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琉球新報主宰「琉球フォーラム」での講演(前編)

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閣議というのは政府案を詰めて議論する場ではなく、ただ官邸が持ってきた法案を黙って承認するだけの儀礼的な場になってしまっている。

国会もそうです。最大の問題は、日本ではすでに三権分立が事実上成立していないということです。立法府の威信が際立って低下している。

今、安保法制で問題になっていることのひとつに「審議時間が短い」ということがあります。昨日の毎日新聞にも取り上げられていました。過去の重要法案のときはどれくらい時間をかけて審議したのか、その表が掲げてありました。イラク特措法のときは何十時間かけたか、PKO法のときはどうだったかと安全保障関連の重大な法案審議にどれぐらいこれまで時間をかけたかということがリストになって、今回はまだこれだけの時間しか審議していないという理屈で審議の不十分さを批判していた。僕はその論調を見て、ちょっと衝撃を受けました。重要法案の審議が十分であったかどうか、その指標が「審議時間」だけということに驚いたのです。

法案の審議には最低でも何時間までという下限が決まっていて、そのミニマムをクリアすれば「充分に審議を尽くした」という言い分が通るということを、新聞自身が認めてしまっている。安保法制に批判的な記事を書いている記者自身がそう思っている。

国会の審議というものは時間数でカウントするものじゃない。そこで何が審議されたのか、審議の内容、審議の質こそが問われるべきです。どこまで問題を掘り下げたのか、どこまで問題の本質が明らかになったのか、どこまで広い射程で法案の適否を吟味したのか、それが問われるべきなのに、政府も議員もメディアも、「何時間審議したのか?」という時間数にこだわっている。バイトじゃないんですから、タイムカードを押すみたいに「何時間審議したからもう十分」というようなことが言えるはずがない。でも、実際には政府がストップウオッチで審議時間をカウントしていて、「ミニマム」を超えたら、「十分に審議した」ということにして、採決を強行しようとしている。

国会の審議が十分なのか不十分なのかを審議時間数で決定するという習慣はいったいいつからのものなのか、少なくとも1970年代、80年代までは、国会の審議の時間数を新聞が報道して、「あと何時間くらい審議すれば十分」というようなアナウンスをしたことはない。僕自身はそんな記事を見た記憶はありません。

でも、今は国会がその機能を果たしているかどうかを、その内容によってではなく、審議時間に基づいて判断するような習慣が定着した。

これは他の面でもそうなんですけれども、今の日本人はもう数値化されたものでしかものごとの価値を判断できなくなっている。ものごとの質を問うということができなくなっている。これこそ現代日本の社会全体を覆い尽くしている知的頽廃の際立った兆候だと思います。国会審議の時間数で法案の精査がなされたかどうかを判断しているような立法府が他の国の議会でもあるのか。

立法府の威信はそこまで低下している。立法府で全国民を代表する選良たちこが議論して、衆知を集めて日本にとって最適な政策が何であるかを決定してくれるだろうという期待をもう日本人は持っていません。今の小学生に、「国権の最高機関はどこですか?」という質問をしたら、ほとんどの子どもは「内閣」と答えると思います。国会が国権の最高機関だと思っている小学生はもうほとんどいないお思います。塾で受験勉強している子ども達は知っているかもしれませんが、ふつうの子どもたちは、それこそ大学生だって答えられないんじゃないですか。

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