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安保法制の論点(その6、国際平和共同対処事態)

国際平和共同対処事態、これは重要影響事態が「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」であるのとの対比でして、「国際社会の平和及び安全に重要な影響を与える事態」です。その時に米軍等の後方支援が出来るようになるようにするものです。いわゆる恒久法と言われるものです。

 この法律は、我が国の防衛とはひとまず切り離すことができるものでして、いわば「世界平和」のための貢献と位置づけられるものです。

自衛官の服務宣誓である「私は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身をきたえ、技能をみがき、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行にあたり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。」との関係でも「世界平和」が読み込めない以上、一定の慎重さが求められると思っています。

  重要影響事態との違いは、誰がその事態を認定するかでして、重要影響事態では日本がそれを判断します。その一方で、国際平和共同対処事態では、国連決議がそれを認定します。

国連決議の中で「Determining that the situation in ●●(国名) constitutes a threat to international peace and security」という文言が前文に入ってくれば、それを「国際社会の平和及び安全に重要な影響を与える事態」と認定するということになっています。ここは全く議論されませんでしたが、とても大きな違いです。

 ここまで前提を述べた上で、法律に基づいて、どんな決議が入るのかということを見ていきたいと思います。基本的に赤嶺政賢議員の質疑で明らかになったものです。

 まず、次のいずれかの国際連合の総会又は安全保障理事会の決議が存在することが必要です。

① 国際社会の平和及び安全を脅かす事態に対処するための活動を行うことを決定し、要請し、勧告し、又は認める決議
② ①に掲げるもののほか、当該事態が平和に対する脅威又は平和の破壊であるとの認識を示すとともに、当該事態に関連して国際連合加盟国の取組を求める決議(赤嶺議員への答弁(→部分は緒方補足))
①の「決定する」→1999年に採択された安保理決議1244が、コソボ紛争の収束後、コソボにおいて、国連の傘下で国際的な文民、軍事プレゼンスが展開することを決定したケース。
→ これは武力行使ではありません。

 ①の「要請する」→2011年に採択された安保理決議1973が、加盟国に対して、リビアに対する武器禁輸措置を徹底するため、同国を出入りする船舶、航空機に対する検査を要請したケース。
→ これは武力行使を容認しています。また、ソマリア海賊対処やイラク特措法の根拠決議(決議1483)も入ります。

 ①の「勧告する」→1950年に採択された安保理決議83が、北朝鮮による韓国に対する武力攻撃に関し、国連加盟国がこれを撃退し、地域における国際の平和及び安全を回復するために必要な支援を韓国に供与することを勧告したケース。

①の「認める」→1990年に採択されました安保理決議678が、イラクによるクウェート侵攻に関し、関連安保理決議の実施及び平和の回復のために、加盟国に対して、武力の行使を含む必要なあらゆる措置をとることを認めたケース。
→これは武力行使を容認しています。

②:2001年9月11日、ニューヨーク、ワシントンDC、ペンシルバニアで発生したテロ攻撃について、安保理決議1368が、国際の平和及び安全に対する脅威であると認めるとし、国際社会に対してテロ行為を防止し抑止するための一層の努力を求めたケース
→個別的自衛権、集団的自衛権(NATO)の根拠となる規定です。

 ここまでで分かることは、安倍総理は、イラク戦争や湾岸戦争に戦闘目的では行かないと言っているけど、実際には「戦闘目的ではない後方支援」には行くということです。その是非については問いませんが、「イラク戦争や湾岸戦争には、その形態がどのようなものであれ行かない」という誤解を与えるような答弁をするのは宜しくないと思います。「戦闘目的では行かないけど、後方支援目的なら行くことがあり得る」と答弁すべきでした。

 あと、②はちょっと対象が漠然としすぎていますね。「当該事態に関連して国際連合加盟国の取組を求める」とは何を意味しているのかがよく分かりません。前文で「a threat to international peace and security」と書いてあれば、何でも引っ掛けることが出来そうです。もう一つ言えば、安保理ではなく、国連総会決議として①又は②としてどんなものがあるのかということも答弁がありませんでした。

 ただ、実はこの法律で最も議論されなくてはならないことは、単なる決議の明確化ではありません。それよりも、「では、これらの決議がある中で、どの活動に出ていくのか。」ということです。

 実は「a threat to international peace and security」という表現が入り、上記の①又は②に当てはまるものはかなり多いです。重複を含めれば、過去3年で60程度の決議があります。例えば、意外に思うかもしれませんが、安保理決議2177においては「エボラ出血熱の拡散」が「a threat to international peace and security」であると認定されています。法律上は、このエボラ出血熱の拡散に対応する諸外国の軍隊に対する後方支援も含まれ得ることになります。

 となると、法律上は該当し得る決議がたくさんある中で、どれに行くのかという指標が必要になります。最も重要なのはここです。そして、それを判断する根拠規定は「国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要」があることです。日本はどういう条件が揃ったら、国連決議に基づく活動に主体的かつ積極的に寄与するべく後方支援をするのかです。

 私はあれこれ考えた結果、「自衛官に死傷者が出そうなもの」、「活動の結果、殺傷される相手の数が多くなりそうなもの」は外した方がいいように思います。それが唯一の基準たり得るとは思いませんし、こういう事を言うと「一国平和主義か」との批判を浴びることも知っていますが、それでもあえて「国際社会の平和及び安全(いわゆる世界平和)」という自衛官の服務宣誓から読み込めない活動をする以上、そこは慎重たるべきだと思うわけです。

 国際平和共同対処事態を恒久法としてやることの意義を全否定するつもりもありません。平素から訓練をするためには恒久法があった方がいい、という理屈は分かります。だからこそ、「何に出ていくのか」というところは、国連決議が出れば行け行けドンドンであってはならないと思っています。

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