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そろそろ本気でMICEの話をしよう

昨日の投稿では、文化庁が今年より開始した「日本遺産」登録制度を例に、未だ「取捨選択が出来ない」「選択と集中が出来ない」行政の在り方をご紹介しました(参照)。本日は、それに関連して、私が常々思っている最近のMICE振興策に関してコメントしたいと思います。
※)MICE: 企業研修、報奨旅行、国際会議、展示会等

観光庁が認定する「グローバルMICE都市」という制度があります。これは、我が国の国際的なMICE産業の競争力強化を目的として、MICE誘致のポテンシャルが高い都市を優先的に選定し、国として集中的な支援を行うことを目的とした事業です。この制度のスタートした2013年には、指定対象となる都市の公募に全国15自治体から応募があり、うち最も高い評価を得た5都市(東京都、横浜市、京都市、神戸市、福岡市)を集中支援を行う「グローバルMICE戦略都市」として、そしてそれに次ぐ評価を得た2都市(大阪府/市・名古屋市/愛知県)を「グローバルMICE強化都市」として認定しました。「5都市+2」というのは、正直グローバルで競争するという意味ではまだまだ分散しすぎかなぁという感はありましたが、それでも日本の官庁が最も苦手とする「選択と集中」を試みた例として、私なぞはこれを非常に好意的に見ていたものです。

ところがですよ、今年になって観光庁は、2ヶ年続けて来た上記「5都市+2」への支援事業の終了を発表します。観光庁は、これら「5都市+2」を「既に国による集中支援の必要性はなくなり、自律的な発展段階に至った」と位置づけ、これらの都市の呼称を「グローバルMICE都市」へと変更。更には、次なる「グローバルMICE都市」を目指す新たな強化対象都市を全国から募集し、5自治体(札幌市、仙台市、千葉県/千葉市、広島市、北九州市)を認定するという発表を立て続けに行います。

2年間継続した「5都市+2」の既存の支援都市への支援事業の終了が発表されてから、新たな支援先となる5都市が発表されるまでの期間はおよそ3か月。こうやって年次を追った国の支援事業によって、ますます激化する国際的なMIEC誘致競争を勝ち抜くにふさわしいMICE都市が全国津々浦々に次々と誕生する。我が国は、いよいよ「一億総グローバルMICE時代」を迎えるのでありました。メデタシ、メデタシ。

って、なるかぁーーー!! ボケェェェ、というのが、私のみならず多くの業界関係者が本音のところで思っていることであります。

いや、真面目に今年の3月から6月にかけてのグローバルMICE都市事業の展開には、我が国のMICE振興政策に期待をし、それを支持してきた業界関係者も総ズッコケをしているワケですよ。2013年に本事業が始まった当初の目的は「国際競争力強化の為に、ポテンシャルの高い都市を集中的に支援」という説明であったものが、いつの間にか「希望する全国の都市を順番に支援する制度」となり、最終的には全国に国の認定する「グローバルMICE都市」を量産しましょうという事業に取って代わってしまいました。2013年に思い切って「選択と集中」に踏み込んだと思われた政策は、結局、2年も経てば我が国のお役所の伝統芸である「悪しき平等主義」に書き換えらてしまったわけです。

もうちょっと突っ込んで今回のグローバルMIEC都市政策を語るのならば、2013年に認定が行われた「5都市+2」はあくまでMICE業界における「国際会議」にのみ焦点を当てた支援事業でありました。一方でMICE業界は国際会議のみならず、企業研修、報奨旅行、展示会はおろか、スポーツイベント、その他エンタメ系イベントなど、実は結構幅広く分野がまたがっており、またそれぞれの分野の誘致強化においては、必要となる体制、ポイントは全く異っていて十把一絡げに語ることはできないという事は、業界の中では常識になっています。

だとするのならば、2015年の新たな支援都市の指定にあたっては、せめて国際会議以外のMICE分野に焦点を当てて新たなる強化都市を選定すべきであったのですが、この募集にあたって観光庁はそのような工夫すらしていないんですね。結果的に、全国に「グローバルMICE都市」を自称する街が金太郎アメの如く少なくとも12都市現れて(前回の7都市と今回の5都市)、シンガポール、ブリュッセル、ウィーン、香港…と世界の名だたる国際会議都市と国際的に戦うことになります。しつこいようですが、重要な点は何度でも繰り返させて頂くと、この政策の目的は「国際的なMICE競争力強化の為に、ポテンシャルの高い都市を選定し、集中的に支援すること」であります。

…私は、日本のMICE振興の未来が心配でなりません。

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