プリファード」はユーチューブのコンテンツ上位5%で構成され、広告会社が割増料金を払って前払いで購入できる。
グーグルでユーチューブ部門を率いるスーザン・ウォシッキー氏はインタビューに対し、「彼らがとどまり続けることのできるプラットフォーム、彼らが成長し、仕事の幅をさらに広げることができるプラットフォームを運営したい」と語った。
アンナ・アカナ氏が短編のコメディーやアドバイスを配信するユーチューブのチャンネルには130万人を超える視聴者がいる。トップクリエイター部門の1人は今月初め、アカナ氏に連絡を取り、心配なことやアイデアはないかと尋ねた。動画の投稿を始めてから4年になるが、ユーチューブの社員と話したことはほとんどなかったそうだ。
アカナ氏はストーリーのある長編の動画をつくりたいと伝えたという。トップクリエイターチームは番組や映画の制作を支援する部門「ユーチューブ・オリジナルズ」との会合を設定してくれた。
ユーチューブの人気チャンネル「マイカップケーキアディクション」の作者、エリース・ストラッチャン氏はユーチューブの関係者の支援を受けて、質の高いオンライン動画の制作に資金を提供するオーストラリア政府とグーグルの合同事業に助成金を申請した。
23日、VidConに登場したユーチューブのウォシッキー氏は2016年にクリエイターが無料でステージや機器が使えるスタジオをトロントとムンバイに設置すると発表した。クリエイターが制作したチャンネルを紹介するモバイル端末用アプリのリニューアル版も発表した。ユーチューブは22日、音楽専門チャンネルMTVのプログラミング責任者のスザンヌ・ダニエルズ氏をトップクリエイターによる映画や番組の監督として採用した。
オンライン動画――および、それに伴う報酬――は最も熱い分野の1つ。デジタルメディア分野専門のブティック投資銀行ルマ・パートナーズによると、デジタル動画への年間広告支出は1年で34%伸びており、2016年には約100億ドル(約1兆2380億円)に達する見通し。
By ALISTAIR BARR