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「共産党は他の政党とは全く違う論理で動いている」~元日本共産党政策委員長・筆坂秀世インタビュー

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ここ数年の国政選挙で日本共産党が勢力を伸ばしつつある。現代日本においては、かつて日本共産党が支持を集めた理由や現在の主張について理解しがたい部分もあるだろう。現在の主張や組織の実態について、日本共産党で政策委員長を務めた元参議院議員で、現在は保守派の論客として活躍する筆坂秀世氏に聞いた。

「労働者階級が権利を握るソ連が理想社会に見えた」

-ご著書の中で、ご自身が日本共産党に入党された動機を「社会の役に立ちたいという思いからだった」と書かれていますが、現代日本で生きていると、マルクス主義に若者が傾倒する理由というのは理解しづらいと思います。何が当時の若者の心を捉えたのでしょうか。

筆坂秀世氏(以下、筆坂):やはりロシア革命のインパクトが非常に大きかったと思います。1917年に起きた革命で皇帝が倒され、労働者階級が権力を握りました。この事件に「こんなことがあり得るんだ」と、世界中が衝撃を受けました。当時、ジョン・リードというアメリカのジャーナリストが、「世界を揺るがした十日間」というルポを出しているのですが、タイトル通り、まさに世界を揺るがしたと言えるでしょう。

しかも、当時はみんな貧しかった。日本も当時は、労働者の権利も認められていない時代でしたから、労働者が権利を握る社会、ソ連が理想社会に見えたわけです。

作家の小林多喜二も捕まってすぐに虐殺されているわけですから、戦前は「共産党に入る」ということは、「命を懸ける」ということでした。そうした状況の中でも、高学歴な人が入党していました。それは何故かと言えば、「ソ連は労働者が権力を握った理想社会」なんだという考えが大きかったからでしょう。

こうした社会のあり方こそが、「大資本家や大地主が権力を握っている」といった矛盾を解決していく一番の道だと多くの人が考えて広まっていった。だからこそ、日本でも命懸けで共産党に入る人間が出てきたのです。これは日本だけではなく他の国でも同様だった。そうなので、それぐらい社会主義というのは魅力を持ってとらえられていました。

私は1948年生まれの戦後の人間ですが、第二次大戦終戦後に、ソ連の影響で東ヨーロッパに社会主義国家が誕生します。中国でも北朝鮮でもキューバでも革命が起こっていきました。こうして世の中に社会主義国家で生きる人間が増えていったのです。

私自身、日本共産党に入党した時に、「今、世界の5分の2ぐらいの人達が社会主義の下で暮らしてるんだ」と言われました。そして、「資本主義から社会主義へ行くのは、歴史の必然なんだ。これが歴史の発展方向なんだ。せっかく生まれてきたんだから、この歴史の発展に貢献しようじゃないか。寄与しようじゃないか。この流れに身を投じようじゃないか」と言われるわけです。私なんかは単純だからすぐに「そうだ!」と思いました。

現在も様々な政党がありますが、入党する人たちは、みんな政治家になりたいから入党する。それに対して、地方議員や国会議員になろうと思って日本共産党へ入党する人は、1人もいません。そういう意味では、まったく特殊な政党なんです。

日本共産党は、不破哲三さんから志位さん、それに一般の党員もそうだと思いますが、「議員になってやろう」と入党する人は1人もいない。「マルクス主義、科学的社会主義によれば、資本主義から社会主義への発展は歴史的必然である。この歯車を、より力強く速く回転させよう。それが生きがいになる道だ」と思うから入党するわけです。

私なんか高卒だから、一般企業ではただでさえ出世できないのに、党員だと分かれば、絶対差別される。一流大学出た人が党員と分かれば、なおさらです。それでも日本共産党に入るというのは、社会主義革命の理想に意義を見出していたからだと思いますね。

-例えば、現在の若者が共産党に興味を持つとしたら、自分がブラック企業に勤めていて労働者としてきつい状態にあるから…というような流れだとしたらわかりやすいと思います。しかし、かつては資本主義から社会主義への歴史的発展という大きな理想に傾倒するケースが多かったと。

筆坂:少なくとも私らの世代はそうでした。

ブラック企業も所詮は今の資本主義の枠内での話に過ぎません。資本主義の枠内で、「この権利どうしましょうか?あの権利どうしましょうか?」というだけの話です。そういう問題を解決したいのであれば、別に日本共産党に入る必要ありません。社会主義革命と関係ないんですから。

「ブラック企業をなくすために労働基準法を変えよう」というのは、資本主義の枠内での改革に過ぎません。今の体制改革をしようと思わないのであれば、政党に入る必要はまったくない。だから私は、今の若者が日本共産党に入るというのはありえないと思う。もちろん、実際に入党する人はいるでしょう。しかし、我々の時代のように革命性と日本共産党という名前に相応しいことをやるから入党するというのとは違うわけですよね。

-一方、ここ数年の選挙で日本共産党は躍進しています。

筆坂:それはまったく別の話です。政党として日本共産党が躍進するのは当たり前で、それは今の日本の政党の状況を見ればわかることです。

あまりに民主党などの他の野党が頼りないから「自民党がイヤだ」という人の引き算の選択で「共産党しかないな」という状態になっている。これはしばらく続くんじゃないですかね。

共産党内で自衛隊や天皇制に関する考え方は変化している

-先日、日本共産党の志位委員長が記者会見を行った際に外国人記者から「自衛隊をどう考えているのか」という質問が出て、志位氏は「しばらくは共存するんだ」という趣旨のことを言いました※1。日本共産党というと、「共産主義」というイメージが先行していて、個別の問題に対し具体的にどう考えているのか、わかりづらい部分があるので意外に感じたのですが。

※1【全文】「政権を担ったとしても、直ちに自衛隊の解消は行わない」〜日本共産党・志位委員長が会見 - 6月23日

筆坂:「しばらく共存」じゃなくて「ずっと共存」でしょうね(笑)。

自衛隊もそうですが、例えば今の天皇制というのは、政治にとっては何の影響力も意味も持たない存在だから、政治制度が社会主義になろうが何になろうが、もう共存できるだろうと言うのが、日本共産党の立場なんですよ。戦前は、天皇の憲法上の地位も現在とは違いましたから、「天皇制打倒」を唱えていました。その印象は非常に強いと思います。

世界中の事例を見ても王制を残したままでの社会主義革命なんてものはあり得ません。共産党流の言葉でいえば、戦後も天皇制というのは「反動勢力の支柱」になっているという位置づけをしてきたわけです。日本共産党が1961年に作った戦後の綱領では「打倒」という言葉は使っていないのですが、実質上、天皇制打倒という方針を持っていたんです。それが1990年代まで、ずっと続いてきたんです。

ところが戦後70年まできて、こんな公式見解を持っていても国民に通用しないということに気づいたわけです。現実問題として、天皇制は国民の中に受け入れられてしまっているわけですから。

日本共産党としては、「この方針を変えなきゃいけない」と困ってしまった。方針を変えるためには、天皇制の位置づけを理論的に変えなければなりません。それまで党内では天皇制は「君主制」と解釈していました。

しかし、世界の君主制を見ると、すべて形の上では政治権力を持っています。例えば、イギリスであれば、エリザベス女王が施政方針演説をやります。形式とはいえ政治権力を持っている。ところが、日本の天皇制というのは、一切政治的権能を持たないということが、憲法に書かれている。

だから「君主制という風に我々は言ってきたけれども、世界の君主制と比べても、日本の天皇制は、政治的権能を持っていないから君主制とは言えない。であれば別に打倒する必要ないじゃないか」と解釈を変えて容認する方針となったのです。

これは当時のトップの不破哲三さんと「61年綱領を作った時に、“君主制”とやったのが、マズかったんだよな。こりゃなんとかしなければ」という話をしたことがあるのでよく覚えていますね。

こうして日本共産党は天皇制を事実上容認するといっているのですが、未来永劫といったら、共産党らしくない。だから、一応「将来の国民が国民合意のもとで、やっぱり天皇制は無くしましょうというんだったら、それは将来の国民に任せたらいいことだ」と言うことにしている※2。これは完全なる逃げですよね(笑)。

※2共産党・志位委員長「党名を変えるつもりはない。私たちの理想の社会、不屈の歴史が刻まれたこの党名を大事に使っていく」 - 2014年12月8日

-現役の日本共産党の方を見ていると、非常に頑ななイメージがあります。今、不破哲三さんとのエピソードをご紹介いただきましたが、天皇制の解釈のように党内で考え方を現実にあわせてフレキシブルに変えることはどの程度あるのでしょう?

筆坂:天皇制の解釈について言えば、不破さんだから出来たと思うんですよね。不破さんは日本共産党の中で、圧倒的な理論家でしたから。政治経歴も長いですし、マルクスだって、エンゲルスだって、レーニンだって、最も読んでいるのは、不破さんです。

不破さんが言えば、みんな「そうなんだ」と右向け右になる。だから今、天皇制について聞けば、どの議員だって同じこと言うわけです。「俺は違うよ。共産党として、天皇制との共存路線はおかしいと。天皇制なんていうのは、全く反動的な異物じゃないか」という奴がいても本来の共産党であればおかしくない話でしょう。でも、いないんですよ(笑)。

中央で大筋が決まれば、みんな、この枠内でしかしゃべらないと言うことになってくる。共産党の「民主集中制」の組織原則というのは、そういうことですね。

-地方などでは生活保護利用者や高齢者といった方々からは確かな支持を集めているようですが。

筆坂:地方政治の舞台で、一番真面目に頑張っているのは、日本共産党の議員だと思います。ご指摘のように高齢者や生活保護利用者のケアのために手足となって働いている信頼が地域ではあるでしょう。日本共産党の強さは、地方議員が支えている部分というのが大きいと思います。

地方議員というのは大変なんですよ。「国会議員のほうがエライ」というような話ではなく、とにかく大変なんです。日本共産党の組織というのは、高齢化しています。私が、まだ40歳ぐらいの時ですら、地域の共産党の集まりに行くと、始まる前に、「どこの按摩が効いた」「どこの針がいい」とか、そういう話をひとしきりやってから、会議が始まっているような状態でしたから(笑)。それぐらい高齢化が進んでいたし、それは今も同じでしょう。

そうすると、結局手足になって動くのは、その地域の市町村議員なんです。若くて、バイクや自転車に乗って走り回れる人が、時には「しんぶん赤旗」の配達とその拡大をやる。そういう人は顔も広いし、生活の面倒も見ているから影響力はあるわけです。

だから、選挙区の範囲が狭くなればなるほど議員は大変ですね。一番楽なのは参議院の比例ですよ。地元がないんですから。全国区だったら関係ないですが、地元があってごらんなさい。変な格好で歩いているだけで噂になりますよ。(笑)。

-現在は、反原発や反安保法制などで若い世代にも広がりがあると見られていますが。

筆坂:今までにない広がりがあることは事実でしょう。ただそれも別に「共産党でなければできないこと」ではありません。小泉純一郎さんが、反原発のために共産党に入ろうと思うかというと違いますからね。

昔は若い共産党員を輩出する大きな道が2つあったと思います。大学でいえば、全学連(全日本学生自治会総連合)、もう1つは民青(民主青年同盟)です。私も最初に日本民主青年同盟に入ったのですが、その当時、民主青年同盟員は全国で20万人いました。東京の都市銀行の中だけでも、民主青年同盟員が1000人いたんです。それが、今や多分全国で2000人いるかどうかだと思います。

民主青年同盟は、共産党から指導を受けるということが規約に書いてある組織です。だから、民主青年同盟に20万人いるということは、若い共産党員がいずれ20万人増えるとうことでした。仮に半分でも10万人です。現在、公式に発表されている共産党員の数は、20数万人ですから、これはすごいことですよね。

-そうした下支えする組織が現在ではなくなっていると?

筆坂:全学連なんてほとんどなくなっちゃいましたしね。全学連があれば、それこそ東大や京大から、一定数必ず共産党に入党していたわけです。ですから、いかにして若い党員を増やしていくかというのは、共産党にとって一番の課題でしょう。もうこの20~30年、党大会があるたびに、叫ばれている課題です。いかに若者を共産党に入れていくのかが、共産党の永遠の課題ですね。

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