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「国立競技場」なる複合観光施設開発の失敗について

国立競技場問題を象徴するtweetが廻ってきましたので、ご紹介いたします。


国立競技場に関しては、他のスタジアムと比較して「●倍の開発費」なんて批判が定番のものとして語られていますが、そもそも最大収容8万人という同じ規模のスタジアム開発にも関わらず、何で延床面積がロンドンの3倍あるんだ?って話ですよ(問題発覚後、2倍強に計画修正された)。これは先のエントリにも書きましたが、このその他の開発面積が何に使われているかというと「ホスピタリティ機能/スポーツ振興機能」などと称して以下のようなものが作られているのですよ。

89室の個室を含むVIPエリア、VIP専用のメディカルルーム、会員用ラウンジ、VIP用レストランとキッチン、スポーツ博物館、スポーツ体験エリア、図書館、多目的ホール、会議室、フィットネスジム、一般用の物販エリア、一般用の飲食エリア 等々

さらにこれに加えて、本来は競技場として開発される施設を、音楽アリーナとして転用するために必要となる開閉天井と、その可動設備を支えるために必要となる構造物(キールアーチ)を含め、しめて総開発費用2,500億円。言ってしまえば、この施設を「競技場」などと称している事自体が大きな勘違いの始まりで、実態としてこれはもう単純な競技施設を超えた、複合観光施設なんですよ。

国立競技場問題というのは、文科省傘下の独立行政法人である日本スポーツ振興センター(JSC)がオリンピックにかこつけて複合観光施設の開発計画を企てたものの、開発に入る以前に様々な問題が露呈して、大騒ぎになってますというお話
なんです。

ところが、ご承知の通りフタを開けてみればそもそもの予算を大幅に超過をしてしまっているワケで、その穴を埋めるためにどうしますか?といったら、そこにスポーツ振興くじ(通称:totoくじ)による収益金、すなわち賭博で獲得した資金をぶっこみます、と。

…って、ここまでの説明を聞くと、皆さんは「それじゃ、お前の専門とするカジノと一緒じゃねぇか!」と思うかもしれませんが、全然違いますよ。今、我が国で検討されているカジノ合法化と統合型リゾート開発計画と、こんなイカサマな複合観光施設開発スキームなんかを一緒にしないでくださいね。この事業が、現在我が国のカジノ合法化スキームと大きく違うのは、以下の二点です。

1)統合型リゾートはあくまで民間資本によって開発される

現在国会に提出されている我が国の統合型リゾート導入を推進するIR推進法案では、「(統合型リゾートは)民間事業者が設置及び運営をする」とされる明確な規定があり、これはあくまで民間投資による施設開発です。それに対して、国立競技場は文字通り「国立」のものであって、国費として約400億円の投入がなされ、現在さらに国が東京都に対して500億円の拠出を求めています。この施設は、公共事業として開発される複合観光施設何です。

2)我が国のカジノ合法化と統合型リゾート導入は公財源を「作る」ための施策

我が国のカジノ合法化と統合型リゾートの導入を推進するIR推進法案は、国や地方自治体の為の財政的な貢献を目的の一つとしています。具体的には、統合型リゾート施設内に設置されるカジノによって得られた収益の中から国、および自治体に対して「納付金」が収められ、それらを公益事業へと拠出することを定めています。

一方、国立競技場はtoto事業という国立競技場そのものとは独立した別事業から得られた収益金を、その開発費の不足分として充当するスキームになっています。具体的には、国および東京都が拠出する900億円、およびこれから寄付や命名権の売却等で獲得するとしている最大200億円、さらにこれまで積み立てて来たスポーツ振興基金の取り崩し分の125億円以外の部分、最大でおよそ1300億円分がtotoの事業収益から充当されます。

1300億円というと、平成14年のtoto事業の開始からおよそ十余年にわたって事業が生み出してきた収益の累計額(含む国庫納付金)とほぼ同額。それら収益が今回の国立競技場問題の尻拭いの為に全額すっ飛ぶワケで、今回の新国立競技場というのは本来はその他の公益事業に使われるはずだった賭博(totoくじ)による収益を喰ってしまっている存在であって、公財源を「作る」ための統合型リゾート施設とは真逆の性質をもっている開発であります。

これを図解すると以下のようになります。

リンク先を見る

要は簡単に言ってしまえば統合型リゾートが

●民間投資の誘因によって複合観光施設の開発を行い、そこから得られる賭博事業(カジノ)収益で公財源を生む

ことを目的としたものであるのに対して、今回の新国立競技場の建て替えは、

●税投入によって複合観光施設の開発を行い、その不足分を賭博事業(totoくじ)収益で補填する

という開発スキームであり、概念として全く真逆の施設となっているワケです。正直、コッチ側の専門の立場で必死こいて導入論議をしている人間の立場からすれば、今回の国立競技場問題は「フザケンナ」以外の感想はないワケで、今後の我が国の公営競技および富くじ事業の在り方をもう一度問い直す必要性も出てくる衝撃的な事件だと考えておるところです。

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