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自滅する地方 沼津・三島・伊豆編

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少しハッパを掛けられましたので、宿題だった自滅する地方についてエントリーを上げます。

さて、今回取り上げるのは、静岡県東部の諸都市です。

沼津市は県東部で最大の市でありまして、人口20万人。県東部の商業中心(だそう)です。ただ、この数十年の間に、お馴染みの中心市街地の空洞化(と郊外化)が進展しました。そして、現在、沼津市に持ち上がっている問題でターニングポイントになりそうなのが、沼津駅周辺高架事業であります。

沼津駅は東海道線だけでなく、御殿場線の発着駅でもありまして、そのため駅周辺はJRの広大な所有地になっています。この部分を整理して路線の高架事業を進め、貨物駅の一部移転を行なおうというのが、沼津の政財界の長年の夢でした。現在、高架事業は、移転先として候補に挙げられた片浜地区住民の反対によって宙に浮いた状態です。それでも、ジリジリと着実に高架事業計画は進められ、おそらくは数年内に実施されるでしょう。

ですが、私自身は高架事業に賛成できないのです。そのわけを説明していきましょう。

ちょっと、写真をご覧ください。

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これは、東名高速道路の沼津IC近くの取り付け道路、通称グルメ街道です。沼津は伊豆への玄関口でもありますから、その観光客を当て込んでの飲食店が並び、そのためにグルメ街道と呼ばれているのですが、現在は、どこにでもある“ファスト風土”でしかありません。チェーン店と大型店舗、そして、夥しい廃墟。地方を巡れば大体見られる姿です。この先、国道246号が御殿場を経て神奈川まで通じていますが、こちらも同様に典型的なロードサイドです。つまり、伊豆への観光を促進する目的で246号や高速道路の取付け道路、そして伊豆縦貫道(現在も延伸中)が造られ、その周囲が郊外住宅地(三島・長泉町を含めて)に変わっていった結果、こうした風景となったのでした。

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このため、とりわけ沼津駅北側の市中心部の衰退は激しいものです。国道1号から駅北口へ伸びる道の風景が

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です。やはり、ロードサイド的な風景になっています。

沼津市は(沼津市に限らないが)、問題の本質を理解しないまま、中心市街地活性化事業を行ないます。つまり、ここで何度も取り上げている事業、区画整理事業、道路拡張、大規模公共施設建設、の三つです。道路に関しては示した通り、駅前から延びる道を「拡幅」した結果、郊外の商業施設へ人が見事に吸い出されました*1。区画整理事業は、のっぺりとした地域性の欠片もない区画を生み出し、

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地域店舗は衰退しました。そして、お約束の大規模公共施設、「BIVI」「プラサヴェルデ」は慢性的に支援が必要な施設、つまり、お荷物になりつつあります*2。入居している店舗も活気がありません。大規模な駐車場を備え、「自動車での利用が便利」な事をアピールしていますが

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わざわざ込み合う駅前に来て立体駐車場を使わなくても、郊外部なら平地の駐車場を備えた商業施設は幾らもあります。なぜ、同じような失敗を全国で繰返すのか理解に苦しみます。

調べる前には知りませんでしたが、沼津駅周辺は歓楽街として知られていたそうですね。“そうですね”というのは、区画整理事業によって猥雑な街は姿を消し、がらんどうになっているからです。また、素晴らしいカクテルを出すお店も多数あったそうですが、現在、どの程度残っているのか判りません。街の特徴でもあるバー文化も消されようとしている、ということでしょう。

リンク先を見る 東海道居酒屋五十三次 (小学館文庫)

さて、高架化されていない為に駅北と連絡の悪い駅南ですが、こちらは駅北と少しだけ様相が違います。確かに、駅南から三島駅へ向かう道沿いや港への通りなど拡張が進められ、区画整理事業が行なわれた結果、郊外化とそれに伴う中心市街地の衰退が進んでいます。沼津市は駅南にも複合商業施設 を造りました。

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それでも駅北よりは多少ましな様相です。それに、西武が撤退しましたが

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(右手が西武 この後、改築された)これも、多少ましと言えるかもしれません。そして、駅前の商店街は衰退が続いているとはいえ、駅北の様相よりだいぶましです

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このような違いは何によるのか。

私は、沼津駅南北間の自動車交通が不便なために、駅南側の住民が郊外の大規模商業施設へ流出するのを幾分か抑えられているためではないか、と考えます。

沼津駅周辺で自動車による南北通行は、ほぼ3箇所、その地下通路はいずれも慢性的に混み合っています。

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もし、高架事業が行なわれたらどのように沼津駅周辺は様相を変えるでしょうか?おそらくは、駅南北通路が拡張され「自動車交通」が便利になることにより、駅周辺で“仕方無しに”買い物をしていた人々は、沼津・三島・箱根山麓の大規模商業施設へ流出することになるでしょう。

もちろん、高架事業を進める側はそのような事を言ったりはしません。

「駅南北の交通の便がよくなれば、市中心部へ流入する車が増えて商業機会が増大する」

このように主張するでしょう。

しかし、今まで静岡県内(に限らないが)で見てきたように、道路新設・拡幅・延伸による自動車の利便性向上は誘発交通を生み、郊外へ商業機会を奪います。

多額の資金を投入して、請け合ったのと逆の効果を生む、これを「自滅」と呼ばずして何と呼びましょう。

ですので、私としては、沼津駅周辺高架事業に賛成する気にはなれません。これは、全国の鉄道高架事業全てに言える事です。


どうするべきか、といえば、発想を変えることです。

駅南北を行き来するには自動車が不便であることは言うまでもありませんが、歩行者や自転車にとっても行き来しにくい場所な事が問題です。

ですから、歩行者・自転車だけが南北に自由往来が可能になるようにする。つまり、南北自由通路の建設が一番適している、と考えます。ゆるいスロープを持ち、人車分離された広い自由通路、高架でも地下でも構いません。このような通路をつくれば、駅南北間の移動には、自動車よりも徒歩・自転車、および公共交通機関利用の方が便利になります。そうなれば、駅周辺にもそれなりに人が集まってくるでしょう。もちろん、併せて商店街の魅力を生む努力も必要となるでしょうけど。いずれにせよ、高架化よりはるかにコストも安く、そして効果が大きいことは保証します。


三島も同じ事です。

三島市も駅近くは、やや込み合った魅力ある街です。駅の目の前に江戸時代から存在する庭園「楽寿園」があり、NPO活動によって水辺を散策する楽しみがある街になっています。小さな鉄道「伊豆箱根鉄道」も走っています*3。しかし、三島自体も、中心市街は空洞化が進み、郊外へ拡散する事態に陥っています。大きく流出が進む先が、究極の郊外、長泉町*4だったりします。同じ郊外化、で競えば、より“田舎の”地域には勝てませんから、三島市の政策は的外れと言えるでしょう。

三島では首都圏へ新幹線で通勤する住民が結構います。東京都下より土地や物価が安いのに、通勤時間はあまり変わらない。その利点のため、ベッドタウン化した面がありますが、その結果、首都圏に通勤する住民の意識は東京を向いたままです。ですから、市の抱える問題に無関心、という部分もあるのかもしれません。

さて、都市を維持できなくなってきている例が、裾野市、御殿場市や小山町です。どちらも、どこかに集約ポイントを定めるべきでしたが、拡散させるだけ拡散させた結果、人口流出が酷くなっています。

どこの自治体も郊外進出のために区画整理事業をやりたがりますが、街中の魅力を損ない、郊外拡散へ繋がるリスクについてもっと考慮されるべきだと思いますね。


続いて、さらにひどい事例を上げます。

伊豆です。

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