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安全か安心か

 愛知県の学校で、給食のパンが入っていた袋から生きたゴキブリが飛び出すということがあったそうである。給食センターによると、納入業者によって運ばれる段階から教室で開けられるまで、袋は密閉されておらず、侵入経路は不明であるという。(*1)

 子供たちはビックリしたことだろう。しばらくはパンを食べたくないという子供も出てくるかもしれない。とはいえ、いずれ忘れることだろうけど。
 念の為に言っておくと、そのゴキブリが袋の中にいたのか、袋の下辺りに潜んでいて袋を開けようとした時に飛び立ったのかすら、わかっていない。学校に納入されてからゴキブリが潜んだ可能性も否定できず、侵入経路は今後ともわからないだろう。
 今回は給食センター管理の給食でこうした問題が起きた。そうなると「自校方式の方がいいのではないか」という声が上がるかもしれない。最近では地産地消や食育重視の流れから、効率主義の給食センター制度を見直し、学校に調理室を設置するケースも出てきている。子供たちに近い場所で、顔の見える調理師が作ることで、安全安心が高まるという考え方もあるのだろう。(*2)

 食品製造は虫の混入との戦いであるとも言える。細かな差異はあるにしても、基本的には大規模に生産する工場であればあるほど、衛生レベルは上がると言っていい。大規模であればあるほど清掃は効率的に行えるようになり、従業員や人の出入りといった管理も細かく行えるようになる。
 しかし、規模が小さくなればなるほど、床面積に占める物量は増えて清掃は困難となり、外と中が接する機会も多くなる。最初の記事にもあるが、従業員が作業着を着たまま外にでる事ができるのは、比較的小規模な工場だ。更に小さな自校方式の調理場となると、ほぼ中規模店舗と同程度の衛生管理ということになろう。不特定多数のお客が入るわけではないから人の出入りは抑えられるが、基本的には虫がいると考えた方がいい。
 つまり、単純に安全性を考えるなら、できるだけ大規模な工場で食品を作り、それを学校に搬入することが確率論的には安全であるといえる。
 もちろんそれらは食品そのものの衛生管理においても同じである。
 大規模な工場であるほど、調理における温度管理は徹底できるようになり、常温での保存や、不完全な加熱による食中毒などの問題の発生可能性は低くなる。

 ただ、自校方式への回帰を見ても分かるように、安全と安心は別物だ。
 また、大阪市の給食問題でも見られるように、安全性が高いことが、そのままユーザーの満足につながらないということも多々ある。(*3)
 虫などの混入や、食中毒などの危険性を徹底的に排除するために、なるべく大規模に給食を作っていくのか、それともある程度の虫の混入や食中毒の危険を受け入れながらも、顔が見える給食を作っていくのか。
 そのことに対して、給食に関わる人、それは給食センターや自治体の担当者だけではなく、子供に給食を食べさせる親を含めて、すべての人たちが自覚しながら選択していく必要がある。
 安易に、両立できるという甘い考え方をしていては、いつかゴキブリよりももっと手ひどい形で子供たちを傷つけることになるだろう。

*1:給食袋からゴキブリ、そして飛んで行った 「巣を作っている可能性」専門家指摘(J-CASTニュース)
*2:給食は学校でつくる? 地産地消や食育考え見直しも(朝日新聞デジタル)
*3:大阪市給食を「これ餌やで」と中学生 橋下市長「日本の飽食時代を象徴」と激怒(J-CASTニュース)

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