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クックパッドが約2年で90億を投じたM&Aと大型出資10件

みんなのウェディングへのTOBなど、M&A的な動きが活発なクックパッドですが、2013年9月まで遡り、この2年で約8件のM&Aや大型出資を実施していることがわかりました。ここ2年のクックパッドの株の動きを見ると株価は3-4倍。同時期のTOPIXで1.5倍程度と捉えると、クックパッド株の好調ぶりが伺えます。

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時価総額は2015年7月22日時点で約2,800億円。この時価総額水準はGREEの1,700億を超え、コロプラの3,300億円やDeNAの3,500億円に迫ります。非ゲームで近いのはサイバーエージェントやカカクコムの3,000億円代後半。

クックパッド本体の特に課金が好調で、有料会員数が160万人を突破。既存事業を堅調に伸ばしつつ、国内外でM&Aも積極的に実施。特売情報やECなどの新規事業の種も蒔いており、新規事業で大きな軸ができてくれば、上場企業の成長3本柱が綺麗に伸びていくという、美しいエクイティストーリーとなっています。決算資料によると、2017年に経常利益100億円が目標とのことです。

本稿ではクックパッドのM&Aと大型出資に焦点を絞ってご紹介します。

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2013年9月:コーチ・ユナイテッド(C2C):10億円

プライベートコーチのCyta.jpを提供するコーチ・ユナイテッドを10億円で買収。Umeki Salonメンバーでもある有安先生の100%会社だったので、資本金1,000万円から100倍のリターンとなりました。

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買収時前期の売上は1億で営業損益は1,500万。クックパッドによる完全子会社後はどれくらい伸びているのか。同社の詳細な資料はクックパッドのIRには見当たらず。不確かな情報筋からは、上場を目指している説も耳にしたことがあります。

クックパッドIR:コーチ・ユナイテッドの子会社化について

2014年1月:ALLTHECOOKS(米):5.12億+α

ここから3社はいずれもレシピサイトの海外買収。概要一覧を海外事業説明資料から下記に抜粋。

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米国カリフォルニアをベースとしたレシピサービス「allthecooks」。アーンアウト方式を採用し、追加代金は2017年1月までに確定し最大5.12億とのこと。

クックパッドIR:ALLTHECOOKSの孫会社化について

2014年1月:Mis Recetas(スペイン):11.1億

クックパッド・スペインを設立し、そこを通して11.1億でスペイン語のレシピサービス「Mis Recetas」を取得。

アプリがスペイン語圏17ヶ国のApp Store「フード/ドリンクカテゴリ」ランキングで1位を獲得していますが、2012年通期売上は1,500万。2013年通期では伸びているのでしょうが、伸びていて1億くらいだろうか。

クックパッドIR:スペインにおける子会社の設立及び子会社における事業譲受けに関するお知らせ

2014年4月:Dapur Masak(シンガポール):0.6億

この案件は小粒ですが、シンガポールのレシピサイト「Dapur Masak」を運営する同社の60%の株式を0.6億で取得。取得前は40%保有しており、すでに持分適用子会社でした。

買収前期の通期決算は売上ゼロの営業損益約900万円。代表者がクックパッド創業者の佐野さんとなっていますね。

米国・スペイン・東南アジアと、クックパッドの海外展開の本気度が伺えます。

クックパッドIR:DAPUR MASAK PTE. LTD.の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

2014.7:セレクチュアー(EC):5.5億+α

国内に戻り、ECを買収します。インテリア雑貨などのECサイト「アンジェ」を運営するセレクチュアーを子会社化。まず5.5億円で80%を取得。残り20%についても2015年12月期中の追加取得で完全子会社化。

2013年7月期の同社の売上は前期比10.3%減の14億5800万円、営業利益は同74.1%増の5900万円、当期純利益は同52.2%増の3700万円。赤字経営に陥るEC企業が多い中、セレクチュアーは安定的に利益を計上する経営を続けてきた。

この案件は全然知りませんでした。ECは本当に儲からないですね。15億も売上立っていて、0.6億の営業利益とは。老舗企業の5.5億での買収はドナドナ感もありますが、クックパッドとユーザー層は被っているとはいえ、アンジェを見てもクックパッドと表向きは強く連携している印象は受けず。

参考:クックパッド、老舗の通販・ECサイト「アンジェ」を運営するセレクチュアーを5.5億円で買収
クックパッドIR:セレクチュアー株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

2014.10:キッズスター(知育):0.8億

厳密にいうとキッズスターという子会社を設立し、アイフリークモバイルから「なりきり!!ごっこランド」を中心とした知育アプリ部門を譲り受けています。その際の譲渡額が0.8億。

クックパッドは主婦ユーザーが多いでしょうから、そこへのクロスセルの打ち手として知育アプリというシナリオはわかりやすい。そういえば、スマートエデュケーションは元気なんでしょうかね。

クックパッドIR:キッズスター設立とアイフリークモバイルからの事業譲渡

2014.10:Netsila(レシピ・レバノン):13.9億+α

上述の子会社化したシンガポールのDapur Masakを通して、アラビア語のレシピサービスShahiyaを運営するレバノンのNetsilaを買収。ラマダン時にはMAU400万に上るよう。

取得額は13.9億+アーンアウトで最大5.3億。クックパッドの案件の中でも比較的大きい。

クックパッドIR:Netsiaの買収に関して

2015.4:イーブックイニシアティブ:5.2億で10%取得

クックパッド子会社のマグネット社を通じて、イーブックイニシアティブの10.39%に当たる株式を5億で取得。イーブックは電子書籍関連の上場企業。買収ではないものの、狙いは気になりますね。

後述するみんなのウェディングでも述べますが、純粋な事業シナジー狙いの投資のみならず、純投資案件もけっこう含まれていそうな気がします。

参考リンク:クックパッドのイーブックイニシアティブへの資本参加

2015.6:日本テクト(子育て支援):非公開

産婦人科を通したママ・ベビー向けサービスを提供する日本テクト株式会社を、株式会社クックパッド ベビーとして子会社化。買収価格は非公開ですが、日本テクトの親会社の日本テクトホールディングスが資本金2億で2015.5に設立されています。複雑でよくわかりませんが。

クックパッドニュースリリース:日本テクト子会社化しクックパッド ベビーをスタート

2015.7:みんなのウェディング(結婚式CGM):28.65億

最後はみんなのウェディング。TOBで26.89%を28.65億で取得。パッとニュースだけ聞くと、あたかもかなりの比率を持っている印象を受けますが、クックパッド代表執行役である穐田氏も持分と合わせても40%です。直近の株価は1,210円でクックパッドのTOB価格である1,400円を下回り、時価総額は93億円。

2014年3月にIPOしたみんなのウェディングが、粉飾決算疑惑もあり株価が低迷してのクックパッドによるTOBはIPO市場には大きなニュースでした。両社ともCGMではありますが、CGMの知見といった点ではシナジーはありそうですが、大きなシナジーは見込みにくいのではないかと筆者は考えます。東洋経済オンラインのドイツ証券アナリストのコメントを下記に抜粋。

ドイツ証券の風早隆弘シニアアナリストは、「みんなのウェディングは口コミサイト。クックパッドの競争優位性の根幹にある、ユーザー間のコミュニティ形成力などを移植しやすい」と、今回の子会社化を評価した。

引用元:東洋経済オンライン

実務として複数のCGMに携わった筆者としては、みんなのウェディングはクックパッドや食べログのようなユーザーコミュニティの磁力の強いメディアではないので、コミュニティ形成力という概念がほぼありません。よって上記の子会社化を評価するロジックは成り立たないんですよね。

事業シナジーではなく、事業価値より市場価値の方が低かったので、クックパッドが連結小会社化して辣腕な石渡氏を送り込んでバリューアップして市場に戻すという、PEプレイだというのが本誌の見解です。KKRやカーライル的な純粋なPEより事業理解は深いし、キャッシュも潤沢で、伝説の投資家穐田氏が率いるクックパッドですから、表向きはシナジーあるっぽく見えるかもしれませんが、3-5年でバリューアップして2-3倍で売却する合理的な純投資ではないでしょうか。

現金は115億保有。10件のM&A総額は約90億

最新の決算短信によると、現金は115億保有。これは2014.11の海外募集による86億調達により、前期決算の47億から大幅に増加しています。調達の資金用途には買収も含まれており、既存事業は既存の収益で十分回せるでしょうし、単体で前期(決算期短縮で8ヶ月分)で32億の営業利益が出ています。調達用途はほぼM&Aではないかと。

上記10件の総額はアーンアウトをアップサイドでカウントし、非公開をカウントしないと仮定すると約90億。約2年で90億の買収。10件中クロスボーダーが4件。かなりM&Aに本気な姿勢が伺えます。

M&Aがどのように売上と利益に結びついているか、連結決算から単体決算を引いて下記に算出しました。

2014年通期(8ヶ月) 売上 営業利益
連結決算 5,993 3,192
単体決算 6,702 2,679
連結会社のみ 709 -513

*単位:百万円

連結で売上が立っているのは主にECのセレクチュアだと思われます。海外レシピサイトの収益化はこれからでしょう。まだまだ先行投資の時期で、赤字企業が子会社には多いと思われます。ただ、次の軸を作るべく、グローバルを含めて様々な領域に張っていくクックパッドはすごいなと思います。

おまけですが、マイノリティー出資では2014.9にフリルに約3億、2012.11にZaimに4,200万、2014.10にウィルフに数千万張っています。

オイシックスをクックパッド株3%の株式交換で買えばいい

「食を中心とした生活インフラ」の進化を掲げ、2017年に経常利益100億円を狙うクックパッド。もはやレシピサイト企業ではなく、コングロマリット化が加速しています。みんなのウェディングTOB後でもまだ100億近い現金を要する同社は、今後国内スタートアップの有力なEXIT先となることに想像は難くありません。どういうジャンルの企業を今後買収するか、本稿で最後に予測しておきます。

クックパッドにて主婦ユーザーを保有している強みがあり、そこから主婦が使うようなサービスはシナジーがあります。知育系サービスで、IVS2015 springのLaunchpadで優勝しているベビーシッターのキッズラインや、知育アプリは真っ先に想定できます。他にも知育コンテンツ、既にイードに買収されましたが、絵本ナビあたりも相性が良かったのではないかと。

ECならオイシックスとか。時価総額は130億で売上180億の営業利益6.4億という利益率の低さは、クックパッドのような利益率が高い企業が連結化するには耐えられないかもしれませんが。しかし、時代は「垂直統合経営」と様々な経営者も叫んでおりますので、クックパッド株3%程度の株式交換で買えると思えば、買って「クックパッドのレシピにある素材はオイシックスで買えるよ!」とすると良いのではと。

2015年下半期も何かしら国内でのM&Aは1件はあるのではないでしょうか。クックパッドのM&Aをまとめてみると色々と興味深かったですね。個人的にはPEとしてのクックパッドは相当な破壊力がありそうだと感じます。あと、M&Aのスキームとしてはアーンアウトがお好きなようですね。

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