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台湾国民党総統選に急浮上した女性候補 背景にある馬英九と王金平・立法院長の溝 -

台湾の国民党の総統候補に洪秀柱(立法院副議長、女性)が急浮上したことについて、6月17日付の台北タイムズ社説は、その背景や意味を分析し、国民党がますます衰退することに繋がる可能性を指摘しています。

 すなわち、国民党の総統候補として洪秀柱が急浮上したことは、何を意味するか。一つは、国民党にとっての危機が、同党の組織強化の分水嶺となり得る。もう一つは、洪の「一つの中国」指向の見方を国民党が丸ごと受け入れれば、国民党の終焉を告げることになり得る。

 国民党は、1996年の第1回目の総統選以来、制度化された予備選を必要とせず、実施もして来なかった。しかし、洪は透明な手続きで生まれた候補者であり、国民党が恣意的であるとの懸念を払拭する助けとなりうる。

 他方、洪を国民党の候補者として選ぶことは、党が置かれている苦境について多くを物語ることになる。彼女は、明らかに党のファースト・チョイスではない。洪の選出は、馬英九と王金平・立法院長の溝は埋めがたく、馬英九は、王金平に取って代わられるリスクを冒すぐらいならば洪に党を代表させる、というところまで来たことを示唆する。

 洪が候補者になる可能性が出てきたのは、国民党の有力者たちが、困難な選挙戦と、それにおける敗北が自らの政治的キャリアにとり何を意味するかを見越して、出馬を見送った結果でもある。

 馬と王の内紛は、国民党内の未解決で根強い大陸派対本土派の問題を示唆する。洪の経歴は、党の強硬派の要求には適っているが、同時に、国民党を一般大衆から遠ざけることにもなる。

 予備選の初期段階から党の大物政治家が不在であることが、国民党を中華民国の守護者と信じ切っている洪を選ばせ、台湾中心の価値を唱える野党に強く対峙させようとしている。

 しかし、台湾の最近の政治的雰囲気を考えれば、洪が、中華民国は中国であるとの イデオロギーを強く信奉し、台湾独立の考えに強い敵意を抱いていることは、国民党にプラスになりそうもない。

 彼女は、国民党の立法院議員候補からの圧力を受け、妥協するかもしれない。

洪は、党と国家を彼女が「正しい道」と呼ぶものに導いていくのか、それとも、非現実的な民族統一主義に殆ど我慢がならなくなっている台湾社会から、国民党をますます疎外させることになるのか。時が経つにつれ判明しよう。

出典:‘Could Hung turn KMT around?’(Taipei Times, June 17, 2015)
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2015/06/17/2003620873

* * *

 民進党の立場に近い「台北タイムズ」の社説ですが、ここに指摘された論点は、今日、台湾人の多数の意見を代表するものと見られ、納得できる点が多く含まれています。

 国民党総統候補として、洪秀柱(立法院副議長、女性)という予想外の人物が急浮上してきましたが、今の情勢から見れば、洪がこのまま国民党総統候補に選ばれる可能性が極めて高いと言ってよいでしょう。そのことが台湾の政治に如何なる意味をもつかについて、社説は分析しています。

 一般に台湾内部で次期国民党総統候補と目されてきた有力者たち(朱・党主席、王・立法院議長、呉・副総統ら)はいずれも、困難な選挙戦と敗戦の結果直面するであろう政治的リスクを考慮して、選挙への出馬を躊躇したり、辞退しました。

 そのうち、王金平議長については、馬英九総統としては、これまでの同人との深い確執から、王を出馬させるぐらいなら洪を出馬させたいという思惑を持っているといいます。また、朱・党主席と洪の関係もギクシャクしていることは周知の事実です。このように、国民党内のリーダーシップや組織としての団結力は依然として低迷した状況にあります。

 政策面においては、洪秀柱は一般に中国と台湾の「統一」論者と見られており、中台間で和平協議を行うことに賛成したことがあります。ただし、洪自身は自らの対中国政策については、これまで十分に対外的に説明してこなかったので、近く考えをまとめるつもりであると述べています。

 洪秀柱が最終的に国民党の総統候補に選ばれた場合、今後の最大の課題は、「台湾人意識」が着実に高まりつつある今日の台湾で、如何にその民意を掴むことが出来るかでしょう。

 台湾の次期総統選挙は「女性同士の対決」になりそうですが、民進党の総統候補の蔡英文は先般の訪米を成功裏に終え、世論調査によれば、現在では一歩も二歩も洪をリードしています。

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