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焦点:株急落で一段と色あせる「中国の夢」

[常州/温州(中国) 14日 ロイター] - 今年4月、上海株式市場の主要株価指数が心理的な節目である4000を突破。それから約1週間後、中国共産党機関紙の人民日報は社説のなかでこれを取り上げ、強気相場の始まりを意味するだけではないと論じた。

同紙の主張は、習近平国家主席が推進する国家の繁栄と安全保障を拡大する「中国の夢」が資本市場に反映され、長期的に「ばく大な」投資機会をもたらすことになるというものだった。

中国株式市場の大半を占める個人投資家から危機が全体に波及するリスクは差し当たり小さいとみられるものの、過去1カ月ほどの株式市場の混乱は少なからぬ人の夢を打ち砕いている。

中国政府は先に、同国経済の危険地帯となりかねない不動産ブームと不良債権増大に対処すべく策を講じ、危機を回避しようとしてきた。大規模刺激策主導から消費主導へと成長のギアをシフトさせなければならない中国政府にとって、株価急落は痛手でしかない。

上海から450キロ南に位置する温州にある医療機器会社の管理職、Zhou Sujuanさん(44)は、株価急落で200万人民元(約4000万円)の損失を出した。

「大きな心痛だ。回復するのにある程度時間がかかるだろう」とZhouさんは話す。

習主席が描く将来のビジョンは、数百万人足らずの投資家をはるかに超えるものであり、人口約13億人の中国が安定を維持する鍵となる。

政府が相次ぎ政策を講じたことで、少なくとも今のところ株式市場は落ち着きを取り戻している。

しかし、さまざまな経歴を持つ一般市民への取材から見えてくるのは、政府が約束を果たすことの難しさだ。最近のデータがその課題の大きさを物語っている。

<永遠のダメージ>

中国政府が株価急落に歯止めをかけようと講じた一連の措置は、国内需要主導のオープンかつダイナミックな経済への改革に対する中国共産党の「真剣度」に疑問を呈するものだった。

中国政治経済学が専門の米カリフォルニア大学サンディエゴ校のビクター・シー准教授は「大規模な国家介入、特に大量保有株主の売却停止や空売りの捜査は、根底から、そして永久に金融セクター改革を傷つけた」と指摘した。

新規株式公開(IPO)の停止も、中国経済を将来けん引するかもしれない民間企業の資金調達オプションを閉ざすことを意味する。

Ren Zhengmingさん(54)もそのような会社を経営する1人だ。Renさんは、上海から高速鉄道で約1時間のところにある常州で、車などに使われる金属部品を製造する会社を営んでいる。

中国製造業のご多分に漏れず、Renさんも右肩上がりのコスト上昇や輸出の鈍化、内需の伸び低迷を実感してきたという。従業員の数は数年前の約200人から100人程度に減り、利益率も5年前の約25%から落ち込んでいるという。

小規模製造メーカーの多くは人民元高で輸出が打撃を受け、人件費などのコスト上昇で利益が圧迫されて競争力を失っている。Renさんのケースもその典型的な例だと言える。

<外資も危機感>

在上海米国商工会議所が3月に実施した調査によると、中国経済に対する楽観的見方は著しく後退。在中国欧州連合(EU)商工会議所も6月、中国の経済成長の伸び鈍化と改革の遅れを受け、一部企業が解雇(レイオフ)を検討していると明らかにした。

銅や原油といったコモディティー価格は下落しているが、その原因の1つには中国需要の減退が挙げられる。

Renさんは会社の将来を義理の息子にまかせるとし、「私たちにできることは、若い世代のために土台をつくることだ」と話す。

しかし、中国の若者の多くは就職に苦労している。今年の大卒者は前年比22万人増の749万人で過去最高を記録。遼寧省大連市にある東北財経大学出身のHu Xiaoさんもその1人。Huさんは150以上の職に応募したが、まだ仕事が決まっていないという。新華社は、今年の就職活動は「かつてないほど厳しいものの1つ」だと伝えている。

<サービス業は好調か>

一方、上海のIT起業家であるXiao Pengさんは楽観的な見方をしている。Xiaoさんは中国人の消費者行動の急速な変化に乗じて、週末の活動を奨励するアプリを開発した。

「過去10年間、中国人の週末の過ごし方と言えば、麻雀をしたりテレビを見たり、レストランに行くぐらいだったが、若い世代は経験することにもっとお金を使いたがっている」とXiaoさんは話す。

Xiaoさんの会社は2年足らずで従業員数120人規模に成長。中国では向こう15年で4億人が都市部に移動すると見込まれており、Xiaoさんは「政府は経済を活性化するため消費を促している。かなり楽観的に見ている」と述べた。

とはいうものの、消費者の慎重さを示す例もある。Zhang Yingyiさん(30)は上海でフルタイムの事務職をしながら、3歳の娘を育てる母親だ。同国で増えつつある共働き中流層に属し、250万元で買ったマンションに住み、最近メルセデス・ベンツB180を購入した。

マンションと車のローンが重くのしかかり、上海の高い生活費が家計を圧迫しているというZhangさんは、家族が服を新調することはほとんどないと話した。

<不動産と債務が重荷>

バブル抑制へ政府が打ち出した規制強化策が功を奏し、中国の不動産市場はこの2年ほど落ち着きを見せている。販売は減速し、新規着工件数も急減、銀行はデベロッパーや住宅購入者への融資に慎重になっている。今月発表された2つの調査によると、6月の住宅価格は2カ月連続で下落した。

不動産市場の減速はデベロッパーだけでなく、家電から鉄鋼メーカーまで他の業界にも影響を与えている。一部のエコノミストは、住宅および住宅関連部門が国内総生産(GDP)に占める割合は約3割と推計している。

不動産市況が好転し始めた兆しもある。皮肉なことに、株式市場の乱高下が、投資家を不動産に向かわせる可能性がある。

不動産のほか、債務も成長の足かせとなっている。新発債の発行を地方政府に認め、これを債務と交換する計画を今年打ち出したことで、地方発の債務危機が発生するとの懸念は大いに後退した。ただ、滞納金が依然として投資を抑制している。

<希望の光も>

株価は急落したが、中国経済の「アルマゲドン」を予想する人はほとんどいない。

年間成長率は比較的緩やかである一方、10兆ドル規模である現在の中国経済は、1990年に成長の伸びが鈍化した時と比べて数倍にも膨らんだ。2015年第1・四半期の中国の経常黒字は756億ドルに上り、外貨準備高は3兆ドルを超える。

これまでのところ、中国政府は自国経済の変化について楽観的な見方を変えていない。指導部に近い関係筋はロイターに対し、政権幹部は株式市場の問題を危機とはみなしていないと語った。

しかし、株価急落をめぐる政府の対応について、国内の一部では公然と批判する声が出ており、共産党の経済運営にも珍しく不満があがっている。

前述のZhouさんは、娘を良い学校に行かせるため、引越し先で家を購入する希望を持っていた。しかし、株価急落でその夢は待たなくてはならなくなった。自分自身が欲深かったことを認める一方、Zhouさんは市場を強引に操作する官製相場を非難。「政府は理不尽だ。永遠に計画市場、計画経済のままだ」と語った。

(John Ruwitch記者、Brenda Goh記者、翻訳:伊藤典子、編集:宮井伸明)

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