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ひきこもりは「幽霊」となって人を支える

■ひきこもりはゴースト

幽霊とは、バラエティ番組等で出てくるあの紋切り型のオイワサンではなく、我々の日常生活を影からそっと支える「他者」である。

あるいは、我々の日常からは次々と去っていく人々が我々のコミュニケーションには大量に存在し、それは親きょうだいや友人から仕事で一瞬出会った人々まで幅広いが、そのすべては「幽霊」となって、「ゴースト」ととなって、我々の日常を分厚くしている。

幽霊というと、この世界に何らかの未練を持ったまま無念のうちに死んでいき、その無念の力でこの世界に残っている人々を恨み続ける存在と思いがちだが、それは狭い見方であって、次から次と我々と出会って我々の世界から過ぎ去っていく、ある程度の質量を持ちそれなりに存在感のある存在の残り香、というふうに位置づけると親近感のわく言葉だ。

「ひきこもり」は、そういう意味で幽霊だと、ゴーストだと、僕は思っている。

ひきこもる理由はその人なりに多々あるものの、取り残された人々からすると、過去に過ぎ去った存在、「そんなやつもいたなあ」という存在、けれども妙に気になる存在だ。

■ひきこもりは「沈殿」して記憶される

ひきこもっている当事者からすると、まわりの人々はそんなふうに自分を記憶しているとはとても思えない。自分はひきこもり、社会からとっくに忘れ去られた存在、死んでも誰も悲しまない存在だと自分を位置づけているが、その「ひきこもり幽霊」の周辺の人々は、ずっとその人を覚えている。ありありとは覚えておらず一見忘却するかもしれないが、周辺の人々の意識のどこかに、たとえばフロイトのこの図のようにして「沈殿」する。

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この図は『ヒステリー研究』(フロイト)をベースに僕が書きなぐったものだが、図中一番下の青い記号類が忘れ去られたようで人々の記憶に残る「幽霊」だ。

哲学的にはこれを「他者」といってもいいし、今回の原稿的には「ひきこもり」といってもいいと思う。

ポイントは、無意識のうちにこうして「他者」が積み重なっていって初めて、我々は「記憶」を獲得することができるということだ。

他者なしで我々の記憶は形成できず、そうした記憶があって初めて、我々はヒトになることができる。ひきこもる人が意識しようがしまいが、そのようにして周辺から消えていく人々がいて初めて、人は「自分」になることができる。

■ひきこもって人を支える

ひきこもり者は、無意識的に、我々の周辺から消えていく「他者」の代表者となっている。言い換えると、ひきこもるという行為自体で、逆説的にその存在を人々に伝え、「人々の周辺から消えていく人々代表」として、消えていない人々を根源的に支えている(根源的とは「条件として」という意味)。

僕は、そうした点で、ひきこもりという行為には意味があると思っている。

ひきこもって自立できないことを悩むのも悪くないが、ひきこもることで、あるいはその「非存在」で、存在する人々を結果として意味づける。

このようなメカニズムは、ひきこもり当事者やその保護者にとってはほとんど意味のない論考だろう。臨床心理士やキャリアカウンセラー、あるいは精神保健福祉士や精神科医にも上の議論ほ観念の世界としてほとんど関係のない議論かもしれない。

が、そのひきこもり当事者が発達障がいだろうが精神障がいだろうが、その存在自体には上のような意味があることを僕は知っておいてほしい。

だから、無理して出る必要はない。人とコミュニケーションをとる必要はないが、寂しさや貧困等でそうも言ってられない時は、その人なりに出てくればいいと僕は思う。そして、互いに互いを支えていってほしい。

その時、「支援者」は別に必要なく、「ピア(仲間)」の力で当事者たちは支えあうことができると思う。支援者は実は「場」づくり(居場所やデイケア等)に尽力する程度でよく、精神的しんどさの支援は、今ほどの支援者の数は必要ないと僕は思う(極論、最小限の精神科医とソーシャルワーカーと看護師だけで十分だ)。

経済的に余裕のあるかぎり、堂々と「ピアサポート」すればいい。それが、階層社会のなかでラッキーにもひきこもることができ、結果としてその非存在で人々を支え続けている「ひきこもり者」の特権だから。★

※Yahoo!ニュースからの転載

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