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安保法制法案が今国会で通らないと考える理由―片山虎之助(維新の党総務会長)【後編】 - 塩田潮の「キーマンに聞く」【13】

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東京への意思決定権限集中と地方の衰退

【塩田潮】片山さんはもともと大学卒業後、なぜ自治庁(自治省の前身)に。

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片山虎之助氏(参議院議員・維新の党総務会長兼参議院議員会長)

【片山(維新の党総務会長・参議院議員会長)】役人は嫌ではなかった。キャリアの役人はみんな優秀で、複雑な日本の仕組みを実質的に動かしていると思っていましたから、役人になってもいいなと、選択肢の中にありました。大学で就職シーズンになると、各省庁から採用のために説明にきますが、自治庁は、入れば何年で県庁の課長になって、若いときから思い切って仕事ができるとか、うまいことを言う(笑)。それに引っかかって自治省に入りました。

【塩田】実際に中央省庁に入って、日本の官僚組織について、どう実感しましたか。

【片山】優秀ですよ。だけど、少し思い上がっているところがあります。権力の中にいるから、情報もありますけれども、生きた情報がないね。政治家と違って、選挙はない。庶民とは距離があります。役人になってみて、本当に日本を動かしているのは政治家とわかりました。役人も動かしていますが、動かし方が違います。

自治省は旧内務省の主流という強い誇りがあります。戦前、内務省は地方を牛耳っていました。戦後は地方にカネを配ってきました。地方財政は実際は国の財政より大きいんですよ。国は予算のうち、実際に使うカネは35%くらいですが、地方は国から流れてくる補助金や地方交付税も含めて予算の65%も使っています。今、国民生活や地方経済に流れている公のカネは、地方分がずっと多い。一般の人はそれがわからないけど、橋下徹さんは地方自治から入ったから、そこがわかっています。

【塩田】国と地方の関係については、地方分権や地域主権を唱える声があります。最近は人口減社会の到来で地方消滅論まで出ています。地方の活性化には何が必要ですか。

【片山】中央政府の力を弱くして、カネも地方中心にする。それには、現在の47都道府県では、一つ一つの府県が小さすぎます。11くらいのブロックの道州にする。地方の衰退は、東京に意思決定権限が集中しているからです。権限が集中しているから、人もカネもモノも情報も集まり、より強くなり肥大化します。このままでは地方は衰退してしまう。大阪なんか元に比べると衰退しています。昔は東京の半分くらいの力があると言ったけど、今は4分の1くらいでしょう。ただ、道州制はメリットがまだ国民にわからない。メリットをきちんと提示しなければ……。

【塩田】自治官僚の後、なぜ政治家に。

【片山】県庁や中央省庁で課長や部長をやり、岡山県の副知事をやっていましたから、知事選に出ろという話になりました。そのつもりでしたが、その前にちょっと参議院議員になって待機してくれと言われまして参議院議員になった。竹下派にというのが、岡山県選出の私の前任議員の木村睦男さん(元参議院議長)の願いでしたから、私も竹下派に入りました。

【塩田】2007年の参院選で落選しましたね。

【片山】第1次安倍内閣のとき、参議院自民党幹事長として参院選の指揮を執りましたが、惨敗した。私自身も例の「姫の虎退治」(岡山選挙区で民主党の姫井由美子候補に敗れて落選)でやられました。あのときは竹下派の候補は選挙区で全員、落選したんです。

もちろんもう一回国会にと思いました。次の参院選では、岡山県選挙区に別の候補がいましたから、比例区に回りました。ところが、年齢制限に引っかかった。特例でということに一度決まりましたが、いろいろ邪魔が入ってうまくいかない。このままでは時間切れで立候補できなくなると思い、自民党に離党届を出しました。「たちあがれ日本」の平沼赳夫さんや与謝野馨さん(元財務相)の勧めもいただき、告示の直前にたちあがれの公認で出馬しました。それでうまく当選できました。

本当のことを言わなければ国民はわからない

【塩田】2度目の安倍晋三首相の政権運営、リーダーシップをどう見ていますか。

【片山】かつて一緒にやりましたので、私は安倍さんは嫌いではありません。私が参議院自民党の国対委員長のときに安倍さんは国対副委員長で参議院の担当でした。担当の安倍さんと林幹雄さん(現衆議院議運委員長)が毎朝、参議院の国対の会合に報告にくる。私は「説明が悪い。語尾不明、はっきり言え」と、しょっちゅう2人を叱っていたんです。安倍さんは「はい」って、返事して……。まさかその人が総理大臣になるとは思いませんでしたから(笑)。安倍さんの評価は色々ありますが、友だちやファンは多いですね。人柄のよさ、それに一種の見えない徳があるのでしょう。

2度目の政権で、よくやっていると思いますよ。ですが、私は予算委員会で「急がば回れだ。もっと丁寧に時間をかけてやる方がよい」と言っています。ばたつきますね。やはり日本の安全保障や憲法改正には強い思い入れがあるからでしょう。

【塩田】片山さんは集団的自衛権問題や憲法改正について、どうお考えですか。

【片山】憲法改正はやるべきだと言っています。維新はそうですよ。集団的自衛権も限定的に容認しています。ただ、憲法を変えずに解釈の変更でやるのでは、自ずから限度があります。私どもはもう少し抑制的、限定的に考えるべきだと思っています。

安倍さんの答弁を聞いていると、集団的自衛権を何に使うのか、よくわからない。「ホルムズ海峡での機雷掃海だけ」みたいな答弁をしていましたが、もっと本当のことを言わなければと思います。「自衛隊のリスクは増えません」と言っていますが、誰が考えても、リスクは増えるに決まっています。「リスクは増えるけど、できるだけ増やさないようにします。ここまでは自衛隊のみなさんを危険にさらすけど、こういう措置を取ります。それをわかってください。それをやらなければ、日本の安全は守れないし、アメリカも本気で守ってくれない」と本当のことを言うべきだと思いますよ。本当のことを言わなければ、国民はわかりません。だから、6割も7割も反対に近い人がいるんです。

集団的自衛権を認める根拠は自衛権を認めた1959年の砂川事件最高裁判決というのも、わかりにくい話ですね。「憲法改正でやるけど、それには時間も手間もかかるから、とりあえずは解釈でやらせてもらう。ここまではやります、ここまでやりません、状況が変わったときはこうします」と本当のことをはっきりと言ったらよいのではないでしょうか。

アメリカで約束してきたからと言っても、安保法制法案が今国会で通る保証はありません。無理して強行採決なんかしたら、選挙で負けます。強行採決はできないのでは、と考えますが、そうすると、この国会では通りませんね。

【塩田】維新は今国会でこの問題にどう対応しますか。

【片山】松野頼久代表は「過去にPKO法案でも三つの国会をまたいだ。だから、急いでこの国会で法案を上げなくてもいい」と言っていますよ。私は今のままでは法案は簡単に通らないと思うし、強行で通したら不協和音が起こって、大騒動になると思いますよ。だから、急がば回れなんですよ。近道を行こうと思うと、かえって遠回りになります。

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