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琉球新報主宰「琉球フォーラム」での講演(前編)

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そこまで立法府の威信が下がっている。

国会蔑視は審議時間数によって国会の機能を測定するという態度だけではありません。もうひとつはいろいろなメディアが垂れ流している、国会議員の議場内におけるふるまいですね。審議中に居眠りしていたり、スマホを見ていたり、本を読んでいたり、あるいは立ち上がって出歩いていたりしている。そういうことをメディアが皮肉な調子で報道している。メディアコントロールに対してあれほど神経質な官邸も、なぜか国会議事堂内部での国会議員たちの明らかな任務放棄に関しては何のコメントもしない。メディアに国会の威信を損なうような報道は控えてくれという要望も出していない。

たぶん、内心では国会議員がいかに仕事をしていないか、いかに国会審議というものが形骸化しているのか、それをアピールすることは行政府にとっては好都合なことだと思っている。だって、ああいう写真を見れば、有権者はどう思うでしょう。「なんだ、国会議員て、ぜんぜん仕事してないじゃないか。こんなやつらに高い給料払うことないよ。議員定数だって多すぎる、もっと数を減らした方がいい。」そういう印象を持つに決まっている。そういう反応は行政府にとってはむしろ「ありがたい」。

国会の委員会でも、最近の質問者はすぐフリップを出しますね。TVカメラに向かってマンガみたいなものを出してきて説明する。テレビ中継の時にフリップを出すというのは、あれもいったいいつ頃からなのか。せいぜいこの10年くらいのことだと思います。僕は子どもの頃、国会中継の場面で、あんなものを見たことがないです。ある時点から国会中継がテレビ向けの政治ショーみたいな感じになった。でも、それを見て、「国民に分かりやすく説明してくれてありがたいな」と思うの人と、何か愚弄されているような気になる人とどちらが多いのでしょう。僕はあんなマンガのようなものを見せて法案を説明されると、バカにされたような気になります。

国会では国会議員たちが全国民を代表して、その知恵を絞り、情理を尽くして法案の適否について、憲法に照らして、あるいは法律との整合性に照らして、国際社会の常識に照らして、徹底的な議論をしているというふうに国民はもう思っていない。国会審議はただの儀礼である、アリバイ作りである、そういうふうにみんな思うようになってしまった。

でも、それは意図的にそういうふうな仕組みに持っていってことの結果ではなかと僕は思います。この20年で立法者の威信は急激に低下した。国会だけじゃなくて、地方議会もそうです。

僕は兵庫県民ですけれど、先般の統一地方選挙の前に、地元紙の記者が取材に来ました。「今回の地方選挙どう思いますか」という取材だったんですけれど、僕は県議会のことも市議会のことも、どんな活動をしているのか、ほとんど何も知らなかった。新聞ではほとんど何も報道されないですから。だから訊いてみました。いった議会は何をしているのか、どういうことが今地方議会での争点なのか。すると地方議会、とくに県議会はほとんど機能していないのだと教えてくれました。

ご存知かもしれませんけれども、兵庫県議の「号泣議員」という人が政務調査費を使い込んだ事件が大きく報道されました。そのあと、芋づる式に他の議員たちも政務調査費で家族と温泉旅行に行きましたとか言ってお金を返済するということがありました。「何で、こんなにモラルが低いんでしょうか」と尋ねたら、記者の答えは「仕事がないからじゃないですか」というものでした。

過去20年間で、兵庫県の県議会で議員が提案した条例が2つしかないそうです。

あとはすべて県庁から降りてくる条例。議会ではほとんど修正もしないそうです。

号泣議員は一年間だけで195回日帰り出張をしたということで政務調査費を使い込んでいましたけれど、一年の半分以上が「自由時間」であり、その期間に何をしているのかをチェックする仕組みがなかったということに僕は驚きました。だったら、県議会なんかあってもなくても同じじゃないですか。県民はそう思いますよ。

でも、これはわざとそういうふうにシステムを作り込んでいるんだと思います。立法府が機能しないような仕組みを政治家たちと官僚たちが作っている。

ひとつは候補者の選定ですね。これはもういろいろな人が指摘していますけれども、候補者は執行部が選ぶ。今はなんでも党議拘束されますから、とにかく政党執行部の指示通りに起立する議員の頭数が欲しい。それ以上に独自の政治的見識があったり、妙に選挙民に人気があったりする議員は要らない。

だから、そこそこ弁が立って、そこそこルックスが良くて、そこそこの学歴で、上に逆らわないようなイエスマンたちが優先的に政党の候補者として選択されてゆく。個々の人物がどれほどの器量か、どういう見識を持っているのかというようなことは政党にとってはもう「どうでもいい」ことなんです。ただの起立ロボット、選挙のときの集票マシンとして使い勝手がいい人間だけが登用される。その結果、地方議会も国会もこんなざまになってしまった。

立法府の威信低下によって相対的に行政府の威信がどんどん上がっている。結果的に、国会で定めた法律よりも閣議決定の方が上位に来るという逆転が今起きています。閣議決定に合わせて法律が作られ、閣議決定に合わせて憲法が解釈される。そういうことをもう大臣たちが国会答弁で平然と口にするようになった。国権の最高機関は内閣であり、さらに言えば官邸という密室であるということを、もうみんなが認めるようになった。

ですから、今、明らかに違憲とされている法律が国会を通ろうとしている。これは行政府が横暴であるという以上に、立法府の威信や権限が低下したことを意味していると思います。全国民を代表して国事を議するはずの人たちに、われわれはもう信を託せなくなっている。この状況は非常に深刻だという気がします。

これは一朝一夕で作り込まれた状況ではありません。だから、これからいったいこれを立法府の威信と良識を回復していくのか、それが問われなければならない。

これに関しては地方から立法府の威信回復の運動が起きているように僕には見えます。沖縄もそうでしたが、地方の議会選挙や知事選挙では、あちこちで中央の指示に逆らう人たちが出て来て、当選している。

大阪の都構想の住民投票でも、最終的には自民・公明・共産・民主の4政党が維新の「大阪都」構想に反対するという形で足並み揃えました。官邸は維新に対するあからさまな支持を示しましたけれど、大阪の自民党府連はそれに逆らった。同一政党で、地方と国の間でこれほど政策的に対立したことは、これまでにはなかった。

行政府があまりに強大化したことによって国会の威信が低下したところまでは行政府の狙い通りだったのでしょうけれど、国会審議が形骸化していることに苛立った有権者が、地方の政治に期待を託すようになったとすれば、これは官邸の読み違えでしょう。

そもそもいま審議されている安保法制とは何か、ということを次に論じてみたいと思います。

この法案についてはどの世論調査でも、過半数が反対している。にもかかわらず最近でも内閣支持率は50%を超えている。

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