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日米の国債への信認と格付け

 4月27日に格付け会社S&Pは日本の格付けのアウトルックをネガティブに変更した。S&Pは4月18日には米国の格付け見通しを安定的からネガティブに引き下げている。

 何故、このようなタイミングでアウトルックを引き下げたのか。その理由としてS&Pは、東日本大震災と、それに起因する福島第1原発の事故の影響をふまえ、震災の復旧・復興費用は30兆円前後生じ、増税などの財源措置がとられない場合、GDPに対する財政赤字の比率が、2013年度までに従来予想を3.7%上回る水準に達すると予想するためとしている。

 政府は4月22日に東日本大震災の被災地の復旧対策を中心とする2011年度第1次補正予算案を閣議決定したが、これによる財政支出額は4兆0153億円となる。これだけで阪神大震災の復旧・復興のため編成した3度の補正予算の計3兆2298億円を上回るが、今後は第二次、第三次の補正予算が編成されることも予想されている。

 この民間格付け会社によるソブリンの勝手格付け(依頼されたものではない格付け)は、たしかに警告として受け止める必要はある。しかし、だからといって、これを受けて市場参加者が動揺する必要はない。日本の債務状況や震災による影響については格付け担当者同様、いやそれ以上に把握しているはずである。このため、今回も日本の債券市場への影響は皆無と言って良いような状況であった。

 米国債の格付けのアウトルックに対しては、27日の定例記者会見でバーナンキFRB議長は次のように発言している。

 「ある意味で、S&Pの米格付け見通し引き下げがわれわれに伝えることは何もない。新聞を読む人なら誰でも米国が非常に深刻な長期的財政問題を抱えていることは知っている。」

 バーナンキ議長のこの指摘は的を射ていると思う。本来であれば、民間格付け会社の格付変更などに一喜一憂すべきものではない。ただし、ギリシャなどのように一度信用を失い市場が動揺している際などは、格付け会社の動きに敏感になってしまうことも多い。それだけ市場参加者が自らの判断そのものに自信を持てなくなっているためでもあろう。

 米国債も日本国債もこのような格付けに関する報道には、今後も影響を受けることはないと思われる。ただし、これには両国の国債に対する市場の信認が維持されていることが大前提となる。このあたりは日本の国会議員なども十分に認識しておく必要がある。日銀による国債引受などにより国債への信認が失われれば、民間格付け会社の勝手格付けと言えども、それをきっかけに長期金利を急騰させるきっかけとなりうるためである。

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