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経産省の企業統治解釈指針は攻めるため?守るため?

東芝事件に関する一連の報道の中で、とても気になるニュースが各紙で報じられています。近々に(今週末にでも?)経産省が改正会社法に伴う解釈指針を公表するとのこと。たとえばこちらの産経新聞ニュースによりますと、東芝事件を契機として、上場会社のガバナンス構築が「仏作って魂入れず」にならないように、その実効性を図るための指針を(経産省が)示すと解説されています。まさに「守りのガバナンス」を機能させるための会社法の解釈指針が示されるような書きぶりです(たぶん他の新聞社の論調も、ほぼ上記の産経さんの論調と同様ではないかと記憶しています)。

しかし(私の理解が間違っていたら訂正しますが)、今回の経産省の解釈指針の公表は、むしろROE8%を超える成長戦略を実行するための「攻めのガバナンス」を実現するためのものではないでしょうか。おそらくこちらのコーポレートガバナンス・システムの在り方に関する研究会議事録が参考になると思いますが、この研究会における審議内容からしますと、たとえば社外取締役は「攻めのガバナンス」の一翼を担う者としてどのように活躍すべきか、という点が示されるはずです。また迅速な経営判断が可能となるよう、取締役会の審議事項を絞って、大幅に権限を経営者に委譲しましょう、といった議論もさかんに行われているようです。

この「東芝ショック」と世間が騒ぐタイミングで会社法解釈指針が出るということで当然懸念されることですが、機野さんがコメント欄でおっしゃっているように、いま政府が推進している攻めのガバナンスを実行する先には、今回の東芝事件のような結果が待っている・・・という見方も出てくるのではないでしょうか。いや間違いなく、そのような意見も素直に出てくると思います。東芝事件の第三者委員会は意図的に「短期の利益追及のプレッシャーが要因」という言葉を使い、「中長期の持続的成長を図るためのガバナンス」を目指す攻めのガバナンスとの矛盾が生じないような書きぶりが見て取れましたが、どうもそれだけでは説明がつくものでもないように思えます。現に、本日から始まった経団連の夏季セミナーでは、メーカーの社長さんから(東芝事件を受けて)「これでは社内の数値目標を強調することがむずかしくなってしまう」との声が出たと報じられており(こちらのニュース)、企業の攻めの姿勢に東芝ショックがどれほどの影響を及ぼすのか、その波及が懸念されます。

執行と監督の分離を推進すれば、それは執行から報告が来ない限りは不正を発見できなくなってしまうということになります。社外取締役が経営の重要事項だけに絞って審議に参画すべき、ということになれば、そもそも重大なリスクがどこにあるのか把握することも困難になります。経営のスピードを上げるため、非業務執行役員が経営陣の業績を評価するため、そして投資家が「モノ言う株主」としての活動を容易にするための解釈指針が公表されることを期待しているのですが、今回の東芝事件によって、このあたりの指針公表の趣旨にはブレは生じないのでしょうか。

私自身は、拙著「ビジネス法務の部屋からみた会社法改正のグレーゾーン」の中で一章もうけて、攻めのガバナンスと守りのガバナンスを分けることは適切ではなく、攻めの工夫によって守りも充実しますし、守りの工夫によって攻めに貢献できることを(問題提起として)書かせていただきました。このたびの経産省解釈指針では、(たとえば取締役会の在り方に関しては)リスク管理と企業価値向上への貢献をどのように両立させるべきか、またその両立の工夫をどのように株主に示すべきか、そのあたりが指針の中で分かりやすく解説されていればいいなぁと期待しているところです。

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